2018年01月14日22時07分掲載  無料記事
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ドキュメンタリー映画の草創期の傑作  カナダエスキモーの生活を撮影したロバート・フラハーティ監督の「ナヌーク」

  ドキュメンタリー映画の草創期の傑作の1つがロバート・J・フラハーティ監督の「ナヌーク」(1922)という作品です。「ナヌーク」はカナダのエスキモーの一家の氷上での生活を描いています。フラハーティはアメリカ人でもともとはミシガン鉱山学校を卒業した探検家でした。カナダのエスキモーたちの暮らす厳寒地域を踏破するようになったのも鉄鉱資源探索の探検家としてでした。そんな中、最初は映画カメラのベルハウエルを趣味的に回していたところ、次第に本格的にエスキモーの生活を映画にすることを考えるようになっていきました。最初に探検したのが1910年でしたから映画が上映されるまでに12年かかっています。 
 
  「ナヌーク」ではエスキモーが使っているカヤックという小舟やら氷で作る家、子どもへの狩りの技術の伝授、家族の愛情、アザラシ狩り、アザラシの解体と食事、飼っている犬たちなど様々な氷雪の世界のデテールが表現されており、都会で暮らす多くの観客を魅了したことでしょう。特殊な撮影技術はなく、基本的には1カット1カット三脚を据えて撮影しています。過酷な環境に暮らすエスキモーたちですが、素朴ながらも都会の人間に劣ることがない文化の豊かさを感じさせられます。 
 
  探検家出身のフラフハーティは「ナヌーク」で成功したあとも、ポリネシアやアラン島などの大自然のもとで生きる人々のドキュメンタリー映画を作り続けました。「ナヌーク」でフラハーティがエスキモーたちを文明から取り残された劣った人間たち、という風には決して描いていないことに注目したいと思います。 
 
 
■映画「ナヌーク」(78分)Robert J. Flaherty. 
”Nanook " (1922) 
https://www.youtube.com/watch?v=m4kOIzMqso0 


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