2017年04月24日22時20分掲載  無料記事
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国際

フランス大統領選  投票傾向を「東西」で分けて考えるべきなのか  鍵はムスリム移民の経路

  フランス大統領選の1回目投票で国民戦線のマリーヌ・ルペン候補を支持したのが大雑把に分ければフランスの東部、エマニュエル・マクロン候補を支持したのがフランスの西部という風に東西で分けて分析している人が何人もいるようだ。これはフランスメディアが配信する色分け地図をもとにしたものだが、東西で分けることに大きな意味があるのかどうか。中にはフランスの革命前後の革命勢力の地盤と保守勢力の地盤がこの東西に現れている、という学者の見立てもあった。以下のフランスの記事がその出典のようだ。 
http://www.sudouest.fr/2017/04/20/sondage-presidentielle-melenchon-arriverait-en-tete-en-nouvelle-aquitaine-3382333-6121.php 
  ここで思い出されるのは2015年12月のフランス地方選挙である。地方選こそ如実に地域の支持基盤が見えるからだ。そして、「東部」と彼らが指摘している地域は正確に言えば地中海沿岸の地域圏と東部の国境に沿った地域圏なのである。つまり、ここは海から、そして鉄道で移民が大量に流入してくる窓口となっている地域なのだ。もちろん、今焦点になっているのはムスリム系移民である。これらの地域には昨年夏、花火大会の時に暴走トラックによるテロ事件の舞台になった南仏ニースも含まれている。それを見れば東西が問題ではなく、移民の経路がテーマになっていて、移民の窓口となっている地域圏ほど極右の国民戦線、つまりマリーヌ・ルペンを支持する傾向が高いことを意味するのではなかろうか。国民戦線はこれらの地域で国民戦線にしか治安維持はできない、というようなことを一貫して訴えてきた。 
 
  逆に彼らが「西部」と呼んでいるのは大西洋沿海の地域圏や英国との対岸地域であり、こちらからムスリム系移民はほとんど入ってこない。以下は筆者が2015年12月の地方選を紹介した時の文章である。 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201512081118492 
  「Figaroなどのフランスメディアの情報を総合すると、今回、フランス国内の13地域圏の中、国民戦線が第一党になっているのは6つの地域圏にのぼり、ほぼ半数を占めます。このことはフランス国民に〜左右問わず〜大きな衝撃を与えているようです。細かく見ていくと、明らかにある傾向があります。それは南部地中海沿岸の地域圏やドイツなどとの東隣の国々と国境を接する地域圏で国民戦線が第一党になっていることです。これは言うまでもなく、不法移民が流入する時のフランスの入口にあたる地域です。 
  とくに今回最大の得票率を得たフランス北東部のNord-Pas-de-Calaisはテロ犯人の出身国であるベルギーとの国境地帯にあたります。さらに、南部地中海岸もまた、地中海を通ってフランスに入ろうとする不法移民が目指してくる地域です。」 
 
  今回の「東部」と解釈されている地域は上の移民流入地域とほぼ重なるのだ。マリーヌ・ルペン候補は欧州連合に反対の立場で移民の阻止を唱えており、一方のエマニュエル・マクロン候補は欧州連合推進派で労働市場の規制緩和を唱えているのである。 
 
 
村上良太 


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