2017年12月17日15時06分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

不撓不屈の戦いは続く 根本行雄

 ドイツ・ベルリンに本部を置く国際平和団体「国際平和ビューロー」(IPB)は11月24日、スペイン・バルセロナで今年のショーン・マクブライド平和賞の授賞式を行い、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する政党や団体でつくる「オール沖縄会議」に授与した。「不撓不屈(ふとうふくつ)の非暴力闘争」と称賛し、満場一致で授賞を決めたという。これに関連して、袴田事件、名張毒ぶどう酒事件、松橋事件、菊池事件などの再審裁判闘争について考えた。 
 
 
 
 
 
 
 
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する政党や団体でつくる「オール沖縄会議」に「ショーン・マクブライド平和賞」が授与されたことを、 
 
毎日新聞(2017年11月25日)の記事で知った。記事は次のように伝えている。 
 
 
 
 
 
 IPBはオール沖縄会議の活動を長年にわたり米軍基地に反対し続けてきた「不撓不屈(ふとうふくつ)の非暴力闘争」と称賛し、満場一致で授賞を決めたとした。普天間飛行場については「世界で最も危険な軍事基地の一つだ」と指摘した。 
 
 高里さんは英語でスピーチし、米軍機の事故が繰り返されるなどしてきた歴史を紹介。今回の受賞で「世界中のより多くの人々が沖縄の現状を知るようになることを願う」と訴えた。 
 
 高里さんと共に式に出席した同会議の安次富浩さん(71)は「われわれの草の根運動が国際的に注目されたことは、これからの沖縄にプラスになるのではないか」と話した。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 「国際平和ビューロー」(IPB)について 
 
 
 
 「国際平和ビューロー」(IPB)は、ドイツ・ベルリンに本部を置く国際平和団体である。IPBはマクブライド平和賞をオール沖縄会議のほか、核軍縮や平和活動に尽力したとして、米言語学者ノーム・チョムスキー氏と英政治家ジェレミー・コービン氏にも授与している。 
 
 同賞はアイルランドの外相を務めた故ショーン・マクブライド氏の功績をたたえ、1992年に創設。平和や軍縮などの分野で活躍した個人・団体に贈られものである。2003年に日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が、06年には平和市長会議(現・平和首長会議)が受賞している。 
 
 また、IPBは授賞決定通知で「決して諦めずに闘いを続け、さまざまな行動を起こしてきた。過去の努力を認め現在の運動を支援したい」と伝えてきたという。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 袴田事件 
 
 
 
 2014年3月27日、再審開始決定が静岡地方裁判所(村山浩昭裁判長) から出され、袴田巖さんは47年7ヶ月ぶりに東京拘置所から釈放された。 しかし、不当にも静岡地方検察庁が東京高裁に即時抗告してしまったため、 再審開始が先延ばしにされている状態である。 
 
 
 
毎日新聞(2017年11月6日)の石山絵歩記者は、次のように伝えている。 
 
 
 
 1966年に起きた「袴田事件」で死刑が確定し、2014年に静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌元被告(81)の即時抗告審で、東京高裁(大島隆明裁判長)が今年度内に審理を終え、結論を出す方針を示したことが6日、分かった。この日、裁判所と検察、弁護側が高裁で行った3者協議の後、弁護団が明らかにした。 
 
 
 
 弁護団によると、今後は来年1月19日までに検察側、弁護側の双方が最終意見書を高裁に提出。双方は相手方の意見書に対する反論があれば、同2月2日までに改めて書面を出すスケジュールになったという。その後、高裁が同3月までに、「再審開始決定」を支持するかどうか結論を出す見通し。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 名張毒ぶどう酒事件 
 
 
 
 毎日新聞(2017年12月9日)は、名古屋高裁が「名張毒ぶどう酒事件」の第10次再審請求について、事実調べをすることなく、棄却する決定をしたことを伝えている。 
 
 
 
 
 
 三重県名張市で1961年に女性5人が死亡した名張毒ぶどう酒事件で、名古屋高裁刑事1部(山口裕之裁判長)は8日、収監先で2015年に89歳で病死した奥西勝・元死刑囚の妹、岡美代子さん(88)による第10次再審請求を棄却する決定を出した。弁護団が提出した新証拠28点全てを「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たらない」と退けた。 
 
 
 
 高裁決定はまず、犯行機会は奥西元死刑囚が現場に1人でいた約10分間のみであるとし、捜査段階の自白は十分信用できるとしている。今回の決定は、予断と偏見に基づくものであり、きわめて不当な判決である。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 菊池事件 
 
 
 
毎日新聞(2017年11月28日)の野呂賢治記者は、次のように伝えている。 
 
 
 
 ハンセン病患者とされた男性が殺人罪などに問われ、無実を訴えながら死刑執行された「菊池事件」で、元ハンセン病患者6人が男性について検察が再審請求しないため精神的苦痛を受けたとして、国に1人当たり10万円の慰謝料を求めた国家賠償訴訟の第1回口頭弁論が27日、熊本地裁(小野寺優子裁判長)であり、原告の竪山勲さん(68)と弁護団共同代表の徳田靖之弁護士が意見陳述した。国側は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。 
 
 
 
 竪山さんは13歳の時に国立ハンセン病療養所「星塚敬愛園」(鹿児島県鹿屋市)に強制隔離され、入所9日後に菊池事件で男性が死刑執行されたことを園内放送で聞いたことを証言。「ハンセン病患者への差別がまん延する時代に適正な裁判ができたのか。菊池事件は救済されないまま置き去りにされている」と訴えた。国側は「原告の主張は適当でなく、審理する必要性は皆無だ」として請求棄却を求めた。次回期日は来年2月13日。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 松橋事件 
 
 
 
 毎日新聞(2017年11月29日)の平川昌範記者は次のように伝えている。 
 
 
 
 30年以上に及ぶ「無実」の訴えが再び裁判所を動かした。熊本県宇城市(旧松橋(まつばせ)町)で1985年に男性が刺殺された「松橋事件」で殺人罪などに問われ、懲役13年が確定して服役した宮田浩喜(こうき)さん(84)の再審開始を認めた29日の福岡高裁決定。次男賢浩(まさひろ)さん(59)=東京都=は「おやじは既に認知症で、支えてきた兄貴は亡くなった。検察はこれ以上、再審開始を長引かせないでほしい」と訴える。 
 
 
 
 
 
 福岡高裁は、再審を決定した理由として、次のような3つの理由を挙げている。 
 
 
 
理由 1 遺体の傷痕と凶器の小刀の形状は相当矛盾している 。 
 
 
 
理由 2 小刀に巻き、犯行後に燃やしたと説明したシャツ片が現存し、凶器に関する自白は事実に反する疑いがある 。 
 
 
 
理由 3 捜査段階の自白全体の信用性が大きく揺らぎ、犯人ではないという合理的疑いが生じた 。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 不撓不屈の戦いは続く 
 
 
 
 近代憲法は、われわれ人間とは、「生命、自由および幸福を追求する権利」をもつ存在であると明確に規定している。これは、近代憲法の発明であり、発見である。 
 
 
 
 今回の、ショーン・マクブライド平和賞の授賞にあたり、「オール沖縄会議」共同代表の一人、高良鉄美琉球大学大学院教授は「辺野古は人権問題だ。強大な国家権力に保革の枠を超え抗議する運動が世界基準だと示された」と語った。 
 
 
 
 袴田事件は事件が発生した1966年から51年、名張毒ぶどう酒事件は事件が発生した1961年から56年。長い長い裁判闘争が続いている。 
 
 
 
 冤罪事件は国家による犯罪である。早急に解決し、人権を回復しなければならないにも関わらず、国家権力を握る者たちは正義の実行を遅延させてばかりいる。松橋事件や菊池事件をみると、それがよくわかる。 
 
 
 
「正義を遅らせるということは、正義を認めないということである。」 
 
 
 
 これまでの人類の歴史は人権をめぐる戦いの歴史である。それは今後とも、続く。われわれの不撓不屈の戦いは続く。 


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