2017年03月08日19時18分掲載  無料記事
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河合弘之監督 「日本と再生 光と風のギガワット作戦」

 原子力産業の構造的な問題をドキュメンタリー映画「日本と原発」で描いた弁護士の河合弘之氏が再びメガホンを取った。その新作が現在、上映中の「日本と再生 光と風のギガワット作戦」だ。今回は風力や太陽光、地熱など自然のエネルギーを活用した新しいエネルギーに切り替えている自治体をドイツ、デンマーク、米国、中国、中東、日本など様々な場所に河合氏自ら足を運んで見つめていく。そして、環境エネルギーに詳しい飯田哲也氏が河合氏に同行している。 
 
・映画の予告編 
http://www.nihontogenpatsu.com/movie 
  テンポは非常によい。普通の映像のドラマ的な情念的構成ではなく、まさに自然エネルギーの世界の現状はどこまで進んでおり、日本はどうなのか、ということを余すところなく伝えるために、日本と世界の現実を必要に応じてテーマに沿って編集していく、極めて知的なスタイルとなっている。そして、今回もホワイトボードが出てきて、河合氏と飯田氏が自ら、問題点を図解して説明する。河合氏の映画の新しさは芸術作品でもドラマでもないことだ。エネルギーの問題を論じ、理解するための映像が欲しい、という明快な目的を持つがゆえに、映画自体も明解であることだ。 
 
  印象深かった点はいくつもあるのだが、ドイツは原子力を廃止すると言いながら原発大国フランスから電気を買っている、という言説が本質的には嘘であることを暴いた点である。これは実際、ドイツのエネルギー政策の担当者に何人も会って確かめているのだ。 
 
  また、日本の既存の電力産業が自然エネルギー産業の発展をできるだけ遅らせよう、という意図を持って制度もそう仕組んだらしいことである。これは河合監督たちの証言からなのだが、そこには3つのポイントがあるということである。 
 
  そして、また福島の原子力事故の被害を受けた自治体の人々も含めて、新しいエネルギーで未来型の町に切り替えていこうという試みが日本各地でも起きているらしいことである。このあたりはあちこち、河合氏自ら足を運んでその実情を見ながら、担当者たちに経緯を尋ねている。その核心は電力を中央の大きな発電施設で大量に作って一斉に配給していくシステムより、津々浦々で少しずつ電気を作って地産地消するシステムの方が災害に強いらしい、ということである。自然エネルギーは経済的にもプラスになるのだ、と世界各地で先駆的な試みをしてきた多くの人が語っている。そして日本は自然エネルギーをドイツよりはるかに多く活用できる地学的なポテンシャルを持っているということである。 
 
  河合弁護士は自ら原発訴訟の弁護団のリーダーを務めてきた人だけに、長年の経験と知識が映画作りの前提になっており、その足取りは見る人を惹きつける説得力とエネルギーに満ちている。 


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