2017年10月15日12時40分掲載  無料記事
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政治

戦後の北朝鮮にイスラム国が根付けば中国とロシアを液状化させることができる・・・米戦略に乗る前原党首と安倍総裁 副作用は日本も液状化

  ソ連との冷戦を終えた米国務省が急ピッチで取り組んだのはイスラム原理主義運動の研究だった。ソ連が資本主義陣営に入っても軍産複合体がきちんと利益を出せる新しい敵が求められていたからだ。それがイスラム原理主義だった。だから、90年代に入るとアメリカの保守系シンクタンクでイスラム原理主義の研究が盛んにおこなわれた。その果実が9・11同時多発テロ以後の中東から北アフリカの液状化だった。イラク、アフガニスタン、シリア、リビア、エジプトなど世俗的な独裁者を頂いていたイスラム国家群が軒並み国家が溶融する中で、イスラム原理主義運動が定着し、今もシリアやリビア、イラク、アフガニスタンなどでは激しい内戦が続いている。その結果、米軍需産業は製造した高性能兵器を自国で使うだけでなく、湾岸諸国に輸出して潤っている。 
 
  オバマ政権は中東の次の目標として米外交・通商の軸をアジアへ転回させることを求めた。世界の成長センターであるアジアを取り込むことが米産業に必要だったからだ。だが、そこでは当然、アジアの新たな覇者を目指す中国との確執が生まれる。中国市場にアクセスすると同時に、中国の国力を削ぐにはどうすればよいか、しかも軍事予算はあまりかけられない。そこで米国務省は日本の軍事力を利用することと、イスラム原理主義を再利用することを考えている可能性がある。自衛隊が変容を強いられ、改憲が進められている背景には米国の財政難という事情が大きい。米国はイラク戦争とアフガニスタンの戦争で財政が悪化し、もはや2地域で戦線を維持できるほどの予算を使えなくなってしまったのだ。オバマ政権時代に国防長官だったロバート・ゲイツが毎日何に悪戦苦闘していたか、と言えばどの予算をさらに何ドル削減できるか、ということだった。米国はもう予算も組めないくらいに財政難は深刻になっていた。そんな中、日本の自衛隊に軍務を担わせる、というのは極めて魅力的なプランだったのだ。日本の新聞は改憲の裏事情を書こうとしないが、アメリカの軍事担当者の身になれば実にわかりやすいことである。 
 
  それと同時に、これはあくまで私の推測に過ぎないが、アジアにイスラム国が広がる可能性もあると思う。米国はそれを期待しているのではないか、ということなのだ。イスラム国は自前の金で戦争を遂行し、内戦で地元の支配勢力をぼろぼろにしてくれるのである。内戦が進めば、兵器はもちろん売れるし、地元支配勢力への軍事支援という形で、ミサイルや戦闘機などの製造販売に国家予算も新たにつけられるのである。実際、戦争を準備している日本の安倍政権になってからどれだけ米国から兵器を増額して買ってきたかを見ればよい。それが日本政府にとっても嬉しいのは日本の軍需産業も同時に潤う構造にあるからだ。戦後の日本経済を復活させたのが朝鮮戦争で生まれた米軍の特需だったことは歴史である。そのため、安倍政権は自動車やラジオ、テレビの代わりに、日本製の兵器販売を輸出品目の柱にしようとしている。これが恐ろしいことは経済に兵器が組み込まれてしまえばもう戦争から常に無縁でいられない国になってしまうことである。宗教戦争には基本的に終わりがないから、この体制はアメリカのように永続することになる。 
 
  北朝鮮の国家が米韓日の攻撃で溶解して親米政府と反政府派(旧政府派)の内戦状態が生まれ、それが長期化して権力の空白状態が生まれ、精神の危機を来した人々が増えれば神に救いを求めるようになる。だから、この地域にイスラム教が広まる潜在的可能性は膨大にある。イスラム教は仏教などより短期間に広範に広がるだろう。アジアにおいてもフィリピン、タイ、ミャンマー(ビルマ)、インドネシア、パキスタン、マレーシアなどにイスラム教徒は多い。アジアの人間がイスラム化することは大いにあり得ることだ。特にグローバル資本主義による格差社会で疲弊した人々が共産主義なき後の希望をイスラム教に見いだす可能性は十分にある。日本でもその可能性はあるだろう。 
 
  北朝鮮にイスラム国傘下の原理主義武装勢力が根付けば中朝国境から中国にイスラム原理主義が浸透する可能性があり、中国の国家当局は西域のイスラム勢力だけでなく、東側でもイスラム勢力との闘争を強いられる。そうなれば南シナ海に振り向ける力も比較的そがれることになる。中国を最も安価に解体させる手がイスラム原理主義勢力による内側からの戦争すなわち内戦を引き起こすことだ。唐突に思われるならソ連を崩壊させる戦略として、親ソ派のアフガニスタン政府と闘う聖戦主義勢力に米国が軍事的にテコ入れしていたことを思い出すべきだ。その結果、アフガニスタンは「第二のベトナム」となり、長期化する戦争で財政が逼迫したソ連がやがて崩壊に至った歴史である。たとえ小さな武装勢力であっても軍事的にテコ入れすることで地元政府は実質的に米軍との闘いを強いられることになる。中国では貧富の格差が起きているため、共産党政府よりイスラム原理主義側につく人々が出てくるかもしれない、ということである。 
 
  だが、それは同時にシベリアや日本にも影響を及ぼし、東アジア全域が液状化する劇薬でもある。中国だけでなく、ロシアにとっても西のウクライナ問題と同時に東にも紛争の種を抱えることになるかもしれない。そして、日本の原発も無縁ではいられないかもしれない。前原党首や安倍総裁が作る日本の未来もこの方向に進む可能性がある。もちろん、これらが妄想であってくれればよいのだが。国から追われるロヒンギャ族のように不幸なイスラム教徒を国家権力が作り出してしまえばイスラム国がアジアで拡張する可能性は増えるはずだ。イスラム原理主義の勢力が増えることは穏健で平和を愛する多くのイスラム教徒を苦しめることにもなる。 
 
 
村上良太 


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