2017年04月23日15時26分掲載  無料記事
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コラム

【編集長妄言】「確か子どものころ、ゴボケンといっていた」  中学の保健体育に銃剣道を導入  

 4月1日から、新学習指導要領で中学校の保健体育の武道に剣道や柔道と並んで銃剣道が明示された。かつて帝国陸軍の兵隊は、ゴボケンなるものを腰に下げていた。ゴボケンというのは、ぼくが子ども時代、まわりのおとながいっていた言葉で、正式になんというかは知らない。先のとがったゴボウのような短剣で、それを鉄砲の先に付け、敵陣めざして突進する。途中、敵兵に撃たれてバタバタと倒れる。陸上の特攻である。戦国時代の足軽さながらで、帝国陸軍がいかに兵士の命を粗末にしたかの象徴のような存在だ。(大野和興) 
 
 ゴボケンは家になかに無造作に転がっていた。特攻帰りの叔父が持ち帰った記憶がある。当時の特攻帰りは対外荒れていて、家に落ち着いていたためしがなかった。その叔父がある日、砥石でゴボケンの刃の胴体のところを砥石で研いでいた。研ぎ終わって木切れを切ってみて、ろくに切れない、役立たずが、とぼやいていた。敗戦直後の四国山脈のただなかの村での思い出だ。 
 
 銃剣道は戦場での殺し合いの術に「武道」という衣を着せただけのものだ。木銃を用いて、相手ののどや胴を「突く」技を競い合う。日本銃剣道連盟という組織があるが、役員など関係者のほとんどは自衛隊系で占められている。連盟の会員数は約3万人で、9割は自衛官という。自衛隊でしかやっていない競技で、銃剣道を教えられる中学教員は全国で2名しかいないといわれている。 
 
 このマイナーな「武道」が新年度から新学習指導要領に明示されたのは、自衛隊上がりの佐藤正久参議院議員のバックアップがあったからといわれている。定年後の自衛隊員再就職先確保しつつ、自衛隊と学校の連携強化が狙いだとみられる。戦前、銃剣道を学校で教えていたのは、軍事教練で軍から学校に配属された軍人だったことを考えると、学校教育の場に自衛隊が踏む込める通路が出来たことでもある。 


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