2017年07月19日16時30分掲載  無料記事
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コラム

グローバルロボット資本主義の黎明

  60年代から70年代に繁栄した先進諸国が今、低成長の中で労働組合や労働規制を解体しようという動きを見せており、その最終段階が近づいているようです。労働基準法を緩和あるいは解体しようという動きです。その一方で、産業ロボットの研究開発が着実に進んでおり、工場のロボットだけでなく、ロボット兵士、セックス用ロボット、危険作業用ロボット、配達ロボット、介護ロボットなど多様化してきています。 
 
  今、アメリカのトップの富裕層何人かが世界の下層の半分の富を独占するなどと言われていますが、この産業資本家たちが産業ロボットを大幅に導入して退職金も裁判費用も不要なロボット労働者を大量に「雇用」すれば一部の管理者を残して、労働者の多くは不要になっていくでしょう。ロボットだけで製品が開発され、配達される時代になれば、人間たちは何をすればよいのか。また、どうやって食費や生活費を支払えばよいのか。こういうSFでしかないと思われていた未来がもうそこまで迫ってきています。 
 
  フランスの政治家ブノワ・アモン氏は大統領選に臨んで出版した冊子「来るべき世代のために」" Pour la generation qui vient " の中で、ロボットに課税せよ、と訴えています。でなければ人間の暮らしが崩壊しかねないからです。ロボットには国籍もないためパスポートもビザも不要です。高度の産業ロボットが次第に廉価で大量生産される時が来ようとしています。嫌な仕事はロボットに任せて人間はもっと高度の仕事をすればよい、と言われて来ましたが、アメリカの最先端の自動車工場に行けばロボットが相当精密で高度の仕事まで1台でこなしています。この1台だけで数人の人件費が節約できたはずです。そして経営者は退職金を払う必要もありません。その結果、ロボットによる製品はますます国際競争力が増すことになります。 
 
   ロボット労働者にかかる経費が開発費や維持費・消耗費も含めて1日100円未満であれば世界の最低賃金の国の労働費用よりも安価な労働力ということになります。そして、ロボットの人工知能はますます進化していくでしょう。このことは仕事の意味は何だったのか、人間に哲学的かつ現実生活上の問いを突き付けつつあります。 
 
 
村上良太 


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