2017年06月05日00時17分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201706050017011

欧州

相次ぐ国家非常事態の延長で、フランスの民主主義が揺らいでいる

 フランスでは議会が国家非常事態の延長を重ね、法の支配にもとづく民主主義が危険にさらされている。2015年11月にパリで発生したテロ事件から数時間後、オランド大統領は非常事非常事態法を発令した。この法律は、内務大臣と自治体の役人に、裁判所の許可なしに家屋や敷地内を捜査し、被疑者の移動を制限する強力な権限を付与する。新大統領のついたマクロン氏も、 英マンチェスターで発生した自爆攻撃事件を受け、非常事態宣言を11月1日まで延長すると発表した。同宣言は今年7月半ばに失効する予定だった。(大野和興) 
 
 非常事態の適用状況を監視する委員会によれば、2015年11月の事件以来、法執行機関が非常事態宣言に基づいて行った令状なしの家宅捜査は、4,292回であり、自宅軟禁は612人を記録した。しかし、テロ関連の犯罪捜査に結び付いたのは、わずか61件だった。この中にはテロ事件に関係する犯罪容疑などというあいまいな規定にもとづく捜査で摘発した20件も含む。 
 
 非常事態法の延長は、通常の治安問題を「非常事態」に変えてしまう恐れがあると、国際人権NGOアムネスティは警告する。ほぼチェックされることもない、現行の極めて過度で無差別な権限の行使により、甚大な人権侵害を引き起こしかねない、というのだ。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。