2017年12月05日15時46分掲載  無料記事
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地域

地方議会と民主主義  根本行雄

 11月22日に開会した熊本市議会の定例会で、緒方夕佳市議が生後7カ月の長男を抱いて議場に入場したため開会が40分遅れる混乱があった。議員や職員以外が議場に入ることは規則で禁じられているが、緒方市議は「子育て中の女性も活躍できる市議会であってほしかった」と説明した。市議会は事前に通告なくルール違反を強行したとして問題視する一方、子育て世代の議員のための環境整備について議論を進める方針だという。住民自治の観点から地方議会の在り方を抜本的に見直す必要がある。 
 
 
 
 市議会や町村議会は、わたしたちにとって一番身近な行政区でありながら、案外、遠い存在である。それは一般市民が「議員」をすることができない仕組みにある。高額な給与をもらい、「議員」を職業にしている人々がいる。これは住民自治の理念から言っても民主主義からほど遠いあり方であると言わざるをえない。 
 
 
 今回の事件について、毎日新聞(2017年11月23日)の城島勇人記者は次のように伝えている。 
 
 緒方市議は、本会議が始まる午前10時前に長男を抱いて議場の自席に着席した。市議会は「議員や職員以外は傍聴人とみなす」とした上で傍聴規則で「傍聴人は会議中に議場に入ることができない」と定めているため、澤田昌作議長が退場を促した。しかし、緒方市議が聞き入れなかったため別室で協議。長男を友人に預けることで合意したため予定より40分遅れて開会した。 
 緒方市議は1期目で、1人会派「和の会くまもと」に所属。長男を出産した4月以降、「出産後の体調不良」を理由に議会を欠席しており、本会議出席は約8カ月ぶりだった。妊娠が判明した昨年から、乳児を連れての本会議出席や市議会への託児所設置を議会事務局に訴えてきたが、前向きな回答を得ることができず子連れでの入場に踏み切ったという。 
 自民党の原口亮志市議は「個人的な理由で議事進行を妨げたのは問題で懲罰の対象だ」と批判。共産党の那須円市議は「事前に議会運営委員会に相談すべきだった」としながら「欧州では乳児を連れて議場に入ることもある。子育て世代の議員活動について議論が必要だ」と述べた。 
 澤田議長は「子育てが大変で思い詰めた部分もあったのだろう。子連れでも参加できる仕組みを考えたい」と述べ、近く開催する議会活性化検討会で議論する方針を示した。 
 
 
 
□ 大川村だけじゃない 
 
 高知県大川村の和田知士(かずひと)村長は、2017年6月、議会に代わり有権者が直接議案を審議する「町村総会」の調査と研究を開始することを表明した。大川村だけでなく人口規模の小さい自治体は、議会維持が難しくなっているのが現状である。 
 
 政府は2000年に「地方分権一括法」を施行した。これに合わせて、地方議会の改革の機運が高まっているという報告がある。その一方で、議会報告会への市民参加の低迷や形骸化が指摘されている。 
 既成概念にとらわれることなく、民主主義の原点に返り、民主主義の市民文化を育て、その実質化を推進していく必要がある。今回の、熊本市議会における赤ちゃん騒動は、住民自治を見直す一つの契機であると思う。 


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