2017年09月02日14時28分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201709021428116

アフリカ

【西サハラ最新情報】 モロッコの移民を虐めないで! 平田伊都子

「モロッコ生まれ」というタイトルで、2017年8月28日発売のフランス製週刊紙ジョンヌ・アフリクは、モロッコ出身者が起こした8月17日のバルセロナ・テロをセンセーショナルに報道しました。 表紙は真っ赤に星マーク、、明らかにモロッコ国旗です。 そこに10人のモロッコ人テロリストをあしらってあります。 「中の記事を読んでもらえば、故意にモロッコとISISを結び付ける積りがなかったことが分る筈だ。とせず  
(1)モロッコ女全部が娼婦じゃない: 
 「私はモロッコ出身よ。そのことを誇りに思ってる。グリーン・カード(労働許可書)も持ってる、、だけど、一度だって、売春をやったことなどない」と、ノースリーブのモロッコ女性が髪を振り乱して、フランス語で怒りを発信させた。彼女の山姥のような映像は、インターネットで世界に流れた。「モロッコの首都ラバトにあるレバノン大使館に、レバノンのビザを取りに行った時、ジョラギというレバノン人の担当官が、<モロッコの女はみんな娼婦だ>と言ったんだ」と、彼女は声を震わせ、自分の怒りにますます怒り狂い、このような無礼者をモロッコに滞在させることはないと噛みついた。さらに彼女は、「駐レバノン・モロッコ大使モハンマド・グリンは、我々を侮辱する輩をモロッコから追っ払うべきよ!」と、八つ当たりした。彼女は、アメリカに住むモロッコ人移民だ。商売も兼ねて親族訪問のため、レバノンによく行き来していたようだ。「モロッコ女は娼婦じゃない」という体を張った叫びに拍手! 
 さあ〜、モロッコ男の出番だョ!「モロッコ男はテロリストじゃない」と、叫ぼう!! 
 
(2)モロッコはテロリストの温床じゃない: 
 バルセロナとカンブリスで16人を殺し120人以上を傷つけたテロリストたちは全員が、モロッコ出身であることに間違いないようだ。バンを運転して観光客などを轢き殺したユーネス・アブー・ヤーコブは、アトラス山中のムリットに生まれた。彼は7才の時に両親と共にスペインに移住した。カタル―ニャ警察に殺された彼の弟ホセインは4才だった。オマル・ヒシャミは同じムリットを3才の時に、兄のムハンマドは6才の時に、親と一緒に出奔した。同様にアーラー兄弟も、長兄モハンマドが16才の時、次兄ユーセフが11才の時、サイドが8才の時、モロッコ北部のクシバを出た。ウカビル兄弟のうち、ムーサはスペインのリポルで生まれたが、兄のドリスはモロッコのアガバラで生まれ、10才の時にスペインへ出稼ぎにきた。モハンマド・フーリ・チェムラルが故郷ファルハナを捨てたのは、生後6か月にも満たない赤ん坊の時だった。 
 2015年11月13日のパリ・テロで130人を殺し300人以上を傷つけたのもモロッコ移民二世が主犯だったし、2016年3月22日のブリュッセル・テロで35人を殺し198人を傷つけたのもモロッコ移民二世だ。彼らの大部分はモロッコ北部のリーフ地方出身でもある。 
 欧米各紙はこぞって、なぜモロッコ出身者が過激思想に染まりテロに走るのかを、面白おかしく推測してみせた。ガーデイアン紙は8月20日、<モロッコのISISテロリストたちはヨーロッパの入り口にいた>と、ヨーロッパを拠点とするモロッコ・テロの恐ろしさを煽った。ファイナンシャル・タイムズは8月22日に、<バルセロナ攻撃のお陰で、我々の隣に住むモロッコISIS戦闘員の存在を常に意識するようになった>と小見出しを付けて、ヨーロッパに巣食うモロッコ・テロリストを暴いた。「モロッコ人は過激思想に染まりやすいDNAを持っている」とするうがった報道もある。が、大方のマスコミは、モロッコ王国に於ける貧富の差と差別と失業が移民を生みだしたとしている。そして、移民の仕送りで生きている貧しさと、出稼ぎを外貨獲得として搾取する王国体制がテロリストを育てる要因になってきたと、憶測している。 
 <モロッコ生まれのテロリスト>報道で、ヨーロッパ人たちはモロッコ移民居住区に不信感を募らせ、イスラム教礼拝所モスクを襲ったり、スカーフを被った女性に嫌がらせをしたり、、差別的攻撃が目に見えて増えてきた。モロッコ本国は知らん顔だし、モロッコ移民は自分たち自身が固まって、我が身を守るしかないのだろうか、、、 
 
(3) モロッコ王国は悪くない、モロッコ治安当局は世界一厳しく素晴らしい: 
 MWN(モロッコ世界ニュース)は、モロッコ人テロリストを生んだのはモロッコではない、移民先のヨーロッパが悪いという。「その証拠にテロリストたちは幼少のころに故郷モロッコを離れ、人格形成は移民先で行われた。移民先の宗教指導者に過激思想を吹き込まれたのだ。モロッコ王国に責任はない」と、主張する。MWNが言う宗教指導者とは、2000年に故郷シャフシャウエンを去りスペインに渡り、麻薬密輸業で逮捕され監獄の中で過激思想に染まり、出獄後はリポルの町で宗教指導者となったアブデルバキ・エッサッテイを指す。彼は同じ町に住むモロッコの若い移民たちに過激思想を吹き込み、バルセロナ・テロを起こさせた。が、事件前に誤爆死。死人に口なしで、モロッコ王国によると、何もかもこの宗教指導者アブデルバキ・エッサッテイが悪いことになっている。 
 モロッコ・テロリスト対策局局長アブデルハック・エルヒアムは、バルセロナ・テロに関してスペイン警察を批判した。「スペイン警察はどうしてリポル・モスクの監視を怠ったのだ?スペインのご同輩は2004年に起こったテロ事件以後、多くを学んでいる筈だろうが?モスクを統率できないことが、過激思想を蔓延させた一つの理由だ」とエルハイムは語り、モロッコ王国では宗教指導者の説教に至るまで目を光らせていると、厳しい宗教統制を誇った。さらに彼は、「シリアやイラクでイスラム過激派に参加したモロッコ人が約1,600人いるが、彼らは個人的にネットで洗脳されたので、モロッコ王国に責任はない」と、モロッコ王国のテロ対策に抜かりがないことを、強調した。 
 しかし、モロッコ北部のリーフ地方で続いている<職よこせデモ>と<デモ参加者の不法収監に反対するデモ>などは、モスクを中心に起こっているのだ。エルハイム局長の釈明を聞いてみたい。 
 
 モロッコ・テロ対策局局長の言葉を借りるまでもなく、モロッコ治安当局はメチャメチャ厳しいです。 モロッコ王国内での反対勢力に対しては勿論のこと、モロッコ占領地・西サハラの西サハラ住民に対しては、まるで前世紀の2級市民扱いです。言論結社表現の自由はまったくありません。移動の自由もありません。アルジェリアで開かれた西サハラ夏期大学に参加しようとした数人の西サハラ住民は、出発地のカサブランカ空港で逮捕され、そのまま、監獄に繋がれています。 
 モロッコ王国による 
自国民や占領民に対する虐めのつけが、テロリスト誕生になったのでは?? 
 モロッコ移民はテロリストではありません。 
 モロッコ移民を虐めないでください。 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之    2017年9月2日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。