2017年06月14日16時29分掲載  無料記事
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コラム

「共謀罪」で日本のソビエト化を加速する安倍首相  読売新聞は日本版「プラウダ」か 

  インターネットの世界では今夜にも「共謀罪」が参院を通過しそうだ、という情報が流れている。実際にはテロの取締とはほとんど無縁の「共謀罪」は日本国内の政府に反対する市民の弾圧に使用するために制定されている。そして、これは特定秘密保護法が制定されようとしていた4年前の拙稿「ロシアから見る特定秘密保護法案  〜日本がソビエト化する日〜」で書いたことだが、安倍政権は日本をソ連に近い国に改造しつつあり、今回の共謀罪で一段と加速することになるだろう。少し長いが4年前の原稿から一部引用したい。 
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  「ロシアでは共産党一党支配のソ連時代が70年近く続いた。いつどんな理由で逮捕投獄されるかわからない。実際にスターリンの時代には大量の知識人が粛清されるか、シベリアの強制収容所に送られている。しかも独立心に富み、国を愛し、知性や想像力にあふれた人々が真っ先に収容所に送られた。こうしたわけで、ロシアではできるだけ目立たないようにしよう、というメンタリティが精神の基盤になってしまったようなのだ。ソ連が崩壊した後も、新生ロシアの経済は石油やガスなどの資源を別にすると、今ひとつぱっとしない。労働者はまじめであるにもかかわらず、である。70年しみついたメンタリティを変えるのは楽ではない。 
  安倍政権が成立させようとしている特定秘密保護法案も究極的にはソビエト型官僚主義時代の始まりと言えるのではないか。秘密が何かわからないことは国民の真実探求への道を封じるものである。それはまさにソビエト化への道であろう。」(2013年11月24日) 
 
  安倍政権を支持している人たちは一見、ソ連嫌いのように思われるのだが、実質的にはソ連的な社会に向けて驀進している。資本主義が最も開花しうるのは情報が適正に流通するからであり、社会主義が敗北したのは情報が構造的に滞るからである。正しい情報は民主主義にとっても健康な経済発展にとっても死活的に重要である。しかし、ソ連にはまっとうなジャーナリズムが存在せず、重要な情報や政策は中央の機構から一方的に全国各地に送られるばかりで、地方からのフィードバックはほとんどなかった。それらは中央の役人と政治家が絵に描いた理屈ばかりだったのだ。モノの価格も統制されていたため、どこに何がいくら必要かも正確に把握できなかった。ソ連の二大新聞は共産党の検閲のもとでしか発行できなかった。だから、工場で無駄なものを作ったり、コネで発注したりするから、良いものが駆逐されるし、配給も非効率で、ソ連は経済的にもボロボロになり1970年代の末にはアメリカに太刀打ちできなくなってしまった。そして一部の特権層にとってのみ居心地のよい国になり果ててしまった。皮肉にも冷戦に勝利したはずの日本が今、猛スピードで向かっているのはこのような社会だ。 
 
  今、日本の国会答弁を見れば官僚も与党政治家もその多くが国民に対する責任などは微塵も持っていないことがうかがえる。岩盤規制に穴をあける、と表向きは画期的なことを歌っているが、その中身は友達への依怙贔屓である。これもまたソ連の官僚社会では日常にあったことだ。官僚のトップを政治家が実質的に采配できる内閣人事局を作ったことで日本のソビエト化は大きく不可逆に進んだ。本来官僚は国民に仕える存在だったのだが、今では国民を無視して内閣人事局長のために仕事をしている。日本の未来を知りたければ、コンピューターなど不要だ。ロシアの歴史博物館に行けばよい。特定秘密保護法は官僚たちに国民やジャーナリストに向かって喋らせないための法律である。今、国会答弁で日々、目にしている風景がその成れの果てである。 
 
   すでに読売新聞は安倍首相の機関紙同然となり、朝日新聞も表面的には政府批判をしているが、本質的には一定の限度に来ると政府擁護の記事を書いて政府の機嫌を取っている。さらにはいかなる記事でも見出しで中身を薄めて、できるだけ読者が真意をつかめないように工夫している。ソ連の新聞編集者たちはソ連崩壊まで、自己変革することはできなかったが、読売新聞や産経新聞も同じ運命をたどるだろう。これらはソ連の新聞によく似ている。情報が滞ると言うことは社会が陳腐化していくことである。政府批判の目を共謀罪によって事前に摘む、ということは社会の腐敗を正す機会を自らつぶす、ということである。ソ連ではスターリンの時代からブレジネフの時代まで、国家が情報を統制し、政府にたてつくものはシベリアへ送り、一方で政権に近い人々ヘは手厚い褒美を用意していた。今夜にも可決されそうな共謀罪はその性質上、秘密警察を作ることになるだろうし、国民を監視・抑圧するための法律である。その結果、国民は自己を表現することを控えるようになる。政府批判は隠喩を使うSF小説でしかできなくなる。このような空気に堪えかねてアメリカや欧州などに亡命する才能も増えるだろう。ソ連が誕生してから崩壊まで70年近くかかり、その間にアメリカとの間に生まれた産業力の格差はソ連崩壊から25年以上が経過した今日も埋まることがないのだ。 
 
 
村上良太 


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