2018年01月10日10時15分掲載  無料記事
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欧州

哲学者、エチエンヌ・タッサン(Etienne Tassin)氏が亡くなる ハンナ・アレントの研究家、難民・移民の問題も考察

  日本で言及されることは少ないが、哲学者のエチエンヌ・タッサン(Etienne Tassin)氏が事故がもとで亡くなった。62歳だった。事故が何かは具体的に伝えられていない。以下は哲学雑誌に掲載された訃報。今月の6日のことだった。 
http://www.philomag.com/lactu/breves/mort-du-philosophe-etienne-tassin-25656 
  タッサン氏は政治哲学者のハンナ・アレントの研究で知られるフランスの哲学者だった。パリ第七大学に拠点を置いていた。 
 
  ハンナ・アレントが20世紀のファシズムの考察と同時に、難民の問題を考察したことも関係しているのだろうが、タッサン氏も難民の問題で独自の取り組みを近年積極的に行っていたのだという。このことはアラブの春以後、欧州連合を揺さぶっている難民の問題が背景にあった。タッサン氏は「共通の世界」( monde commun)の構築を目指していたとされ、それは世界の人間は皆、すべからく「異邦人」である、という考えからだそうである。というのは誰でも、他者に対しては異邦人であるからだ。”Un monde commun. Pour une cosmopolitique des conflits”( Seuil, 2003)スイユ出版から2003年に出した「共通の世界 〜地域紛争を超える政治を求めて〜」という本が知られているとのこと。 
 
●エチエンヌ・タッサン著「共通の世界 〜地域紛争を超える政治を求めて〜 」Un monde commun. Pour une cosmo-politique des conflits(スイユ社のウェブサイトから) 
http://www.seuil.com/ouvrage/un-monde-commun-pour-une-cosmo-politique-des-conflits-etienne-tassin/9782020621564 
  未読なので詳細は不明だが、2001年にニューヨークで起きた同時多発テロ事件以後、紛争が各地で起こされていることに対して、cosmo-politiqueという概念を提唱して、一国家の戦略とか国益を超える世界人類共通の政治を提唱していたらしい。これらの地域紛争こそ、おびただしい難民を生み出す原因になっており、いかに地域紛争を超える政治を作り出すか、ということを真摯に考えた法哲学者のようである。そして、そのことはハンナ・アレントが研究したこととも重なり合う。 
 
 
 
 
■ハンナ・アレント著 「革命について」 〜アメリカ革命を考える〜 
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