2017年03月04日21時26分掲載  無料記事
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文化

料理への情熱  1 始まりは「お母さんお休みの日」 原田哲(さとし、シェフ) 

  日刊ベリタにフランス料理について群馬県・嬬恋村から寄稿していただいているシェフの原田理(おさむ)さんには4歳年下の弟がいます。弟もまた料理の世界に入って活躍しています。しかし、兄弟はそれぞれ得手不得手があるようであり、また、性格も大いに違っているようです。そんな兄弟がどのように料理に情熱を抱いたのか、どのように料理人の道を歩いてきたのか。今回は弟の哲(さとし)さんにお聞きしました。哲さんは現在、東京・下北沢にあるビストロ「bistroCHAP(ビストロチャップ)」などでシェフをしています。 
 
Q 今、下北沢で作っている料理はなんでしょう? 
 
  今の自分の料理のテーマが、「居酒屋料理のフレンチへの昇華」と「肉と魚の旨味を掛け合わせた新しい旨味の確立」です。常に日常に寄り添うフレンチ。なじみ深い料理なのに新しい発見のある料理。 
  なのでカテゴリーこそフレンチでくくってますが、フランス料理だけにこだわって料理はしていません。パスタも作ります。ただあくまでも僕の料理の根幹にあるのは紛れもなくフランス料理の伝統と知識と技術なので、フランス料理と名乗らせて頂いています。この前提を置いたうえで、今回はテーマに沿った料理をとりあえず2つご紹介します。 
 
・「牛すじと三浦大根のおでん仕立て」 
 
  日本のソウルフードのおでんをフレンチ仕立てにしたいなと考えた一皿です。かつお出汁で別々に煮込んだ三浦大根と牛すじを、3日間かけて仕上げたスープドポワソンで合わせて煮た一皿。ブイヤベースのような濃厚な魚介出汁としみしみの大根、牛すじの旨味が合わさった、人気メニューです。 
 
・「パテドノワール」 
 
  イカ墨と豚肉のパテ 白トリュフ風味のナッツを添えて 
クラッシックフレンチの王道のパテを、見た目にも味わい的にも新しくしたいと考えたものがこのパテドノワールです。お肉の旨味とイカ墨の旨味を掛け合わせ、新しい旨味を演出するとともに、見た目に真っ黒なインパクトを付けました。白トリュフ塩で香りをつけたナッツと一緒に食べていただくと、全く新しい旨味が広がります。 
 
Q 哲さんはなぜ料理人を志したんでしょう? 
 
A  正直なところ、そんな高尚な理由はないんです。 
料理人を志すきっかけはいくつかありましたが、単純に好きだったんですよね、料理を作って食べてもらうことが。幼少期に「お母さんお休みの日」という日があったんです。お休みの日の晩御飯担当は僕ら子供、兄弟3人で作ってました。今でも忘れませんが、そのとき一番最初に作ったのが、幼稚園の給食で食べた「胡瓜のベーコン巻きの串焼き」です。母はそれを美味しいと言って食べてくれました。その時の母の笑顔は今でも忘れません。料理というものに興味を持ったのはそのときからなのは間違いないですね。 
 
  もともと食べる事は人並み外れて好きでいたし、育った九州という環境は、山に入れば木の実なんかを食べたり、海で素潜りや釣りをして家で食べたり、とにかく美味しいものを子供のころから食べて育ちました。なので料理を作る事も生活の中に当たり前にあった気がします。 
 
  ただやはり大きなきっかけは兄の存在でした。兄同様、学校の勉強は苦手で嫌いだったので、高校を中退して兄が料理人になると言って東京に出たときは無意識的なあこがれみたいなものがありました。「勉強しないためには料理人になればいいのか」という不純な動機も料理人を目指した一つのきっかけではあります。 
 
  中学で一度、高校で一度、東京の兄の家に遊びに行き、兄の働く姿、東京という異世界を生で体験し、なんとなく「あ、ここ(東京)で働くんだろうな俺。」と、根拠もなく思ってました。兄の生活や苦悩、苦労を生で見てきたので、当時の業界の厳しさは当時から見て知っていました。それでもこの業界に足を踏み入れようと考えたのは、兄が初めてシェフを勤めていたときに発した一言が大きかったです。 
 
  高校の夏休みに東京に遊びに行った時、兄が僕に言ったんです。 
 
  「料理人は学歴のない俺たちみたいな人間にとっては社会を上り詰めるための最後の砦だ。美味い料理の前では、どんなに偉い政治家もどんなに有名な著名人も首を垂れる。その一瞬は料理人が誰よりも偉くなれるんだよ。」 
 
  その言葉に心底しびれました。本当に兄にあこがれた瞬間でした。俺もこうなりたい。俺もこの言葉を誰かに伝えられる人間になりたい。 
 
  いろいろなきかっけはありましたが、やはり決め手は兄のこの一言だったと今は思います。 
 
 
 
原田哲(さとし)シェフ 
bistroCHAP(ビストロチャップ)など 
 
 
 
■「嬬恋村のフランス料理」16 〜我ら兄弟、フランス料理人〜 原田理(フランス料理シェフ) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201607061239203 
 
■音楽にかける青春 岩宙平さん(28) プラハで指揮者デビュー  Chuhei Iwasaki 
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■音楽にかける青春 シチリアの音楽家、ジオリ(Gioli) クラブミュージックとクラシックの融合を目指す19歳 最初のアルバム‘Mechanical Heart’の発売は来月 
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