2017年06月30日15時46分掲載  無料記事
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政治

稲田防衛相を即時罷免せよ  根本行雄

 稲田朋美防衛相は6月27日、東京都板橋区で開かれた都議選の自民党候補を応援する集会で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたいと、このように思っているところだ」と訴えた。野党4党は6月29日午前、自民党に稲田氏の罷免を要求した。さらに野党側は大島理森衆院議長に対し、稲田氏の発言や学校法人「加計(かけ)学園」問題を審議する臨時国会の召集を安倍晋三首相に働きかけるよう要請した。首相は稲田氏を続投させる方針だが、4野党は首相の任命責任を追及し、罷免要求を強める構えだ。安倍首相は稲田氏を続投させる考えでいるらしいが、7月2日に投開票日が迫る東京都議選で、どのような結果がもたらされるのか。主権者である私たちの資質が問われている。 
 
 
 
 
 憲法は「すべての公務員は、全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」と規定している。防衛相を含む各省庁の政務三役(大臣、副大臣、政務官)は国家公務員法で定める「特別職」にあたり公選法上の地位利用による選挙運動禁止規定の適用対象になる。 
 公職選挙法は136条の2では、特別職を含むすべての公務員の地位を利用した選挙運動を禁止している。防衛省職員は国家公務員法102条、自衛隊員は自衛隊法61条でそれぞれ「選挙権行使を除く政治的行為」が制限されている。 
 
 
 毎日新聞(2017年6月27日)は次のように伝えている。 
 
 稲田朋美防衛相は27日、東京都板橋区で開かれた都議選の自民党候補を応援する集会で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたいと、このように思っているところだ」と訴えた。行政の中立的運営から問題になりかねず、自衛隊の政治利用と受け取られる可能性もある。 
 集会後、稲田氏は記者団に「地元のみなさん方に対する感謝の気持ちを伝える一環として、そういう言葉を使ったわけだが、あくまでも自民党として応援している」と述べた。 
 稲田氏は集会で「テロ、災害、首都直下型地震も懸念される中、防衛省、自衛隊と東京都がしっかりと手を携えていくのが非常に重要だ」とも強調した。 
 
 稲田朋美防衛相は27日、東京都板橋区で開かれた都議選の自民党候補の集会に出席し、「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と支援を訴えた。自衛隊を政治利用したともとれる発言に野党は一斉に反発し、稲田氏は同日深夜、発言を撤回した。 
 
 
 
 稲田氏はこれまでも資質が問題視されてきた。今年2月の国会答弁では、南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣の陸上自衛隊の日報に「戦闘」の語句があったことに対し「憲法9条上の問題になるので『戦闘』ではなく『武力衝突』という言葉を使っている」と現地の状況を取り繕うかのような発言をしたことは記憶に新しい。学校法人「森友学園」を巡っては学園の民事訴訟に弁護士として関わったことを認め、関与を全面否定した自らの発言の撤回に追い込まれたのも、つい先日のことだ。 
 
 
 
 毎日新聞(2017年6月29日)は、また、次のように伝えている。 
 
 東京都議選の応援演説で自衛隊の政治利用ともとれる発言をした稲田朋美防衛相。安倍晋三首相は当面続投させる構えだが、ことは実力組織・自衛隊を統括する閣僚の適格性に関わる。第2次安倍政権の発足以降、辞任した閣僚5人と比べても問題は深刻で、専門家からは「即刻罷免すべきだ」との指摘も出ている。 
 
 
 
 安倍首相は19日の記者会見の際、国会答弁について「印象操作のような議論に強い口調で反論してしまった。深く反省している」と陳謝して幕引きを図ったが、その後も文部科学省の文書が新たに発覚するなどした上に、豊田真由子衆院議員による秘書への暴言や暴行が報道された。 
 
 
 毎日新聞(2017年6月22日)は、次のように伝えている。 
 
 豊田氏は、厚生労働省の課長補佐などを経て2012年の衆院選で初当選し、現在2期目。文部科学省などの政務官を務めた。豊田氏と同様に12年衆院選で初当選した当選2回の自民党議員を巡っては、金銭トラブル、失言、不倫問題などの不祥事が相次いで起きている。 
 
 豊田氏は自民党が政権を奪還した2012年の衆院選で初当選し、現在2期目だ。大量に当選した自民党の同期議員には、金銭トラブルで離党した武藤貴也氏、不倫疑惑で議員辞職した宮崎謙介氏、女性問題で離党した中川俊直氏らがいる。 
 
 ほかにも失言や不祥事で批判を受けた議員は多く、かねて「自民党の2012年問題」と言われてきたほどだ。 
 
2012年衆院初当選(当選2回)の自民党議員を巡る最近の不祥事(敬称略) 
 
2015年8月 武藤貴也(滋賀4区) 未公開株を巡る金銭トラブル→離党 
 
2016年2月 宮崎謙介(京都3区) 妻以外の女性との不倫→議員辞職 
 
2017年3月 務台俊介(長野2区) 「長靴業界はもうかった」と発言→政務官辞任 
 
2017年4月 中川俊直(広島4区) 妻以外の女性との不倫→離党 
 
2017年5月 大西英男(東京16区) がん患者に対する暴言→都連副会長辞任 
 
 
 
 安倍政権の強引な手法によって、「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を設ける改正組織犯罪処罰法は、与野党の激しい駆け引きの末、6月15日朝に成立した。特定秘密保護法、安全保障関連法に続き、「共謀法」と、安倍政権によって日本はますます「きな臭い」国になりつつある。 
 
 安倍政権には、稲田防衛相をはじめてして、資質に欠ける政治家がはびこっている。これについては、当然、批判しなければならないが、忘れてはならないことは、議会制民主主義のもとでは、このような政治家を選んだ責任は国民にあるということだ。自民党の議員に投票したかどうかにかかわりなく、このような政治家が政権を握ればどういうことになるか。それをしっかりと見て、忘れないようにしなければならない。その点では、安倍政権は典型的なケースだと言えるだろう。安倍首相は稲田氏を続投させる考えでいるらしいが、7月2日に投開票日が迫る東京都議選で、どのような結果がもたらされるのか。主権者である私たちの資質が問われている。 


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