2018年01月08日15時39分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  地雷防御壁越えの過酷モロッコ・ラリー  平田伊都子

  モロッコは本当にお利口さんです。 というより、フランスが上手にモロッコを動かしているようです。 フランスはモロッコ占領地・西サハラをモロッコ領土にしようと、UNやEUやAUに働きかけています。 フランスの狙いは、西サハラの石油、天然ガス、ウランなどの未開発地下資源と、未開発漁業資源です。 これらの天然資源は、西サハラを植民地(未確定地域)として国連が封印しているため、手を付けるにはまず領有権がないとだめです。 
 巧妙な外交策略師のフランスは、文化やスポーツや抽象的な国際フォーラムなどにモロッコを参加させ、UN、EU、AUなどの国際組織を丸め込もうとしています。 モロッコ・ラリーは、挑発外交の一つです。 
 
(1)地雷を越えて<アフリカ・エコ・レース>: 
 2018年1月8日、モロッコ占領地・西サハラの南部地方で<アフリカ・エコ・レース>が戦われた。CORCAS(王室サハラ問題諮問協議会)モロッコの通信によると、「2017年12月31日にモナコを出発した、179人の参加者と91台の参加車はモロッコのタンジェからラグイラを経て、モーリタニアに入り、セネガル首都ダカールに到着する。オートバイが35台、車が110台、トラックが34台、参加国は27に上り、1月14日にセネガルのローズ湖にゴールインする」と、ある。ローズ湖のゴール?それって、あの懐かしい<パリ・ダカのゴール>ジャン?このラリーは、南米に舞台を移した<ダカール・ラリー>に対抗して、北西アフリカで2009年~2010年にかけて開催された。 
 あの、1979年にテイエリー・サビーヌが創設した<パリ・ダカ・ラリー>の浪漫は、サビーヌの壮烈な事故死と共に吹っ飛んでしまった。結局、砂漠もあるし過酷だし、紛争地西サハラも通らないし出場者を襲うアフリカ・テロリストもいないしということで、ラリーの舞台は2009年にアフリカ大陸から南アメリカへ移り、<ダカール・ラリー>という名で、2018年も1月6〜20日に開催されている。2018年1月8日は、ペルーのピスコからサン・ファン・マルコナまで、第3ステージが戦われた。フランスの石油会社トータルが、冠スポンサーを数回にわたって務めている。トータルはモロッコ占領地・西サハラの未開発油田に、入札している。契約先は勿論、植民地支配者モロッコ。フランスの狙いは明白だ。 
 
(2)ポリサリオ西サハラ難民軍にテロリスト・レッテル?: 
 2018年1月5日、モロッコ国連大使オマル・ヒラールが、「モロッコはポリサリオ西サハラ難民軍が、国連緩衝地ゲルゲラト近郊で軍事パレードなどの挑発行為を繰り返し、当該地から軍を撤去しないことを、国連事務総長に通告した」と、西サハラ軍事パレードを国連和平交渉を脅かす軍事侵攻として、国連に告発した。さらにヒラール大使は、「交渉の相手が軍事侵略を行っている間、モロッコは交渉に応じない。軍事紛争が治まらない限り、国連も交渉作業に移行できない」と、国連主催両当事者交渉へのモロッコ不参加を合法化してみせた。さらにさらにヒラールは、「ポリサリオ難民軍はサハラ砂漠挑戦のラリ―参加者たちを妨害している」と、あたかもポリサリオ難民軍が<アフリカ・エコ・ラリー>を襲うテロリストでもあるかのように表現した。 
 モロッコの狙いは、ポリサリオ西サハラ難民軍にテロリストのレッテルを貼りつけることだ。アメリカが西サハラにテロリストのレッテルを貼るようにと、2017年のモロッコはワシントンでロビー活動を活発化させた。が、功を奏さなかったようだ。どんな些細な西サハラ側の動きもモロッコは捕らえて、アフリカ最後の植民地・西サハラの存在を潰そうとしている、親方フランスの知恵と力を借りつつ、、 
 
(3)国連事務総長緊急発表: 
 新年の挨拶で、国連事務総長アントニオ・グテーレスは、「私はアピールをしているのではなく、世界に向けて非常事態の警告をしています。紛争は深まり、新たな危険が浮上している、、」と、警告を発した。 
 そして、モロッコの挑発にまんまと乗せられた国連事務総長は、1月6日に、「事務総長はゲルゲラト・西サハラ南部緩衝地帯近郊、つまり、モーリタニア国境と<砂の壁>モロッコ地雷防御壁の間に起こっている軍事緊張に関して、深く憂慮している。」と、国連事務総長声明を、次席国連報道官ファルハン・ハクを通じて発表した。さらに、モロッコとポリサリオ難民軍に、挑発行為を避け平静を保つよう強く要請した。次席国連報道官は、「両当事者の緊張が、国連事務総長西サハラ特使ホルスト・ケラーの交渉再開を妨げるのではないかと、懸念している」と、言及した。 
 モロッコ国連大使ヒラールは、「モロッコは昨年の紛糾以来、国連の意向を尊重し、ゲルゲラト当該地域では一切の軍事行動を起こしていない」と、昨年のモロッコ軍によるゲルゲラト侵攻が紛争のきっかけを作ったことなどおくびにも出さず、モロッコの外交勝利を誇ってみせた。 
 
 国連事務総長アントニオ・グテーレスは年頭挨拶の最後に、Thank you. Shokran. Xie Xie. Merci. Spasiba. Gracias. Obrigado.と、感謝の言葉を英語、アラビア語、中国語、フランス語、ロシア語、スペイン語、ポルトガル語で、<ありがとう>を連発しましたが、忘れてませんか?  国連拠出金第2位で国連外交をモットーにしている国の言葉、、そう、日本語の<ありがとう>、、メンコクナイね! 
 アメリカ大統領トランプに倣って、「国連拠出金を値引きしちゃうゾ」と言いたいですネ!! 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2018年1月8日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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