2017年06月01日10時16分掲載  無料記事
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政治

フランス政治の新しい力  ” La France insoumise ” ( 服従しないフランス) 

  フランスではマクロン新大統領が誕生して、これまでの社会党と共和党の二大政党を中心にしたシステムが一夜にして崩壊してしまいました。マクロン大統領にとっては政策を実現する上で、6月に行われる国民議会(下院)選挙でも自ら立ち上げた政党" En Marche ! "からできるだけ多くの議員を出すことが重要になってきます。驚いたことに昨日のフィガロ紙では世論調査の結果、577人の全下院議員のうち、なんと320から350議席をマクロン氏のEn Marche ! が獲得して国会でも安定多数を占める、と書かれていました。とはいえ、これはマクロン氏を勝たせるための記事だ、という批判も何人かから聞きました。 
 
  フランスでは右派の共和党が低迷し、そこをEn Marche!が突いて票を奪っていったのですが、マクロン氏が奪ったのは右派政党票だけではなく、社会党支持者の票も一定数奪っていきました。オランド大統領の5年間が左派や中道の大衆の社会党への失望を生んでしまったことは間違いありません。「社会党はもはや社会主義とは何の関係もない政党だ」と言う声を何人もから耳にしました。社会党は本質的には新自由主義政党になった、という批判です。これは社会党が昨年行った労働法の規制緩和も大きく影響しています。 
 
  社会党に不満を持った人々が今、集結しているのが ”La France insoumise ” ( 服従しないフランス)です。これは社会党を飛び出して左翼党を立ち上げたジャン=リュク・メランション議員を中心にした新しい左派のグループです。” La France insoumise ” ( 服従しないフランス)が擁立したメランション氏は今年の大統領選でも社会党のブノワ・アモン候補より圧倒的に多くの票を集め一時は決選投票に残る可能性も垣間見せ、国民を驚かせました。これまでは極左の異端児と思われていた左翼党のメランション議員らに熱いまなざしが集まったのは社会党に引導を渡してそれに代わる政党を求めた人々がいかに多かったか、ということを示しています。このグループも来月の国民議会選挙に向けて候補者を各地で擁立して選挙戦に臨んでいます。 
 
  パリの13区と14区にまたがる地域を選挙区にしているレイラ・シャイビ(Leila Chaibi) さんも ”La France insoumise ” ( 服従しないフランス)から出馬しています。シャイビさんは昨年、ニュイドゥブ( Nuitdebout = 立ち上がる夜)という市民運動に参加した女性で、ニュイドゥブが収束しても独自に政治運動を継続してきました。既存政党に満足できない人々が起こしたニュイドゥブ( Nuitdebout = 立ち上がる夜)は1年たった今、現実の国政の場に議員を出そうとしています。 
 
シャイビさんの重要な政策の1つがパリの不動産価格の高騰を抑えて若者や市民が安心して暮らせる家賃や不動産価格を実現することです。南仏トゥールーズ出身のシャイビさんは過去に様々な短期雇用の仕事を繰り返したと語りました。雇用はCDD(Le contrat a duree determinee) と称される短期雇用が多く、たとえ大学を出ても正規社員になれない若者が少なくありません。「父は私にしっかり勉強したら仕事も家も手に入れられると語ったが、現実はそうではない」と言います。多くの人の収入は下がり、正規雇用が年々減って雇用も不安定化する一方で、不動産価格は高騰し、一生働いても家(アパート)を持つことができないであろう若者をたくさん生み出しています。シャイビさんにとってはこの状況を変えることがまず必要だと言うのです。 
 
村上良太 


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