2017年06月22日15時31分掲載  無料記事
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核・原子力

原子力機構・内部被ばく。管理のズサンさは驚くばかり  根本行雄

 日本原子力研究開発機構は6月6日、茨城県大洗町の大洗研究開発センター燃料研究棟で、核燃料の点検をしていた職員ら男性5人が被ばくしたと発表した。この被ばく事故で、原子力規制委員会の事務局・原子力規制庁は6月21日、同センターを立ち入り検査した。規制委による緊急立ち入り検査は、機器点検漏れ問題を受け、2013年実施した原子力機構・高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の検査以来2回目で、極めて異例。規制委の田中俊一委員長は同日の定例記者会見で、原子力機構の組織体質なども含め、根本的な調査が必要との見解を示した。原子力発電にかかわる放射性物質のもつ危険性というものを、このようなズサンさで管理していることの怖ろしさを直視せよ。 
 
 
 日本原子力研究開発機構は6月6日、茨城県大洗町の大洗研究開発センター燃料研究棟で、核燃料の点検をしていた職員ら男性5人が被ばくしたと発表した。この被ばく事故に関連して、さまざまな問題が見えてきた。 
 
 
 □ 管理のズサンさ その1 
 
 日本原子力研究開発機構(本部・茨城県東海村)は、4拠点12施設で核燃料に使う放射性物質を不適切な場所に置いているとして、原子力規制委員会から改善を求められていた。定められた保管庫に置くべきところ、作業場に35年以上も放置した例もあるなど、ずさんな実態が明らかになった。大洗研究開発センター燃料研究棟(茨城県大洗町)で6月6日に起きた作業員の被ばく事故は、これを整理する過程で発生したものである。 
 
 
 毎日新聞(2017年6月8日)は次のように伝えている。 
 
 保管場所は関係法令に基づいて事業者の社内規定で定めている。不適切な管理は規制委による昨年の保安検査で判明。指摘を受けた12施設は▽同センター3施設▽核燃料サイクル工学研究所(同県東海村)4施設▽原子力科学研究所(同)3施設▽人形峠環境技術センター(岡山県鏡野町)2施設−−だった。 
 
 事故が起きた研究棟でも、作業用の箱「グローブボックス」に、使う予定がない放射性物質101点が最長25年以上も置いたままだった。原子力機構は昨年11月に規制委から改善を求められたが、同棟では保管庫が放射性物質の入ったステンレス製容器80個で満杯。中身をまとめて空きを確保しようと計画し、内容量の確認のため今年2月から開封している中で事故が起きた。 
 
 この容器は1991年から26年間、一度も点検のため開封していなかった。 
 
 
 
 □ 取り扱いのズサンさ その2 
 
 プルトニウムが私たちの健康に大きなダメージを与えることは、周知の事実である。ところが、今回の事故では、確認作業は密閉されていない作業台の上で行われたうえに、5人が着用していたのは全面マスクではなく、顔の下半分を覆うだけの半面マスクだった。 
 
 
 日本原子力研究開発機構・大洗研究開発センター(茨城県大洗町)の作業員被ばく事故で、原子力規制委員会の田中俊一委員長は6月14日の定例会見で「適切な作業方法ではなかった」と原子力機構を批判した。この施設には密閉された作業台が36台あったが、点検は密閉されていない簡易な作業台で行われた。田中委員長は「(今回のような)作業をする場所ではない」と述べた。 
 
 
 
 取り扱いのズサンさ その3 
 
 日本原子力研究開発機構は6月15日、大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で発生した被ばく事故について、事故前に作成した安全チェックリストには「破裂の恐れ」を点検するよう求める項目を記載していたにもかかわらず、現場の作業員が「該当しない」と判断していたことを明らかにした。 
 
 原子力機構によると、先月作成した「一般安全チェックリスト」では、火災の恐れや「爆発・破裂・飛散の恐れはあるか」など30の点検項目を列挙していた。作業員はこのうち、破裂に関する項目については、容器内のプルトニウムが二重の袋に入っていることから、点検は容器の外観だけにとどめ「該当しない」と判断し、破裂のリスクを考慮しなかったという。 
 
 事故は26年間、一度も開けられたことがない核物質入りの容器を開封する過程で起きた。破裂リスクを考慮しなかったことについて、原子力機構の担当者は15日の記者会見で「不適切だった」と釈明した。 
 
 
 ここで、原子力発電にかかわる情報をいくつか取り上げておきたい。 
 
 
 □ 使用済み核燃料の保管問題 
 
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)が5月24日、原子力規制委員会の安全審査を正式にクリアし、関電が審査を申請した大飯、高浜、美浜の3原発7基(いずれも福井県)は全て新規制基準に適合した。今後、再稼働が進む見通しだが、稼働すればするほど使用済み核燃料は増える。関電は3原発がフル稼働すれば、約7年で保管プールが満杯になると見積もっており、使用済み燃料の行き場が今後の課題となる。 
 
 核のゴミの処理をどうするかという問題以前のところ、保管場所すらないのが現状である。 
 
 
 □ 原子力機構、材料試験炉を廃炉へ 
 
 日本原子力研究開発機構(原子力機構)は2016年10月18日、茨城県大洗町にある材料試験炉(JMTR)や同県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)など原子力関連10施設を廃止する方針を明らかにした。いずれも老朽化が進み、新規制基準への適合が困難になることを理由に挙げている。 
 
 原子力機構によると、JMTRは2007年度から約170億円をかけ改修や整備工事を実施したが、新規制基準に対応するにはさらに約400億円かかることが判明。改修・整備工事後、一度も運転することがなかったが、費用面も考慮し廃止方針を決めた。 
 
 既に廃止を決めたり、廃止方針を決めたりしたのはこの10施設を含め計42施設となり、残る46施設は継続利用する方針。 
 
 ほかに廃止方針を決めたのは高レベル放射性物質研究施設(CPF、東海村)や照射材料試験施設(MMF、大洗町)など。 
 
 
 原子力発電は「安い」という神話は、もう、完全に崩壊したと言えるだろう。 
 
 
 
 □ 原子力機構・内部被ばく、2.2万ベクレル 
 
 日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で発生した被ばく事故。核燃料物質を点検していた作業員5人のうち、1人の肺からは過去に例のない2万2000ベクレルのプルトニウム239が検出され、がんなど健康への影響が懸念される。 
 
 日本原子力研究開発機構は6月6日、茨城県大洗町の大洗研究開発センター燃料研究棟で、核燃料の点検をしていた職員ら男性5人が被ばくしたと発表した。このうち3人は内部被ばくした可能性が高く、原因などを調べている。外部への放射性物質の漏えいはないという。 
 
 日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で、核燃料を点検していた5人に放射性物質が付着し被ばくした事故で、同機構は7日、1人の肺から2万2000ベクレルの高い放射性物質が検出されたと発表した。放射性物質は体外に排出されにくいため、1年間で1・2シーベルト、50年間で12シーベルトの内部被ばくが見込まれるという。5人は放射線総合医学研究所(千葉市)に搬送されており、内部被ばく状況を詳しく検査する。 
 
 
 放射能汚染は、現場の作業員、下請け、孫請け、ひ孫請けなどの労働者たちが被害者になっている。こういう現場のありかた、雇用のありかた、これらはすべて人権侵害である。人権侵害の上に、原子力発電は成り立っているのだ。 
 
 
 
 □汚染水処理問題 
 
 東京電力福島第1原発事故における汚染水問題については抜本的な解決には至っておらず、約1000基のタンクにたまった汚染水の処理が今後の課題になっている。一方、2041〜2051年までかかるとされる廃炉作業の進み具合については「まだ1合目」(小野明第1原発所長)で、溶けた核燃料の取り出し作業の開始は早くても5年後になる見通しだ。 
 
 「汚染水問題の解決なくして、廃炉はほど遠い。何としてでも水を止めないといけない」。近畿大原子力研究所の伊藤哲夫所長(原子力安全工学)は、こう指摘する。敷地内にある汚染水貯蔵タンクは約1000基に達している。 
 
 今だに、東京電力福島第1原発事故は抜本的な解決には至っていない。それ以前の、おそまつな現状だ。汚染水すら、安全に管理できないのだ。「汚染水問題の解決なくして、廃炉はほど遠い」のだ。 
 
 
 
 □ 福島第1原発事故にたかる我利我利亡者 
 
 東京電力福島第1原発事故の除染事業で、準大手ゼネコン「安藤ハザマ」(東京都港区)が下請け業者に宿泊費などの領収書を改ざんさせ、発注者の福島県いわき市と田村市に水増し請求していたとされる問題で、東京地検特捜部は6月19日、詐欺容疑で同社本社など関係先の家宅捜索が行なった。 
 
 同社は今月9日、記者会見を開き、領収書の改ざんを公表した。水増し額は計約8000万円としたが、改ざん行為は行政との間で除染事業の最終契約額が決まった後だったとし「不正受給があったかどうかは調査中」と説明した。 
 
 同社によると、水増ししていたのは両市が発注した2012〜2015年の除染やモニタリングの事業。同社の男性社員が下請け業者に指示して宿泊単価を増額させたり、人数を実際より多く見せかけたりしていた。下請け業者の子会社は、いわき市内で作業員用の宿舎を運営している。 
 
 いわき市では、宿泊代1泊5000円の単価を7500円に、作業員約1万1000人を約1万5000人に水増し。田村市では単価5000円の宿泊代を5500円に、作業員5600人を約1万人に変更させた。水増し額の内訳はいわき市で約5300万円、田村市で約2700万円に上る。 
 
 
 原子力発電所の事故にかかわる、このようなところにも、「自分さえ、儲かればいい。」、「お金さえ儲かればいい」という我利我利亡者たちがはびこっている。資本主義は私たちの道徳性を腐敗させ、破壊していく。 
 
 
 
 □ 一日も早く、すべての原発を廃炉にせよ 
 
 前回、ネモトは「原発を再稼動させる我利我利亡者たち」という文章を書いた。そして、「一日も早く、再び、原発事故の起こる前に、すべての原発を廃炉にして、自然エネルギーを利用する社会へ変えていこう」と書いた。そして、今回の原子力機構の事故である。こういう人たちが管理しているのでは、「安全」とは絵に描いた餅である。数百年、数万年という長期間を「安全」に管理することは、わたしたちの能力を超えているのだ。そこをきちんと直視しなければならない。政府と原発推進派は、お金をばらまきながら、「福島の事故を教訓に、より安全な原発を」とデマを広めている。原子力発電を「安全」に管理することはできない。このような事故がこれから先、何回、発生したならば、すべての原発を廃炉にしようということになるだろうか。気づいたときは、すでに、地球環境は放射能汚染のために末期症状を呈しているということにならないだろうか。 
 
 原子力発電は安くはない。 
 原子力発電は「放射能」のゴミを出し続ける。 
 原子力発電は「安全」ではない。 
 原子力発電は「安全」に管理し続けることはできない。 
 すでに、放射能汚染は進んでいる。 
 
 
 わたしたちは、核の恐怖のない、原子力に頼らない社会へ、できるだけ早く移行する必要がある。そのためには、放射能のゴミを安全に管理する方法を見つけ出し、エコ・エネルギーを利用する発電やエネルギーのつくり方、使い方を具体化していく必要がある。自然エネルギーを利用する太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、波力発電、地熱発電、などなど。 
 
 
 わたしたちは、一日も早く、再び、原発事故の起こる前に、すべての原発を廃炉にして、自然エネルギーを利用する社会へ変えていかなければならない。 


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