2017年05月29日16時37分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201705291637171

人権/反差別/司法

津久井やまゆり園  何故、人里離れた津久井に多数の障害者施設があるのか?  平田伊都子

 2017年5月27日に<津久井やまゆり園>追悼集会があるから花を持って参加しないかと、社会評論社の松田健二社長のお誘いを受けました。 念のため前日、会場となっている相模原産業会館に電話で確かめました。 「有機農業関係者がやまゆり園全国集会をやるそうだ。詳細は聞かされてないけど」と、親切に教えてくれました。 <やまゆり>はちょっと早いので、津久井に咲く野生の<ひなぎく>を摘んで持参し、献花台の隅に置きました。 そして、会場風景を撮っていたら、「一般人が撮影してもいいのですか?」と、おばさまから叱られました。 一般人に見られたのは本望です。 が、よそ者を入れたくないのなら一般に呼びかけないで、こっそり自分たちだけで集まればいい、、 この集会は、早々に退場しました。 
 
(1)津久井という過疎地: 
 津久井は行政上、存在しない。2006年3月20日、津久井郡は相模原市に編入合併され神奈川県相模原市津久井町となり、さらに2010年4月1日、相模原市が政令指定都市に移行して津久井地域の行政区は緑区となってしまった。かくして<津久井>という地名は、国の記憶から一掃されてしまう。が、地名が変わっても、住民は増えない。津久井湖の脇を昔ながらの狭い国道412号線が走っているが、過疎地に変わりはない。錆びた開かずのシャッターが目立つ商店街は、ひっそりと人影がない。梅雨入りしようという今日この頃、ウグイスがうるさく囀っている。ウグイスは<津久井の鳥>だ。 
 1889年4月1日、神奈川県津久井郡に中野村、太井村、三沢村(三井村+中沢村)、又野村、三ケ木村、青山村、長竹村、根小屋村、鳥屋村、青野原村、青根村が誕生する。 
 1955年4月1日 、中野町、串川村、青野原村、青根村と三沢村の三井地区が合併し津久井町が発足した。 
 1965年 津久井湖及び城山ダム完成する。 
 1998年 試験湛水により宮ヶ瀬湖が誕生する。 
 2006年3月1日、神奈川県津久井郡津久井町として最後の統計は、面積が122.04平方キロメートル、人口が28,551人で、人口密度が234となっている。 
村を沈めて造った津久井・人造湖の底には、怖い怨念話がたくさん纏わっている。津久井やまゆり園は、その津久井湖の入り口にある。 
 
(2)津久井にある社会福祉施設: 
 神奈川県知的障害施設団体連合会のリストによると、津久井方面には、津久井やまゆり園、藤野さつき学園、藤野薫風、城山薫風、ロシナンテ、リベルテ、、、等の名称が列挙されている。しかし、我が棲み処から200メートルと離れていない知的障害者施設は、連合会に加盟していないのか名前が載っていない。谷底にある施設の入り口には頑丈な鍵がかかっていて、人を寄せつけない。時折、悲鳴に似た叫び声があたりを震わせ、不幸な人々が隔離されているのだなと推測させられる。施設の近くに、「痴漢に注意!」の看板がたてかけられている。 
 路線バスも廃止されつつある辺鄙な津久井には、まだまだ多数の施設があるに違いない。 
 施設に入っている知的障害者の人々は、全国で約50万人と言われている。しかし、施設に入るには金がいる。一生、施設で暮らすにはどれくらい金がかかるのか?、金のない障害者の人々は、どうすればいいのか?、、その一方で、私たちのまわりには、どんどんおかしな人が増えてきている。すぐに切れるし、刃物を振り回すし、、みんな、おかしくなってきた。一億総精神障害状況だ。いっそ、みんなで障害者の面倒をみることにしませんか?明日は我が身、利口なあなたも、いつ知的障害者になるかもしれません、、 
 
(3)やまゆりは、7月から8月にかけて、津久井に咲く: 
 「津久井やまゆり園」は神奈川県が1964年(昭和39年)に設置し、2005年(平成17年)度から指定管理者制を導入して社会福祉法人「かながわ共同会」が運営している知的障害者施設だ。山に囲まれ、津久井湖から発した相模川に面している。入所定員は長期入所者150人、短期入所者10人の計160人とされていた。 
 2016年7月26日未明、この知的障害者施設「津久井やまゆり園」で刃物を 持った男が入所者らを襲い、19人を殺し、26人に怪我を負わせた。事件後に施設内で刃物2本が発見され、男は別の刃物3本を持って津久井署へ出頭した。 
 2017年2月24日になってやっと、横浜地検は犯人植村聖を男女19人入所者への殺人、男女24人入所者への殺人未遂、職員3人への逮捕・監禁、建造物侵入、銃刀法違反の6つの罪で横浜地裁に起訴した。事件発生から約7か月に及んだ一連の捜査が終結した。事件は裁判員裁判で審理される見込みで、裁判では責任能力が争点になると予想されている。 
 2016年9月13日、神奈川県知事は、施設を管理していた社会福祉法人「かながわ共同会」の要望を受け、施設の再建を発表した。11月16日、地元の公民館で県の説明会が開かれ、「60億円から80億円で2017年度から4年間かけて施設を全面的に建て替える。その間、入所者は横浜市内の県立施設へ仮居住する」と、発表された。 
2017年4月5日から21日にかけて、事件後も「津久井やまゆり園」で生活していた入所者約60人が「ひばりが丘学園」に転居した。「やまゆり園」は閉鎖され、4年後の2021年の完成を目指して再建工事が行われる予定になっている。 
 
 「津久井やまゆり園事件がなかったら、知的障害者に目を向けてくれなかった」と、集会で、障害を持つ車椅子の人が正直に語っていました。 事件がなかったら<津久井>という消された地名も忘れられたままだったでしょうね、、 
 これから、事件が起こった7月26日に向けて、様々な団体が様々な場所で<津久井やまゆり園>追悼集会を行います。 津久井のやまゆりを摘んで、お近くの<津久井やまゆり園>追悼会に参加されませんか? 
 
 
文;平田伊都子 ジャーナリスト  写真構成:川名生十 カメラマン    2017/05/29 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。