2017年06月30日15時56分掲載  無料記事
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中国

「基本法を民主的に制定しなおして 香港人による命運自決を実現しよう」 香港のウェブサイト「無国界社運Borderless Movement」から

 香港は今年の7月1日でイギリスから中国に返還されて20年を迎えます。今日から三日間の日程で中国の習近平・国家主席が香港を訪問します。また7月1日には3月の行政長官選挙で選ばれた林鄭月娥・新行政長官が就任します。香港返還から20年。中国政府は香港基本法を制定し、「50年不変」「一国二制」と約束しましたが、強まる中国の影響力のなかで香港市民は民主化の進展だけが不変だと不安を抱える中での返還20年を迎えています。香港の民主派はこの基本法をたてにして、「約束が違う」「基本法を守れ」と中国に民主化を求めていますが、そもそもこの基本法じたいが、民主化を阻むトリックが仕組まれていました。以下は、香港のプロレタリア民主派の運営するウェブサイト「無国界社運Borderless Movement」に6月28日に掲載された論説の翻訳です。(稲垣豊) 
 
 2014年秋の雨傘運動では、行政長官と香港議会における普通選挙の実施が要求に掲げられましたが、中国政府はまったく取り合いませんでした。 
 
基本法を民主的に制定しなおして 
香港人による命運自決を実現しよう 
 
原文 
 
香港回帰から20年、中央政府による5回の基本法解釈によって、香港人の自治権は大いに蚕食されてきた。これはすべて基本法の欠陥に源を発している。今日、香港人は教訓をくみ取り、民主化の目標を再設定することにより、力を再結集させることができる。 
 
[中産階級を基盤とする民主党や公民党などを軸とした]汎民政党は1990年の基本法制定の際に、基本法には深刻な専制的欠陥があることを知っていた。だからこそ当時、基本法改正運動の発動を約束したのである。しかしその約束は守られず、たんに[行政長官選挙と香港議会の]二つの普通選挙の実現要求になってしまった。香港人が謙虚にしていれば、少なくとも基本法の枠組みにおいて二つの普通選挙が実現できると考えたのである。しかし[中国全人代常務委員会による2014年の]「8・31決定」は[事実上、民主派候補の立候補を認めず]、その幻想を無残にも打ち砕いた。基本法では香港人の自治権を効果的に保障することができないのである。逆に中国共産党政権は、基本法によって付与された権力を余すことなく行使し続けることで、香港の内政に全面的に干渉することができたのである。 
 
[中国]中央政府の基本法解釈権は、基本法の第八章によって保障されている。しかし基本法の問題点はこれだけに止まらない。第48条8項では、特区行政長官は「中央が本法に規定されるところの事務について発した指令を執行」しなければならない、と明記されている。つまり中央政府はいつでも香港行政長官に指図することができるのである。御用学者たちもこの条文を持ち出して中央政府が香港人の自治権を絞め殺すことを煽っている。 
 
香港人はこの新しい情勢において、基本法を民主的に制定しなおして、香港の内政を確保し、現状の変更か維持かは香港人の自主にまかせるように、民主化運動の目標を明確化すべきである。このようになれば、制定しなおされた基本法を通じて、[香港回帰から50年の]2047年という期限にも関係なく、真の自治権を保障することができるだろう。 
 
中国共産党政府は「それは香港独立だ」と批判するだろう。もちろんその批判は当たらない。中国からの離脱を主張していないのだから、どうして独立などと言えるだろうか? 逆に真の民主派は香港人の民主的権利だけでなく、中国大陸人民の下からの民主化要求も断固支持し、挟み撃ちで専制体制に終止符を打つだろう。 
 
なかには、中国共産党政府は二つの普通選挙でさえ認めないのだから、それ以上の要求を掲げたところで現実的ではない、という意見もある。だがそのような意見は勘違いも甚だしい。中国共産党政府はそもそもわれわれの聴衆ではない。香港の労働者民衆こそがわれわれの聴衆である。民主化の実現は、支配者の恩寵に依拠するのではなく、これまでもずっと人民自らの奮闘にかかってきたのだ。だが人民が奮闘するには、まず目標をはっきりとさせなければならない。目標には容易に達成できるものとそうではないものがある。しかしそれ以上に正しい目標と間違った目標という違いがある。基本法の枠組みのもとでの民主的自治の実現とは「木に縁(よ)りて、魚(うお)を求む」ことであり、はじめから間違いである。もし南轅北轍[なんえんほくてつ:志と行動が矛盾すること]を避けたいと思うのであれば、基本法をも民主的改造の対象とすべきである。 
 
雨傘運動が過ぎ去り、香港の民主化の前途に悲観が漂っている。しかし初心を貫徹しようとする人もまた少数だが存在し、闘争を継続している。路は険峻だが、それはまた民主化の志士を鍛えもする。戦友諸君、共に学び、互いに研鑚し、明日という日を一緒に切り開こう! 
 
2017年6月28日 
 
無国界社運Borderless Movement 


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