2017年03月12日12時27分掲載  無料記事
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教育

教育勅語暗唱、安倍首相かんばれ!の森友学園の公教育化と全国化を狙う「家庭教育支援法案」 安倍首相肝いり、背後に日本会議

 「家庭教育支援法案」なる法案が今国会に提出されようとしている。共謀罪と並ぶ危険法案といわれているものだ。家の中、親子の関係を戦前回帰させる、という安倍首相肝いりの法案である。もうひとつ、これは法案ではないが、気になる動きがある。2月14日公表さ れた文部科学省幼稚園教育要領改定案、厚生労働省の保育所保育指針改定案だ。ともに3歳児から「日の丸」「君が代」に親しませ るという内容が盛り込まれている。教育勅語を暗唱させ、「安倍首相がんばれ」と連呼させる森友学園の公教育化、全国化を狙ったものといわれるものだ。(大野和興) 
 
 「家庭教育支援法案」は、法律で国家が家庭内の教育に介入することを定めた法案ということができる。毎日新聞2016年11月2日号によると、法の趣旨は、「保護者が子に社会との関わりを自覚させ、人格形成の基礎を培い、国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる環境を整備する」と記されている。 
 
 「親学推進議員連盟」という議員集団がある。2012年に発足したもので会長は安倍首相。ここが立法化を宿願としてきたのがこの法案である。その中身は、「戦前の伝統的な子育て」を復活させること。その背後に、自民党憲法草案が狙う憲法24条改正がある。 
 
 憲法24条の肝は「個人の尊厳と両性の本質的平等」を規定しているところにある。自民党草案はそれに対して、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」から始まる。社会の基本単位を「個人」から「家族」に置く、まさに戦前の家父長制復活を狙ったものといえる。 
 
 では「親学」とは何か。子どもは母親と一緒でなければ発達障害になるなどといった奇妙な教育理論を振りかざす集団で、安倍首相も参加する右翼集団「日本会議」の有力な構成団体でもある。こうした理論を「伝統的な家庭教育」とよんで、法制化し、公権力で進めようというのが、今回の「家庭教育支援法案」なのである。 
 
 提唱者は高橋史郎なる人物。彼が理事長を務める「親学推進協会」が推進している。高橋が提唱・推進している親学に関しては、非科学的であり、障害者への差別・誤解を生むものだ、という批判を受けている。日本の伝統的な子育てをすれば発達障害を予防できるという主張は、「親の子育てが間違っているから発達障害なんかになるんだ」という主張に転化する。 
 
 
 この「家庭教育支援法」の制定には、日本会議だけではなく、教師が会員となった巨大組織が関わっている。「TOSS」(Teacher’s Organization of Skill Sharing/教育技術法則化運動)だ。会員は全国で1万人を超える。主として小中学校の教師である。公式サイト「TOSSランド」には安倍首相と山谷えり子議員からの「応援メッセージ」が掲載されている(写真)。 
 
 
 いま政府が進めようとしている幼稚園の教育要領、保育園の保育指針改定も、こ宇した動きや法案を意識したものといえる。そこには、「幼稚園(保育所)の内外の行事において国旗に親しむ」「国歌、唱歌、わらべうたや我が国の伝統的な遊びに親しんだり」などの文言がみえる。このまま改定案が通れば、政府は3歳児から「日の丸」「君が代」 を強制するようになることは間違いない。 
 
 森友学園が国有財産をただ同然で取得できた背景も、こうした動きを抜きにしては考えられない。安倍首相夫人という肩書で安倍首相の妻が、名誉校長に就任していた理由も、ここにある。 
 
 朝日新聞2016年6月17号は、日本会議の椛島有三事務総長が日本会議福岡の総会での発言を次のように報じている。 
 
「『親学』は男女共同参画に対する対案の意味を持つ。ジェンダーフリーに対する保守の側の回答であり対策であります」「親学は父親母親の違いを明確にし、結果として男らしさ女らしさを育みます」 
 
 今回の事件で辞任に追い込まれた森友学園の籠池理事長も日本会議大阪の幹部といわれている。元文化大臣の下村博文も、大臣時代に自身のブログで親学を絶賛していた過去がある。こう見てくると、日本の教育は幼稚園。保育園を含め、復古主義と権威崇拝の戦前教育に全体として動いていることがわかる。森友学園問題は、その氷山の一角が現れたに過ぎないといえる。 


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