2017年09月13日19時30分掲載  無料記事
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国際

シリア内戦、勝負あり!  核保有国イスラエルの挑発に乗らず  平田伊都子

 2017年9月12日午前7時過ぎ、国連の安全保障理事会が北朝鮮に対して、新制裁決議を全会一致で採択しました。 「<北朝鮮が>一連の安保理決議を順守し、<朝鮮半島>の非核化に向けた真剣な意思と具体的行動を直ちに示すことを強く求める」とは、内閣総理大臣コメントです。 「あんなもん、チョロイ」とは、トランプ大統領のお言葉です。 
 一方、国連安保理決議を無視し違反し続けてきた国は、北朝鮮だけではありません。 <北朝鮮>を、<イスラエル>と、置き換えてみてください。 より遥かに優秀な核能力を持つイスラエルは、核技術を輸出していると、もっぱらの噂です。 
日本が北朝鮮に迫る非核化は、核拡散防止条約に基づいているようです。 この条約とは、核保有安保理常任5か国(米ロ中仏英)以外は核を持ってはいけないという、差別と不平等に満ちた根性の悪いものです。 イスラエル、北朝鮮(2002年脱退)、インド、パキスタンの不承認核保有4か国は条約に加盟していません。 2007年7月時点で、日本を含む190カ国が加盟しているそうです。 
 
(1)イスラエルのシリア空爆: 
 2017年9月6日、「シリアの反体制派は、内戦の勝利に失敗したという事を認めなければならない。しかし、政府が手放しで勝利を宣言することもできない」と、ステファン・デ・ミストラ国連シリア特使は表明した。「ラッカやデイル・ズルにあるISの拠点陥落が、勝敗を決定した」とも語った。 
 同日の9月6日、ピニェイロ・シリア化学兵器独立調査委員会代表が、「シリア政府は化学兵器を使った」と、ジュネーブで発表した。「現地調査をしたのか?」との質問に、「現地に行かなくても分かる」と、答えた。イラク化学兵器独立調査委員会、そして今回のシリア化学兵器独立調査委員会と、この手の独立調査委員会が何をバックにどこから金を貰っているのか?いまいち、不明確だ。あたかも、国連の組織であるかのような印象を与えている。最近とみに、国連を匂わせる個人や組織が、国連報道室の記者からやり玉に挙げられてくるようになった。 
 そして9月7日未明、シリア化学兵器独立調査委員会の報告に即応して、イスラエルがシリア北部を空爆し二人のシリア兵を殺した。あの饒舌なイスラエルが声明を出さず、他国の報道を転送した。 
 同日9月7日の国連記者会見でお洒落なレバノンのニザール記者が、「イスラエルが、ISISと戦っているハマのシリア軍を、レバノン領空を侵犯して空爆した。UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)は何をしているんだ?国連事務総長の見解は?」と質問を始めた。さらにニザール記者は、「シリアのデイル・ズルから逃亡した、オマル・アルシシャニを始めとするISISの幹部たちはどうなった?」と、ステファン国連報道官に詰め寄った。報道官は、「我々は未だ、現地のPKOから報告を受けていない」と、逃げた。 
 
(2)シリアは何故報復攻撃しない?イスラエル紙ハーレツの呟き: 
 9月10日、イスラエル紙ハーレツは、「どうしてシリアはイスラエルの空爆に報復しないんだろう?」と、イスラエルの挑発に乗ってこないシリアとその同盟国をいぶかった。 
「シリアとレバノンのヒズボラが報復攻撃をする積りなら、イスラエルの警告をよく学ぶことだ。イスラエル軍は北部に大軍事作戦を準備している。ロシア、、ロシアは一言も言わないよ。イスラエルとロシアの防衛施設にはホットラインがあり、お互いに干渉しないという暗黙の了解がある」と、イスラエル紙ハーレツはモシュ・ヤーロン元イスラエル国防大臣の見解を紹介している。 
 <イスラエル軍のレバノン領空侵犯>に関して、レバノンはシリアと一緒に国連安保理へ異議を申し立てた。レバノン外務大臣ゲブラン・バシルは、正式なイスラエル非難声明を国連事務総長に提出した。 
 9月11日の国連記者会見では、「シリア軍のザフレディン将軍が、難民はシリアに帰還するなとの、声明を出した。事務総長の見解は?」と、シリア反政府支持派と思しき見慣れない記者が、質問した。「帰還は難民が決めることだが、現在のシリアは帰還に相応しいとは思えない」と、報道官は答えた。「私は難民のご見解など聞いていない。シリア当局が難民を脅かしていることを問題にしているんだ」と、この記者はシリア軍の非道さを宣伝しようとした。が、報道官は「誰も難民の帰還を妨害できない。何よりも難民の意思が尊重されるべきだ」」と、繰り返した。 
 シリア内戦をイスラエルとアメリカが引き起こして以来、シリア政府は国連のお尋ね者だった。国連記者室で、レバノン記者に質問時間が長く与えられ、国連報道官が他国と同じようにシリア政府を扱うようになった。勝利の女神が、シリア政府に微笑んでいますョ、、 
 
(3)アメリカを襲ったハリケーンは「神の思し召し」?: 
 大型ハリケーン<ハービー>は死者25人、行方不明17人を出し家屋を破壊して、アメリカのテキサス州を駆け抜けた。続く大型ハリケーン<イルマ>は。米南部フロリダ州を直撃し、当局は11日、約650万世帯が停電になったと発表した。州人口の3分の2が影響を受け、一部は今後数週間にわたって電気なしの生活を強いられる恐れがあるそうだ。2000万人が避難、あるいは避難対象になっているとも報道されている。さらに<カティア>と<ホセ>がアメリカを狙っているそうだ。 
 そんなハリケーン・ニュースが世界を騒がせている時、「これは神の思し召し」と、エジプト生まれのジャーナリスト、アハマド・マンスールがコーランの一節を引用してハリケーンを語った。「災害の犠牲者に失礼だ」とか、「困っている人に思いやりがなさすぎる」とか、「コーランの乱用だ」とか、たちどころに物議を醸しだした。 
 マンスールは1997年からカタールのアルジャジーラ・テレビで、キャスターや戦争記者として活躍してきた、毒舌で有名なジャーナリストだ。「無国境」とか「時代の証人」などの番組で権力者の批判を続け、2014年8月には、カイロ犯罪裁判所で本人欠席のまま、15年の実刑判決を受けた。2015年6月20日にエジプト政府の依頼を受けたドイツ政府がベルリン空港でマンスールを逮捕したが、6月22日には釈放された。国境なき記者団やアルジャージ―ラの同僚たちによる必死の嘆願が、功を奏したとか、、イラク戦争やリビア戦争やシリア内戦の悲惨さと、その真犯人をよく知るマンスールにとって、アメリカのハリケーンは当然の報いと映ったようだ、、 
 国連UNHCR協会は、シリア国内避難民は660万人以上でヨーロッパへ渡った国外難民は100万人だと発表し、募金と寄附を募っている. 
 シリア戦争死者約43万人(シリア人権監視団)、国内国外難民は  国民半分の1170万。 
 リビア戦争死者約1万人 
 イラク戦争死者約80万人(ランセット医科学誌)2016年UNHCR発  表によるとイラク国内国外難民は約500万人。 
 ハリケーンとトルネードとワイルドファイアーをもってしても、イラクとリビアとシリアで惨殺された人々の怨念はとうてい償うことができない。 
 
 イスラエルは、<アラブは一つ>という枠組みを壊しました。  イスラエルはアラブ湾岸諸王国と組んで、仇敵だったアラブ強硬派のイラク、リビアを無き者にしてしまい、シリアも潰そうと、躍起になっています。 湾岸諸王国のなかで進歩的なカタールを、湾岸村八分にして叩こうとしています。 カタールが、イスラエルに逆らうガザのハマスやアル・ジャジーラなどを匿っているからだそうです。 
 しかし、イスラエルとアメリカの、核を含む大量破壊兵器をもってしても、、他民族の心を破壊することはできません。 恨みをかき消すことはできません。 
 コーランには「アッラーフ・ヤアリフ(神様はお見通し)」という一節もありますョ。 
 
 
文:平田伊都子 ジャーナリスト、 イラスト:川名生十 カメラマン、 2017年9月13日 


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