2017年09月11日00時05分掲載  無料記事
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検証・メディア

東京新聞望月記者に殺害予告 官邸の望月攻撃が誘発、記者会見でIWJ岩上氏が問い詰める

 官邸記者クラブでの記者会見で菅官房長官に対し鋭い質問を続けてきた東京新聞望月衣塑子記者に業を煮やした官邸が9月1日、東京新聞に対し「無礼な質問をこともあろうに官房長官に浴びせるとは何事か」といった意味の質問状を出した。いかなる質問にも答えるのは官房長官の職務、質問するのは記者の仕事なのだが、官邸記者クラブはこの事態を無視、知らぬ顔を決め込んていた矢先の9月4日夜、東京新聞本社に男性の声で「望月を殺す」という電話があった。(大野和興) 
 
このことを明らかにしたのは、官邸詰め記者ではなく、WEBニュースサイトIWJ代表の岩上安身氏。同氏は9月8日午後官邸で開かれた記者会見に乗り込み、官房長官にどう思うかとただした。この間、記者クラブ詰めの各社記者は音無しの構えで、記者会見を仕切る司会者が事の次第を説明する岩上氏に対し、質問をさえぎって数度の渡り「早く質問を」とせかせたのが印象的だった。 
 
その時の映像は、以下の官邸ホームページで見ることができる。 
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201709/8_p.html 
 
 事の経過を追っておく。 
 望月記者に対する官邸の物言いは、産経新聞がいち早く報じた。 
 
・首相官邸広報室、東京新聞に注意 菅義偉官房長官会見での社会部記者の質問めぐり(産経新聞、2017年9月1日) 
http://www.sankei.com/politics/news/170901/plt1709010045-n1.html 
 
 同記事の内容は以下のようなものだ。 
 
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首相官邸報道室は1日、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画をめぐり、8月25日の菅義偉官房長官の記者会見で、東京新聞記者の質問に不適切な点があったとして書面で東京新聞に注意を喚起した。 
 質問したのは、加計問題などで菅氏を追及している社会部記者。加計学園が計画する獣医学部施設の危機管理態勢をただす中で「(計画に対する)認可の保留という決定が出た」と言及した。 
 獣医学部の新設計画は大学設置・学校法人審議会が審査し、答申を受けた文部科学省が認可の判断を決めるが、この時点ではまだ公表されていなかった。 
 官邸報道室は東京新聞に宛てた書面で「未確定な事実や単なる推測に基づく質疑応答がなされ、国民に誤解を生じさせるような事態は断じて許容できない」として、再発防止を強く求めた。 
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 記者会見の顛末はIWJホームページで岩上氏自身が以下のように伝えている。 
 
 官邸での菅官房長官記者会見。金曜日の午後だけ、記者クラブ外の我々のようなネットメディアも出席可のため出席。事前にどこにも質問予告せず、東京新聞の望月衣塑子記者への殺害予告ととれる脅迫電話が9月4日に東京新聞本社にかかってきたことを会見の場で明らかにして、菅官房長官の見解を尋ねた。 
 
 2017年9月8日(金)午後4時頃から開かれた菅義偉官房長官の記者会見にIWJ代表の岩上安身が出席。東京新聞宛てに送られた望月衣塑子記者の質問に対する注意文書について官房長官に質問した。さらに東京新聞本社へ9月4日夜に「望月衣塑子記者を殺す!」という脅迫電話がかかってきた事実を明らかにした上で、菅官房長官に所感を求めた。 
 
岩上「9月1日に総理大臣官邸報道室長と文科省大臣官房広報官からそれぞれ、東京新聞に対し注意文書が出ている。大学設置・学校法人審議会の答申に関する望月記者の質問に対する注意だが、『事前の報道と同一のものと見なしうる行為にあって遺憾である』と。 
 8月9日に行われた文科省の大学設置審は非公開で行われたが、10日にはマスコミ各社とも一斉にその内容を報じている。産経新聞は『加計獣医学部、認可判断保留へ 設置審、文科相答申延期へ』という見出しで認可の判断を保留する方針を決めたと断定している。 
 各社とも変わらず報じているが(望月記者が質問した)8月25日時点で各社に対する注意が行われたとは聞いていない。正式公表の前とは言え、あらかた報じられている内容に基づく質問であり、望月記者だけが厳しく注意されるのはダブルスタンダードではないか」 
 
菅官房長官(事務方からのペーパーを読み上げ)「政府の立場であらためて答えることは控えるが、通常政府からマスコミへのレクに関し、きちんと説明を行う観点から、記者会との間で報道解禁日を約束した上で、その前にていねいに説明を行うことがあるということだ」 
 
岩上「注意文書が出た3日後の9月4日の夜、東京新聞本社に男性の声で望月記者を殺害するという電話が入った。これは明白な脅迫であり、テロ予告であり、殺人予告だ。官房長官会見での望月記者に不満をもち、『殺してやる』と繰り返し言っていたと、私の取材で確認している。 
 たいへん危険なことであり、言論機関に対する脅迫は、かつての朝日新聞阪神支局の襲撃事件を思わせる。政府として脅迫や殺人予告はあってはならないというメッセージを国民に広く発していただきたい」 
 
官房長官「それは当然のことじゃないでしょうか」 
 
岩上「当然というのは、どういうことでしょうか」 
 
官房長官「そうしたことはあってはならない、我が国において。それは当然のことだと思います」 
 
岩上「官房長官の言葉として言っていただけないか」 
 
官房長官「私、官房長官としてこれは極、当然のことを今、あってはならないことですから、それはもう申し上げました。そういうことがあったら、当然警察に届けるなり、捜査する。そういうことだと思いますよ」 
 
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 この一連の顛末をどうみるか。元通産官僚の古賀茂明氏のツィートは本質をついている。 
 
【官邸誘発テロ?】 官邸の望月攻撃はエスカレート ついに公式文書で弾圧 官邸の望月憎悪はネットで安倍サポータに拡散される 9月4日夜には、東京新聞に望月記者を「殺す」という殺害予告電話が入った。 官邸が誘発した犯罪行為ではないのか 


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