2017年04月05日23時02分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201704052302553

遺伝子組み換え/ゲノム編集

EU:米国からクローン牛の精液輸入か 不明な実態

 ドイツのテスト・バイオテックは先ごろ、EUが米国から輸入する牛の交配用精子の中に、クローン牛の精子が含まれているケースがあるという調査報告書を公表した。テスト・バイオテックによれば、2015年に米国から輸入された牛の精子は約40トンに上り、EUにはすでに、かなりの数のクローン牛が入っている可能性があるとしている。しかし、EUには、クローン動物に関する表示制度もトレーサビリティ制度もなく、追跡できないと警告している。この調査は、欧州議会内会派の欧州緑グループ・欧州自由連盟(Greens/EFA)の委託によるもの。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 テスト・バイオテックによれば、ドイツとオランダの畜産関連のデータベースでは、クローン牛由来の精子が含まれているかは不明だった。しかし、畜産関係団体は、絶対にないということは言えないがほとんどありえない、と否定したとしている。一方、英国の畜産関連団体のデータベースには、クローンを示す記号を明記した2頭の乳牛が登録されているのが見つかったという。 
 
 テスト・バイオテックはまた、クローンあるいはクローン由来の精子の公的な登録制度がなく、実態が分からなくなっていると制度の欠陥を指摘している。また、EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)により、クローン動物に対する義務的表示が妨げられる可能性があり、消費者や農民の利益保護という欧州議会の意思がが蝕まれると警告している。 
 
 ・Test Biotech, 2017-2-7 
  Breeding material from cloned bulls in the US imported into the EU - and related current gaps in regulation 
  http://www.testbiotech.org/sites/default/files/Testbiotech_cloned%20bulls%20and%20CETA.pdf 
 
 
 米国食品医薬品局(FDA)は2008年、クローンによる牛や豚、ヤギなどから生産されたミルクや肉の消費を承認している。 
 
 
 ◆ EU議会はクローン動物輸入禁止を議決 
 
 EU議会は2015年9月、クローン動物でないこと、あるいはクローン動物の子孫でないことが証明できない場合、輸入を禁止するとする議会報告書を賛成529、反対120で採択した。反対のうち33票は英国選出議員による。 
 
 この報告書は6月のEU議会・環境農業委員会において、賛成多数で採択されていた。委員会では、いまだ高い死亡率、クローンの安全性に対する市民の懸念や反対が強いことなどを理由として、牛や羊だけではなくすべての家畜動物に範囲を広げ、クローンやクローン後代でないことの証明を必要とするとした。対象には、動物の胚や精液、あるいは動物由来の飼料も含まれるとしていた。 
 
 ・European Parliament, 2015-6-17 
  Ban not just animal cloning, but cloned food, feed and imports too, say MEPs 
  http://www.europarl.europa.eu/news/en/news-room/content/20150617IPR67269/html/Ban-not-just-animal-cloning-but-cloned-food-feed-and-imports-too-say-MEPs 
 
 ・European Parliament, 2015-9-8 
  EP wants animal cloning ban extended to offspring and imports 
  http://www.europarl.europa.eu/news/en/news-room/content/20150903IPR91517/html/EP-wants-animal-cloning-ban-extended-to-offspring-and-imports 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。