2017年03月17日19時14分掲載  無料記事
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政治

今治市の獣医学部新設で話題になっている「国家戦略特区」とは?  中核は農業の規制撤廃か

  話題になっている今治市での新たな獣医学部新設は「国家戦略特区」に指定されたことによって52年ぶりに実現した。では国家戦略特区とはいったい何だったのか。 
 
  改めて振り返ってみると、その目的は官邸によれば「産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るため、国家戦略特区を突破口に、あらゆる岩盤規制を打ち抜いていきます」とされる。つまり、特定の地域を規制緩和、あるいは規制撤廃のモデルにする、ということである。 
 
  では誰が「国家戦略特区」を決めるかと言えば内閣府の「国家戦略特別区域諮問会議」であり、議長は安倍晋三首相である。この会議のメンバーは関係大臣や有識者5人など。ここで国家戦略特区を最終的に認定する。もちろん、最終判断は安部晋三議長の意思が決めると言ってよいだろう。 
 
  この「国家戦略特別区域諮問会議」には自治体ごとに設置された「国家戦略特別区域会議」から情報がフィードバックされる。つまり、細々した計画は地域でやってくれ、ということなのである。だから、言うまでもないが国から特区に指定された自治体には様々なスケジュールや指示が送られるに違いない。 
 
  では、これまでどのような国家戦略特区が設置されているのか、官邸によると国家戦略特区は段階を経て指定されてきた。一次指定から3次指定までである。それは下に列記したようなものだ。中でも特に目立つのは農業の岩盤規制を破ろうとする特区が目立つことである。 
 
  たとえば「新潟市 革新的農業実践特区」。元ローソンの新浪剛史 CEO(現在、サントリーCEO)はかつて第二次安倍政権が誕生してすぐに立ち上げた「産業競争力会議」の民間委員として安倍首相のブレーンだった人物だ。今回、国家戦略特区に指定された「新潟市 革新的農業実践特区」にこのローソンが参画しているのである。事業内容は[営農作物:米、野菜等]と記され、【平成 27 年1月を目途に設立】と記されている。ローソンの特区でのテーマはずばり「農業生産法人に係る農地法等の特例」。つまり、農地法の岩盤を突破する事業に、首相のブレーン、新浪剛史氏が関わっていた企業が選定された、ということである。 
 
 
■国家戦略特区(首相官邸のウェブサイトから) 
 
「養父市 中山間農業改革特区」(兵庫県) 
 
「新潟市 革新的農業実践特区」 
 
「福岡市・北九州市 グローバル創業・雇用創出特区」 
 
「沖縄県 国際観光イノベーション特区」 
 
「仙北市 地方創生・近未来特区」 
 
「仙台市 国家戦略特別区域」 
 
「広島県・今治市 国家戦略特別区域」 
 
「愛知県 国家戦略特別区域」 
 
「関西圏 国家戦略特別区域」 
 
その他「東京圏」各所 
 
 
  日経新聞の昨年10月4日の報道「農業で外国人活用 国家戦略特区諮問会議が議論」によると、国家戦略特区諮問会議の安倍晋三議長らは農業分野での外国人労働力の活用を視野に知れていると言う。 
  「会議では秋田県大潟村の高橋浩人村長が外国人活用策を提案。日本で働きながら専門技術を身につける技能実習制度の修了者と同じ程度の技術を持つ外国人の受け入れを求めた。首相は「地方創生などを実現するうえで極めて重要な提案だ」と応えた。」 
 
  ここでも日本の農政を根本的に改造することが国家戦略特区の1つの目玉だと感じさせられる。 
 
  偶然なのか、幼稚園や小学校にも熱心な安倍昭恵夫人は農業にも関心が高いらしく「女性未来農業創造研究会」の名誉理事も務めている。「女性未来農業創造研究会」の役員にはビジネス精神に富んだ起業家が多数参加しているようだ。「アグリインキュベーター」、「ミームデザインズ」、「ウエルシード 」「イオンアグリ創造」などの企業の役員たちである。 
http://awable.org/members 
  ちなみに「女性未来農業創造研究会」に参加している「イオンアグリ創造」(流通企業のイオン系の会社)は農業にICT(IT技術の応用)を導入して本部と各地の農場を結ぶ集中管理技術を安倍首相が議長をつとめる「未来投資会議」で提案している。これは「ローカルアベノミクスの深化」と銘打たれている。未来投資会議は安倍首相が取り仕切ってきた「産業競争力会議」の後継である。「イオンアグリ創造」はこの会議で農地の取得が難しいと課題を訴えている。 
 
 
 
★政府、種子法廃止を今国会に提出 種子を内外資本に開放、完全商品化を狙う 上林裕子 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702161850014 
 
■ローソン、特区で農業 各地で企業参入相次ぐ 2014/7/18付 
(日経) 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS18H1R_Y4A710C1PP8000/ 
「国家戦略特区に参入する企業が相次いでいる。18日に新潟市で開いた特区区域会議では、ローソンが新潟市内の農家と連携して、コメの生産・加工を実施する計画を示した。兵庫県養父市の特区でもオリックス不動産などが農業分野で事業を実施する。」 
 
 
■国家戦略特区と安倍首相のブレーンたち 新浪剛史氏と竹中平蔵氏、そしてオリックス 
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