2017年04月02日14時49分掲載  無料記事
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岡沢憲芙編「演習ノート 政治学」(法学書院)

  法学書院が出版した岡沢憲芙編「演習ノート 政治学」は大学生向けのテキストのようだが、一般の人にとっても使いやすい政治学の一問一答形式の入門書である。政治と言えば曖昧模糊としてつかみどころがない印象を持つ人が多いだろうが、政治学という学問があるように科学の対象である。アメリカでは「ポリティカル・サイエンス」というようにサイエンスという言葉が科目についているのだ。初版は1982年である。 
 
  本書では政治とは何か、という根源的な問いに始まり、近代国家とは何か。行政国家と福祉国家とは何か。政治権力の正統性は何に由来するか。三権分立の現代的な意義は何か。二党制や多党制の違いは何か。政治とメディアの関係は?世論の政治的な意義は?情報公開はなぜ求められるようになったのか、その道のりは?投票行動の決定要因は何か。圧力団体とは・・・など80の問いかけと模範解答から構成されている。この80の解説をざっと読むだけでも、政治学が俯瞰できるだろう。 
 
  基本的には有斐閣のロングセラー「現代政治学の基礎知識」と同様のコンセプトの本だと言えよう。ただ、「現代政治学の基礎知識」が1975年に初版が出版された事情もあり、当時の冷戦時代の世界情勢やアジア・アフリカなどの独立国家の誕生の熱気が未だ残っており、筆者は個人的な好みで言えば「現代政治学の基礎知識」の方が好きである。とはいえ、本書も政治学の概略を一通りつかむにはよい書だと思う。 
 
  ところで、本書の編者である早大の岡沢憲芙教授(政治学)には「現代政治学」という共著がある。そこでは「二党制」の神話が作り出されたものであることを論じていて非常に興味深かった。1990年代から日本では二大政党制と小選挙区制が政財界、マスメディアを挙げて宣伝されてきたのだが、それはかなり意図的な誘導だったようである。二大政党制への礼賛が憲法改正を目指していたことは間違いない。そして、今日の政治の劣化を生み出してしまったのである。今日の政治の腐敗と劣化を生み出してしまった事情や力学を解き明かすことは今後の政治学者の大きなテーマとなるべきではなかろうか。 
 
 
 
村上良太 
 
 
■堀江湛・岡沢憲芙編 「現代政治学」(法学書院) 早稲田・慶応出身の学者が集結 二党制の神話にメスを入れる 
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■「現代政治学の基礎知識」(有斐閣) 〜政治の再構築に向けて〜 
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