2017年05月08日14時58分掲載  無料記事
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欧州

マクロン勝利宣言の裏で 2  パリ市内4か所で13人に出口調査をしたら全員マクロン支持だった  村上良太

  パリの大統領選挙決選投票。結果はマクロン候補が約66%、ルペン候補が約34%という結果でマクロン氏の圧勝となった。予測されていた通りの結果となった。 
 
  フランスの大統領選挙の投票所は地域の小学校や市庁舎などが使われ、三々五々人々が投票にやって来る。市内4か所で筆者は今回の大統領選に対する投票者たちの考えを聞いてみた。驚いたことは13人、全員がマクロン候補に投票したと答えたことだ。だが、決選投票でマクロン候補に投票した人でも1回目の投票となると異なっている。筆者が聞き取りをした13人は全員決戦投票でマクロン候補に投票した人だったのだが、1回目の投票ではマクロン候補に投票した人と、メランション候補に投票した人がいた。偶然でもあろうけれど、社会党のブノワ・アモン候補に投票した人はいなかった。 
 
1回目 メランション   2回目 マクロン 
 
という人と、 
 
1回目 マクロン    2回目  マクロン 
 
という人に大別されたのだった。 
 
  これらの人々は2012年にはオランド大統領に投票した人が多いのだが、今回はブノワ・アモン候補には投票しなかったという人ばかりだった。その理由はアモン候補の政策が現実離れしている、という声や、アモン候補は社会党内の「フロンド派」と呼ばれており、何かにつけオランド大統領と対立する政治家だったから、といった声があった。こういう人たちは今回、1回目の投票で左翼党のメランション候補を支持した人と、中道のマクロン候補を支持した人に分かれたようだ。 
 
  マクロン候補を支持した人は彼が若くて、エネルギーに富んでいることに好感を持っていた。実際、マクロン大統領は39歳の若い大統領となる。さらに「左でもなく、右でもなく」というスローガンも多くの人をとらえたようだ。このことは去年のアメリカの大統領選挙を思い出させるが、既存政党の政治に多くの人が失望していることを意味している。そして、マクロン候補は本質的には新自由主義なのだが、社会福祉的な要素も盛り込んでいることに好感を持った人が多かったようだ。 
 
  メランション候補が決戦に進めなかった理由には社会党のアモン候補と票が割れたこともあるだろうが、メランション候補は「反ヨーロッパだから駄目だ」と言う人が2人いた。「反ヨーロッパ」の意味するところはメランション大統領になったら、欧州連合からの離脱も可能性としてありえる、という意見だった。 
 
  今回の聞き取りからも〜わずか13人とはいえ〜社会党と共和党という2大政党が国民の支持を失っている傾向が感じられた。ただ、社会党や共和党という政党自体というよりはむしろ候補者のカリスマ性や説得力の不足と言う個人的な力不足、あるいは知名度や準備不足という面もあったように思われる。 
 
  とはいえこれはパリでの傾向であり、国民戦線の支持者が多い南仏やベルギーとの国境地帯などに行けば、その回答も違っていたことは十分にあり得ることだ。 
 
 
村上良太 


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