2017年06月27日04時52分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  国際麻薬防止キャンペーンの焦点はモロッコ  平田伊都子

 6月26日は国連が決めた<国際麻薬乱用・不正取引防止の日>です。 この日に先立つ6月22日、国連ニューヨーク本部で、UNODC(ユーエヌオーディーシ)国連薬物犯罪事務所による、麻薬不正取引とテロに関する報告がありました。 「モロッコがカンナビス(別名大麻草)の最大生産国である。多数の過激派組織はその資金源を、麻薬密輸に負っている」と、UNODCは発表しています。その報告を裏付けるように、カンナビス(大麻草)の最大生産国モロッコで、大量麻薬摘発事件やモロッコ人によるテロ事件やIS過激派モロッコ人の逮捕事件が続発しています。 モロッコの人々は身体能力が高いし、イケメンが多い、、<悪魔王子>と異名を取る世界ヘビー級チャンピオンの格闘家、バダ・ハリ(32才)もモロッコ人だし、、 何故、心身共に優秀なモロッコ人が麻薬やテロに走ってしまうのか?  職がないからです。 モロッコ北部のリーフ地域では、ラマダン(断食月)最後の日も、<職よこせデモ>がありました。 
 
(1)ロンドン・テロはモロッコ人たち:MWN(モロッコ世界ニュース発) 
 2017年6月3日午後10時(現地時間)、白いバンが時速80キロで暴走して通行人をはね飛ばした。バンから出てきた3人組の男たちは、近くの食材市場バラ・マーケットに乱入し、ナイフで次々と客たちを刺していった。ロンドン警視庁の発表では7人が死亡、警官4人を含む48人が重軽傷を負い、テロリスト3人は殺された。3人は<ウンマ・フィットネス>という名のスポーツ・ジムを根城にし、うち2人は、モロッコ出身だった。 
 モロッコ人ラシド・レドゥアン(30)は犯行の約3時間前、ロンドンの元妻を訪れ、幼い娘に会った。弟分のモロッコ人、ユセフ・ザグバ(22)も、犯行2日前にイタリアに住む母親に最後の電話をかけていた。 
 6月19日にはパリのシャンゼリゼ通りで、またしてもモロッコ人が乗用車で警察の車両に突っ込んだ。車は炎上し男は死んだが、けが人はいなかった。車内からはカラシニコフ銃や拳銃、ガスボンベが発見されている。フランスのメディアによると、31才の男はイスラム過激主義のグループに参加していて、治安当局の監視対象だったという。 
 
(2)ブリュッセル・テロはモロッコ人:イスラエル紙ハーレツ発 
 ベルギー連邦行政長官エリック・ヴァン・デル・シプトは、「6月19日、首都ブリュッセルの中央駅で自爆攻撃を試みた男を兵士が射殺した。男は釘とガスボンベが入ったリュックサックを背負い、爆弾ベルトを身に着けていた。<アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら、2度、起爆させた。男はテロ容疑者リストには入っていない。負傷者はいない」と、翌6月20日に発表した。6月21日に連邦警察局が、「男は37才のモロッコ人で、ブリュセルのモレンべーク地区出身だ」と、公表した。 
 モレンべーク地区は、テロリストの温床として世界を震撼させたモロッコ人居留区だ。 
 2016年3月、ISイスラム過激派組織によるとされる空港と地下鉄駅での連続攻撃で、32人が死亡した。ブリュッセル襲撃の実行グループは、130人が死亡した2015年11月のパリ連続襲撃にも関わっていたという。この2大テロ事件の実行グループは、ブリュッセルのモレンビークに拠点を置くモロッコ移民二世たちで、資金源はモロッコ北部リーフ地域で生産される大麻草だと言われている。 
 
(3)モロッコでモロッコ人テロリストが続々逮捕:モロッコ法務調査中央局(BCIJ)発 
 6月半ばにモロッコ北部リーフ地方の港町・タンジェ近郊にある岩窟で、箱型に梱包された大量のハシッシが押収された。ハシッシとは、学名をカンナビス・サティバと呼ぶ大麻草を精製した、麻薬の呼称だ。リーフ山地で栽培され大麻草が山を下って加工されハシッシとなり、タンジェ港からスピードボートで夜の闇をつき、15km離れたスペイン海岸に運ばれる。これが、一番近いオーソドックスなハシッシ麻薬密輸ルートだ。 
 6月22日、モロッコのイミンタノーテで4人のISイスラム過激派組織に属するモロッコ人テロリストが逮捕された。農夫へ、「お前のトラックターにブツを隠してある。手を出すな」と、脅迫電話をしたことから、足がついた。農夫の通報を受けて警察がトラックターを調べると、大量の火薬が見つかった。 
 同じ6月22日、BCIJ(モロッコ法務調査中央局)がモロッコのエッサウィラで、ISイスラム過激派に繋がるテロ組織を急襲した。逮捕された4人のメンバーは、モロッコでの聖戦を宣言し、<マグレブ・アル・アクサ=モロッコのイスラム国州>を名乗っている。モロッコ・テロリスト4人は、エッサウィラ等の、モロッコ観光地の衝撃を計画していた。 
 
(4)モロッコ・スペイン国境とスペイン本国で、モロッコ人テロリスト斡旋業者を逮捕: 
 6月21日、首都マドリッドでスペイン内務省が、「3人のモロッコ人をテロの疑いで逮捕した。43才の男をリーダーに、<インギマシ(サイバー戦士)>の養成を目的とする<サイバー戦闘細胞>を作っている。この細胞はISイスラム過激派組織の思想をヨーロッパに広めようとしていた」と、発表した。 
 6月23日、スペイン領メリージャで、モロッコ当局とスペイン民間警備員の作戦グループが、ISイスラム過激派組織と北アフリカのアルカイダに繋がりを持つ、モロッコの男を逮捕した。スペイン内務省は、「オランダ国籍を持つ40才のモロッコ人はテロ組織に属していて、彼の逮捕はスペイン民間警備会社とオランダ治安当局とモロッコ当局とEU警察の緊密な協力による成果だ。ジハディスト(イスラム戦士)を斡旋売買するオランダの会社は、24軒も判明している。これまでに、オランダ人、ドイツ人、スペイン系人などが、紛争地に送り込まれている」との声明を出した。 
 モロッコ内務省のアブデル・ウワフィ・ラフリトによると、「2012年以来、1631人のモロッコ人がISイスラム過激派組織に戦闘員として参加している。彼らはイラクやシリアやリビアの戦場で戦った。うち、284人は女で333人は10代で、558人が戦死した。現在、52人の女を含む265人はモロッコに帰国している」と、なっている。 
 
(5)ラマダン(断食月)明けに、モロッコ国王がやった反対運動締め付け: 
 2017年は6月26日に、ラマダン(断食月)明けのお祭り<イード・ル・フィトル>が始まった。モロッコ国王陛下も慣例に従って、562人の囚人に恩赦を下した。しかし、リーフ・デモの平和活動家たちは外された。それどころか、リーフ・デモ支援者で、オランダに住む元モロッコ国会議員のサイド・チャウの引き渡しを、オランダ政府に強要した。モロッコ司法当局が、「サイド・チャウは、2010年のギャング犯罪事件や2015年の国際麻薬密輸事件などに関わっている」と、判決を下した。さらにモロッコ司法当局は名指しを避けながら、「くだんの輩は、麻薬密輸で稼いだ金で、モロッコ北部リーフ地方の独立運動を焚き付けている」と、糾弾した。そして、モロッコ国王のいうことをきかないオランダ政府を非難し、駐オランダ・モロッコ大使を召還させた。 
 モロッコ国王の強引な要求と大使の召還に、オランダ政府当局は、「モロッコ大使の召還は納得できないし、サイド・チャウの引き渡しにも応じない」と、反発した。さらにオランダ当局は、「モロッコの一方的な電話による強要は、外交を全く無視している。人物の引き渡し要請は、まず、ちゃんとした文書でなされるべきだ」と、言明した。 
 
 ラマダン(断食月)の間、連日のようにモロッコ人が絡むテロ事件や麻薬摘発事件が続発しました。 世界マスコミの目は、ISイスラム過激派の拠点とされるイラクやシリアに集中しています。 マスコミの見解は見当違いなのでは?もしかして、わざと目を逸らせているのでは?と疑いたくなります。 MWN(モロッコ世界ニュース)が、「様々な組織がリーフ・デモ指導者のゼフザフィに、リーフ独立運動をやれとけしかけている。が、彼は拒否し、<職よこせ>運動に固執している」と、発表しています。 この記事は、ISイスラム過激派組織やAQIM(アフリカ・アルカイダ運動)などが、リーフ地方を狙っていることを示唆しています。 
 モロッコ北部のリーフ地方にあの、おぞましい白黒旗が翻らないことを祈るばかりです。 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之    2017年6月27日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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