2018年01月01日00時27分掲載  無料記事
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核・原子力

日米原子力協定はどうあるべきか〜迫る協定期間満了、滞る原発6千発分のプルトニウム処理

<訪米団院内報告会> 
 2018年7月に満期を迎える日米原子力協定の自動延長に異議を唱える日本の民間シンクタンク「原子力資料情報室」(CNIC)と「新外交イニシアティブ」(ND)は、米政府に政策変更を促すため、訪米団を組んで2017年9月にワシントンに赴き、米政府・議会関係者に対してロビー活動を行った。 
 訪米メンバーは、逢坂誠二衆院議員(立憲民主党)、阿達雅志参院議員(自民党)、服部良一元衆院議員(社民党)、三上元さん(元静岡県湖西市長、脱原発をめざす首長会議世話人)、山田清彦さん(核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団事務局長)、太田昌克さん(共同通信編集委員、早稲田大学・長崎大学客員教授)、小糸健介さん(牧師、服部良一さんのアシスタント)、猿田佐世さん(ND事務局長、弁護士)、久保木太一さん(ND研究員、弁護士)、松久保肇さん(CNIC事務局長)、ケイト・ストロネルさん(CNICスタッフ)、アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション)の計12名。 
 
 それから約3か月後の12月上旬、CNICとNDは、ロビー活動の結果を日本の野党国会議員たちに報告しようと、東京・永田町の衆議院第二議員会館において「日米原子力協定とプルトニウム問題に関する訪米団院内報告会」を開催し、訪米団を代表して逢坂議員、三上さん、松久保さん、猿田さん、太田さんの5名がそれぞれ報告した。 
 
<日米原子力協定とは> 
 日米原子力協定は、正式名称を「原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」といい、1955年に初めて締結された後、3度の改定を経て、1988年に現協定が30年満期で締結された。 
 ざっくり言えば、原発の稼働により発生する使用済み核燃料を再利用(核燃料サイクル)する過程で抽出されるプルトニウムを使い、日本が核兵器を開発することを禁じる米国との取り決めだ。 
 日本はこの協定により核燃料サイクル事業が認められ、非核兵器保有国で唯一、ウラン濃縮(天然ウランから核分裂しやすいウランを集めて濃度を高くする作業)や再処理技術(使用済み核燃料の中から再利用できるウランとプルトニウムを取り出す技術)を保有している。 
 
 ただ問題なのは、使用済み核燃料の再処理で抽出するプルトニウムが溜まりに溜まっており、今やその量は原爆6千発分に相当する約48トン(海外委託分+国内作成分)に達していることだ。 
 それほどの量が溜まった原因は、再処理を経て作り出すMOX(ウラン・プルトニウム混合化合物)燃料を、福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」で使用することを目論んでいたところ、もんじゅがトラブル続きでまともに稼働しなかったこと(その結果、もんじゅは2016年12月に廃炉が決定)、もんじゅの稼働停滞を受けて進められた、プルトニウムを消費させる唯一の手段となった「プルサーマル」(通常の原発でMOX燃料を燃やす方法)が、3・11の福島第一原発事故を受けて原発の大半が停止したために遅々として進まないことが挙げられる。 
 こうした状況で、2021年度上半期に操業予定の六ヶ所再処理工場(青森県)が稼働すれば、さらに年間数トンものプルトニウムが増加することになる。 
 
<深刻化する核不拡散問題> 
 CNICとNDが日米原子力協定の自動延長に警鐘を鳴らすのは、脱原発の是非を問うためではなく、北朝鮮が核開発を進めていることに加え、日本がプルトニウムを大量保有し続ける状況が、北東アジアでの核武装ドミノを誘発しかねないという“核不拡散”すなわち安全保障の問題に焦点を当てるが故である。 
 報告者の1人、CNIC事務局長の松久保肇さんは次のように語っている。 
「今、核不拡散問題がとても深刻化している状況下で、日本がプルトニウムを作り、持ち続けることは、近隣諸国等に『日本は核兵器を保有するかもしれない』との懸念を生じさせ、ひいては核兵器廃絶の流れを阻害する要因になります。日本が再処理を止めることは、核不拡散の状況を改善させる一歩です」 
 
 ND事務局長の猿田佐世さんが報告するところによると、面談した米議会関係者の大半が、六ヶ所再処理工場を稼働させて日本がプルトニウムをさらに貯め込むことに非常に強い懸念を持っていて、しかもその懸念は核不拡散に対する意識が高い米民主党関係者だけでなく米共和党関係者にも共有されているのだそうだ。 
「他のテーマのロビーイングでは、例えば沖縄基地問題だと“沖縄がどこにあるか”から話を始めなければならないところ、日米原子力協定については、既に知っている人が多くいて、注目度の高さが窺えました」(猿田佐世ND事務局長) 
 
 続いて、逢坂誠二衆院議員は「〔閏臈淦権は2012年、福島第一原発事故を受けて“2030年代原発ゼロ”を閣議決定しようとしてできなかったが、当時の報道では『米国の同意が必要』というような報道が流れていたので、日米間でどのような力学が働いたのか、日本が核燃料サイクルを継続することについて、米議会関係者たちはどう認識しているのか、という2点を確認することが訪米の目的でした」と語った上で、米議会関係者と面談した結果明らかになったことを次のように報告した。 
 
  畔胴颪同意しなければ日本は原子力政策を変えられない”というのは基本的にない。それは、例えば日本が核燃料サイクルを実施することについて、米議会関係者たちの多くが「やるか、やらないかは日本の主権の問題であり、日本が決めることである。米国がとやかく言うことではない」旨の台詞を枕詞のように言っていたことからも明らかだ。 
 
◆〔銘未靴進胴饋佑梁燭が「米国は、安全保障上というよりも、コストが高すぎるから核燃料サイクルを止めたのである。コスト問題が、核燃料サイクルを止めた最も大きな理由だ」と仰っていたのがとても印象に残った。 
 
 元静岡県湖西市長の三上元さんと共同通信論説委員の太田昌克さんは、それぞれ逢坂衆院議員の報告を補足・強化した。 
 
「私が訪米行動で実感した、印象に残ったことは大きく2つあります。 
 まず1つは、『六ヶ所村の核燃料再処理工場の稼働問題は、日本の国内問題だから米国がとやかく言う筋合いはない。ただ、世界各国のほとんどが再処理を止めているし、オバマ前大統領やトランプ大統領が唯一一致した点も“馬鹿馬鹿しいから再処理は辞めよう”という点だ。私としても同じように言いたい。ただ、プルトニウムがどんどん溜まる状況は問題で、東アジアの緊張を高めることにつながる。特に中国が“日本は核兵器を持ちたがっているな”と感じ、それに対していろんな反応をすることを米国としては嫌うのである。だから、日本にプルトニウムが溜まり続けることに関心を持たざるを得ない』という反応が多かったことです。 
 もう1つは、原子力を第一線で研究している米国人学者と会った際に『原発は、どんどんコストが高くなっていて、もはや採算に合わなくなっている』と明確に言われたことでした」(三上元さん) 
 
「テキサス大学の原子力・核不拡散の専門家と議論する機会があり、一番印象に残ったのは『どんなに説明を聞いても、日本がやっていることが分からない。これだけ経済性が悪いのに、どうして核燃料サイクルをやってプルトニウムを作るのか。やはり核武装を狙っているのか。それしかないんじゃないか。でなければ、そんなに核燃料サイクルに対してお金を掛けないはずだ』と真顔で聞かれたことでした」(太田昌克さん) 
 
 報告を受けた野党国会議員からは、 
「米国でのロビー活動と並行的に、国内での運動をやっていかないと、日米原子力協定の現状維持派に勝てない」 
「日本の世論がこの問題を知らないことがまず問題だ。政治家もメディアももっと努力しなければならない」 
「核燃料サイクルに一番否定的なのは、実は外務大臣をやっている河野太郎さんだ。河野外相は味方だと思うべきで、これまでの河野外相の発言を辿りながら『核燃サイクル問題を扱うことは、あなたの最大の使命だ』という議論を国会内でしていくべきだ」 
「民主党が下野した理由の1つは、原発立地県に受け入れられる原発依存度の低減策を打ち出せなかったことだ。原発を国有化して現地の雇用を保障するといった地元が納得するような絵をしっかり描いて提示する必要がある」 
などの声が上がっていた。 
 
<今後の課題> 
 日米原子力協定は、第16条で「いずれの一方の当事国政府も、6箇月前に他方の当事国政府に対して文書による通告を与えることにより、最初の30年の期間の終わりに又はその後いつでもこの協定を終了させることができる」「両当事国政府は、いずれか一方の当事国政府の要請に基づき、この協定を改正するかしないか又はこの協定に代わる新たな協定を締結するかしないかについて、相互に協議する」と定めている。 
 “最初の30年の期間の終わり”は2018年7月なので、その6カ月前に当たる2018年1月以降、日米原子力協定のあり方について、日米のいずれかから問題提起できるようだ。 
 だから協定の自動延長反対派としては、1月からどうやって日本国内で大きなムーブメントを起こしていくかが課題となる。その方策の1つとして、CNICとNDは米国からの外圧を利用するべく、2018年初旬に再び訪米団を組んでワシントンに赴き、ロビー活動を継続する予定だ。既に協力を表明した米国会議員もいるとのことである。 
 CNICとNDの今後の取組に引き続き注目したい。(坂本正義) 


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