2017年11月14日19時23分掲載  無料記事
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政治

政治を考える 辻元清美氏に聞く リベラルが政権を担う日   その1

  9月下旬から10月下旬にかけて、日本の政界は大きく揺れ動いた。衆院解散、民進党の希望の党への合流、そして一部議員の「排除」をめぐる騒動と立憲民主党の結成。この激動の1か月間をまさにその渦中で生きることになった政治家の一人が辻元清美氏(衆議院議員)だ。現在、辻元氏は野党第一党になった立憲民主党の国対委員長として与党と激しい交渉を続けている。そんな辻元議員に激動の1か月の経験を話してもらった。 
 
●大阪で聴衆たちが私に「リベラル新党を作れ」と言った 
 
Q 今回の衆議院選挙で民進党が希望の党に合流することになると9月末に前原代表が発表しましたが、希望の党の小池百合子党首がリベラル派を排除する方針を打ち出しました。その排除されるリストの中に辻元さんの名前があることを報道で知りました。この頃、辻元さんご自身は事態をどうご覧になっていたのですか? 
 
辻元清美 
  9月28日に衆議院が解散されて前原代表がその日に、安倍政権を倒すために希望の党と合流する、という提案を両院議院総会で発表されました。多くの人たちがそうするとお決めになっていたようですが、私自身はその時から「行きたい人の邪魔はしないけど賛同しかねる」と違和感がありました。民進党は解党みたいなことになるのでは、となかなか納得がいかず、ちょっと割り切れない感じでした。 
 
  結局1日考えて、一人でも別の道を行くしかないな、と腹を固めました。それで9月30日に「私は(希望の党には)行きません」「右と左から安倍政権をはさみうちしよう」と宣言したわけです。そうすると、まだ皆さんがあまり発言していない時だったので、私も行かない、という人が何人か現れました。私が発言した夜(9月30日)に、何人かの国会議員が集まりました。それで別の道を考えなきゃいけない、という共通の思いがあるということを確認しました。 
  民進党のなかには、希望の党に行きたい人は行って、民進党のまま残りたい人は残って立候補できる、というのじゃないとおかしいという意見は多かったんです。でも、希望にいかないなら無所属で、ということになってしまった。無所属で立候補すると選挙運動は不利ですし、比例復活もありません。地盤をもっているベテランは無所属でも闘えるかもしれませんが、「希望に行きたくない」という新人がいた場合に、じゃあ無所属で、と放り出すわけにはいかないのではないか、と思いました。 
  翌日の10月1日に枝野さんが前原さんと会って、「希望に行きたい人は希望に行ってもらって、でも民進党に残って立候補する道も残しておいた方がいいんじゃないか」と話したんですね。でも前原さんは拒否したんです。希望の党に行かない人は無所属で、と。 
  それで2日に枝野さんが立憲民主党を立ち上げる記者会見をした。私はそれに応えて、3日に地元の記者クラブで記者会見をして、立憲民主党への参加を表明しました。で、10日から選挙が始まったんです。新しい党を1週間で立ち上げて選挙できるか、ということだったんですが、78名集まって船出できたんです。 
 
Q 漫画家の小林よしのり氏が、「ワシが辻元に電話して、枝野に立て、と伝えさせた」みたいなことを書いていましたが 
 
  小林さんからも、そういう電話をいただきました。選挙中も、小林さんには応援に来ていただきました。 
 
Q もう少し多くの立憲民主党の候補者が、たとえば200人くらい出てくるのかと思ったのですが。78人が限界だったのでしょうか? 
 
  限界でしたね。1週間ですから。でもそのうち、55人当選したのは嬉しかったです。どんどん輪が広まっていきましたから。 
 
Q 枝野さんのスピーチは見事でしたが、代表選の時の下地があったんですか?それとも結党するときに練った、と言う感じなんですか? 
 
  代表選の時もそうだったように、元から枝野さんや福山さん、長妻さんや近藤さんとは、市民と一緒に、とか、草の根の民主主義とか、立憲主義を大事にしよう、ということをずっと訴えてきた仲間なんですよね、ですから(あのスピーチも)自然に出たと思うんですね。それと同時に今回、野党の分裂劇があって立憲民主党ができたんですけれども、時代に、国民に呼ばれたのでは、と思うんですよ。 
  というのは30日に東京で「私は(希望の党へは)行きません」と宣言して1日に大阪に帰ったんですね。で、大阪で支持者の人に集まってもらう会をやったんです。街頭でも演説したんですよ、私は一人から再出発します、と。「希望」には行かないし、と。そしたら多くの人たちに「新しい党を作れ」と。「リベラル新党を作れ」と言う声をいただいたんですね。やはり、安倍政権に加えて第二自民党みたいなものができてしまったらどうしようという危機感を持っている人たちの思いに押されて立憲民主党が生まれた。時代が、国民が呼んでくれたと思います。だからものすごい勢いで広がったんだと思います。 
 
●出発点は土井たか子さんが率いる社民党だった 
 
Q 辻元さんの政治家としてのスタートは1996年で社民党から衆院選に立候補して当選された時でしたね。この年、民主党の前身も生まれています。社会党は冷戦末期に土井ブームで勢いに乗り議員を一気に増やしていましたが、それからわずか3年ほどで小さな政党になり、名前も社民党になりました。辻元さんが民主党ではなく社民党から立候補して政治家になったのは土井さんから呼びかけられたからですか、それとも社民党の理念に惹かれたからだったのでしょうか? 
 
  土井たか子さんに呼びかけられたということが大きかったですね、尊敬していましたし。戦後の、女性に参政権がない時から活動されて。そして憲法第9条を大切にしたいという。土井たか子さんに声をかけていただいた、ということが一番大きいです。それと同時に、その時の土井さんの呼びかけが「市民の絆」というスローガンだったわけです。これからは市民運動とかNPOとか〜NPO法も私がその後作ったんですけれども〜当時その言葉はあまり浸透していませんでしたが、そういう市民活動なんかをやっている人たちと一緒に作る党でありたい、と。私はその「市民の絆」というものに共鳴をして社民党に行ったんです。小さくても社民党を市民政党に変えたい、と。当時はヨーロッパの緑の党が元気だったんで、緑の党みたいな党にしたい、みたいなことをイメージして社民党に行ったんですよ。 
 
Q 政治学者の中野晃一教授と土井たか子氏の時代の社民党の話をしていたとき、社民党は市民運動と連帯して大きくなっていく可能性があったのかなかったのか、ということが話題になったんです。辻元さんはどうご覧になりますか? 
 
  昔の社会党は労働組合に依拠していて、それからイデオロギー政党であった側面が強かったと思うんですけど、当時はまだ社民党もそういうものを引きずっていた。ですから、ニューリベラルと言うか、新しい変革の、実体が伴ったようなリベラルの勢力をめざしたのです。で、私なんかはNPOの活動をやってきて、ピースボートもそうなんですけど、船を出して経営みたいなこともやりつつ、社会の変革をしていくという実体があるわけですよ。たとえば原発反対でも「反原発」と言ってスローガンを言って終わるのではなく、自然エネルギーのグループで、自分たちでエネルギーを作ってみようとか。単にスローガン、スケジュール闘争みたいな、そういう体質を変えることが必要だと思っていました。 
 
Q 自民党に対して反対する社会党、という55年体制の時代が長かったためにそういう感覚になってしまったんでしょうか。 
 
  そうかもしれません。だから私は、もう1つのオルタナティブな自分たちの選択枝を提示していく、というところにこだわっていました。 
 
(つづく) 
 
聞き手 村上良太 
 
※辻元清美氏の活動ブログ 
http://www.kiyomi.gr.jp/blog/ 
 
 
■政治を考える 辻元清美氏に聞く リベラルが政権を担う日  その2 
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■野党共闘を考える 市民連合の中野晃一教授(上智大学)に聞く その1 
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