2017年04月05日23時09分掲載  無料記事
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遺伝子組み換え/ゲノム編集

クローン動物 日本でも輸入の可能性、否定できず

 日本では、2007年ごろから体細胞クローンの流通解禁へ向けた議論が進んだ。食品安全委員会は2009年6月、「現時点では安全」とする健康影響評価をまとめ、次のように述べている。(有機農業ニュースクリップ) 
 
   現時点における科学的知見に基づいて評価を行った結果、 
体細胞クローン牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品は、従来の繁殖技術による牛及び豚に由来する食品と比較して、同等の安全性を有すると考えられる。 
   なお、体細胞クローン技術は新しい技術であることから、リスク管理機関においては、体細胞クローン牛及び豚に由来する食品の安全性に関する知見について、引き続き収集することが必要である。 
 
 ・食品安全委員会, 2009-6-23 
  新開発食品に係る食品健康影響評価に関する審議結果について〈体細胞クローン技術を用いて産出された牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品〉 
  http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20090625sfc&fileId=120 
 
 
 日本国内ではこれまでに500頭余りの体細胞クローンが生まれているが、食品安全委員会の健康影響評価を受けて、農水省は「出荷自粛を要請」するとして、明確な流通禁止とはしなかった。農水省は現在、4半期ごとの頭数などの概況を公表していて、流通していないことになっている。 
 
 
 ◆ 早くから輸入クローンの可能性を認識していた厚労省 
 
 厚労省は2008年、「体細胞クローン家畜由来食品に関する説明会」を開催した。同年5月に東京で開催された説明会の席上、佐々木昌弘課長補佐(当時厚労省医薬食品局食品安全部企画情報課)は、食品安全委員会へクローン動物の評価を諮問した理由として、(1)欧米での体細胞クーロン牛解禁の流れ、(2)国内での体細胞クローン牛に関する研究や情報収集が一定程度終わったこと、(3)体細胞クーロン牛の後代由来の製品(肉や乳製品)の流通の可能性が出てきたこと、の3点を挙げている。 
 
 その上で佐々木課長補佐(当時)は、「明確な証拠があるわけではないが」としながらも、「米国食品医薬品局が出荷自粛の要請を取り下げたことにより流通の可能性が出てきた」と明言している。 
 
 建前はともかく、早い時期から厚労省は、クローン牛やその後代が流通している可能性を認識していたことは確かだ。しかし、EU同様に義務的な表示もトレーサビリティ制度もなく、その実態は分からない。 
 
 
 ◆ 米国産交配用精液 年間300キロを輸入 
 
 財務省の輸入統計によれば、交配用の牛の精液は年間約350Kgが輸入され、その約6割が米国、3割がカナダとなっている。輸入統計からは、輸入精液がクローン牛やその後代であるかは全く分からない。テスト・バイオテックの調査結果が指摘するように、日本にもクローン牛由来の精液が輸入されている可能性があると思われる。 
 
 ・輸入量グラフ 
  牛の精液輸入量(2007年−2016年) 
  http://organic-newsclip.info/img/bull_sperma_import(2007-2016)_m.jpg 
 
【関連記事】 
 ・No.686 EU議会 クローン動物の全面輸入禁止の 
      報告書を採択 
  http://organic-newsclip.info/log/2015/15090686-1.html 
 
 ・No.497 厚労省 体細胞クローン後代由来製品流通の 
      可能性に言及 
  http://organic-newsclip.info/log/2008/050497-1.html 


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