2017年12月12日14時15分掲載  無料記事
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検証・メディア

最高裁の判決がどうあれ、NHKが公共放送の役割を果たしているかを判断するのは市民  Bark at Illusions

 最高裁は6日、テレビを持つ人にNHKとの契約を義務づけた放送法の規定について、「合憲」とする判断を示した。しかし、だからといってテレビがあればNHKに受信料を必ず支払わなければならないと考えるべきではない。 
 
 判決は受信料制度について、公共放送を担うNHKに「特定の個人、団体又は国家機関等から財政面での支配や影響」が及ぶことのないよう、NHKを社会全体で支えるためのものであるとし、NHKの「存立の意義」と受信料制度は「国民の知る権利を実質的に充足し健全な民主主義の発達に寄与することを究極的な目的」としていると述べている。 
 「公共の福祉」のための放送を行うことを目的とする公共放送を社会全体で支えるというのは、合理的な考え方である。しかし重要なことは、NHKが公共放送の役割を果たしているかどうかという判断は視聴者である市民に委ねられるということだ。 
 仮にNHKが政府や大企業の見解ばかりを伝え、政府や大企業に都合のいい世論を作り出すために私たちを特定の方向へ誘導しようとする番組を放送するなら、そのような番組のために私たちが受信料を支払うというのは不合理なことだ。そのような番組はNHKの「存立の意義」に反するし、民主主義の発達にも寄与せず、公共放送としての役割を果たし得ない。NHKが公共放送としての役割を果たさないなら、最高裁がどのように命じようとも、市民的不服従による支払い拒否という方法がある。 
 
 市民的不服従とは、自らの良心に基づき不正と判断する法律や命令などには従わないことで、とりわけ問題が社会的である時には尊重されなければならない。社会に不正があるときに、その不正に服従し続ける限り、その不正はただされない。納税拒否や兵役拒否などがあり、古くは合衆国のヘンリー・D・ソローがメキシコへの侵略戦争に反対して人頭税の支払いを拒否したことが有名だ。 
 最近の例を挙げると、ドイツのパイロットたちは難民申請を拒否されたアフガニスタン人に連帯を示して、彼らを本国へ送還するための200便以上の運航を拒否した(Democracy Now、17/12/5)。ホンジュラスでは大統領選挙での不正疑惑への抗議行動に対して政府が夜間外出禁止令を発令したが、国家警察は命令を拒否し、国民を弾圧することはしないと宣言した(Democracy Now、17/12/5、17/12/6)。また合衆国では人種差別や黒人に対する警察の暴力・殺人に抗議して、プロフットボール選手らが国歌演奏時の起立を拒否していることについては、日本のマスメディアでも報じられた。 
 
 ソローが述べているように、「不服従は、真の自由の基盤である。服従は奴隷に他ならない」。日本は民主国家であるから、市民的不服従による支払い拒否は認められなければならない。 
 そしてNHKは、支払いを拒否されたからと言って訴訟を繰り返して受信料を徴収するのではなく、自分たちの放送内容が公共放送の名に値するものかどうか、まず自問すべきだ。 


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