2017年05月26日14時02分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201705261402065

核・原子力

原発を再稼動させる我利我利亡者たち  根本行雄

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県、出力各118万キロワット)が5月24日、原子力規制委員会の審査に合格した。新規制基準をクリアした原発は計6原発12基となった。日本政府は未曾有の原発事故を経験しながら、今もなお、原子力発電を推進しようとしている。しかし、このまま再稼働を進めていこうとしても、現在の原発だけでは「安定的な電力供給」を達成することはできない。どうしても達成しようとすれば、原発を新規に増設するか、老朽化した原発の運転期間(原則40年)をさらに延長することが必要となることは明白だ。政府と原発推進派は、お金をばらまきながら、「福島の事故を教訓に、より安全な原発を」とデマを広めているのが現状だ。高度資本主義社会である日本では、我利我利亡者たちが跋扈している。 
 
 
 大阪高裁(山下郁夫裁判長)が3月28日、関西電力の保全抗告を認め、地裁の判断を取り消す決定を出したために、福井県の高浜原発の2基の再稼働が法的に可能になった。 
 
 
 
 政府は、新規制基準に適合した原発については順次再稼働させる方針を示しており、2030年度の電源構成に占める原発比率を20〜22%とする目標を定めている。この達成には、全国42基の原発のうち、30基程度を稼働させることが前提となっている。政府や電力会社にとっては、司法判断で高浜の運転停止が続けば他の原発の再稼働にも影響することが懸念されていた。 
 
 
 
 原子力規制委員会の安全審査を巡っては、これまで16原発26基が申請し、6原発12基が審査で合格。そのうち、関電高浜原発3、4号機のほか、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)▽四国電力伊方原発3号機(愛媛県)−−の3原発5基が再稼働した。 
 
 
 
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県、出力各118万キロワット)が5月24日、原子力規制委員会の審査に合格した。新規制基準をクリアした原発は計6原発12基となった。 
 
 
 
 東京電力福島第1原発事故を踏まえ、韓国の原発で事故が起きた場合の被害規模を専門家が試算した。気象次第で放射性物質が日本の広範囲に飛来し、日本で最大2830万人が避難を余儀なくされる恐れを指摘した。試算した米シンクタンク「天然資源保護協会」の姜政敏(カン・ジョンミン)上級研究員は「地震や津波だけでなく、テロや北朝鮮のミサイル攻撃が事故につながる事態も排除できない」としている。喉もと過ぎれば熱さ忘れる。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 大阪高裁(山下郁夫裁判長)の論理 
 
 
 
 山下郁夫裁判長は、国の原子力規制委員会が策定した新規制基準の合理性などを認め、「安全性が欠如しているとは言えない」と判断した。 
 
 
 
 
 
 ・原発に「絶対的安全性」を要求するのは相当ではない 
 
 
 
 ・新規制基準は最新の科学的・技術的知見に基づいて策定されており、福島事故の原因究明や教訓を踏まえていない不合理なものとはいえない 
 
 
 
 ・基準地震動の策定は合理性が検証されている関係式などが用いられており、過小であるとはいえない 
 
 
 
 
 
 
 
 大津地裁は東京電力福島第1原発事故を踏まえ、「常に危険性を見落としているとの立場に立つべきだ」として、厳格な安全性の確保を求めた。そして、福島事故の原因究明が「今なお道半ば」と言及し、新規制基準について「公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない」と不信感を示した。福島事故を受けた認定で、国民の原発事故再発への強い不安に寄り添った内容だった。関電側は「実質的なゼロリスクを求めるものだ」と批判した。 
 
 
 
 これに対し、高裁決定は原発に求める安全性の考え方を一変させた。 
 
 
 
 山下郁夫裁判長は科学技術の利用では「相対的な安全性が許容されている」とし、「原発に『絶対的安全性』を要求するのは相当ではない」と指摘し、「放射性物質による被害発生の危険性が社会通念上、無視しうる程度まで管理されていれば安全性が認められ、運転が許される」との判断を示した。 
 
 
 
 さらに、原因が未解明との指摘もある福島事故については「発生及び、進展に関する基本的な事象は明らかにされている」と指摘し、最新の科学・技術的知見に基づいて策定された新規制基準の合理性を強調した。原発の耐震性や避難計画の有効性など、あらゆる争点で安全性を主張する関電の言い分を追認している。 
 
 
 
 山下裁判長は、国の原子力規制委員会が策定した新規制基準を全面的に評価し、丸呑みに、信じ込んでいる。関西電力の主張についても、同様だ。 
 
 基準地震動の策定方法は「合理性が検証されている」としているが、熊本地震を契機に疑問視されており、検討不足だと言わざるをえない。 
 
 避難計画を評価するのは、原発事故の恐ろしさ、その被害の甚大さについて、あまりにも無知だと言わざるをえない。 
 
 
 
 山下郁夫裁判長の判断で、注目したいのは、住民側にも安全性の不備に関する立証責任を求めていることだ。 
 
 
 
 今回の判決は、予断と偏見にもとづくものだと言わざるをえない。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 原発を廃炉にして、自然エネルギーを利用する社会へ 
 
 
 
 反原発の主張の要点は、とっても単純明快だ。 
 
 原発を動かせば、必ず、大量の、放射線を発する物質である「放射能」のゴミができる。放射能は、私たち人間だけでなく、すべての生き物の生命を脅かすものである。この放射能のことを、ウランを燃やしたあとに残る恐るべき物質という意味で、一般には「死の灰」と呼ばれている。しかも、放射能のなかには何十万年も危険性がなくならないものがある。(ちなみに、「プルトニウム239」の半減期は、2万4100年と言われている。)だから、わたしたちは原発の生み出した放射能をほぼ永久に管理し、放射能が漏れ出さないようにしなければならない。しかし、放射能を安全に管理する方法について、現在のわたしたちも、そして、未来の人々も、知らない。 
 
 原発は、施設そのものも、時期が来れば放射能のゴミになる。原子炉、熱湯・蒸気などが通る管、蒸気発生器、原子炉格納容器など、すべてが放射能で汚染されている。現在動いている原発は、当初は、施設の寿命は20年から30年だと言われていた。しかし、その後、少しずつ延長されて、現在は40年とか50年と言われている。そして、さらに老朽化した原発を再延長している。 
 
 
 
 原子力発電をするということは、大量の放射能のゴミを生み出すばかりではなく、それを「負の遺産」として、何百世代も先の子どもたちに残していくということである。だから、わたしたちは、核の恐怖のない、原子力に頼らない社会へ、できるだけ早く移行する必要がある。そのためには、放射能のゴミを安全に管理する方法を見つけ出し、エコ・エネルギーを利用する発電やエネルギーのつくり方、使い方を具体化していく必要がある。自然エネルギーを利用する太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、波力発電、地熱発電、などなど。 
 
 
 
 一日も早く、再び、原発事故の起こる前に、すべての原発を廃炉にして、自然エネルギーを利用する社会へ変えていこう。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。