2018年01月27日14時36分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201801271436426

農と食

カメムシは「あっという間に」殺虫剤抵抗性を獲得する

 コメに黒い斑点を作るカメムシ。販売するコメに斑点米が混ざると価格が安くなるため、コメ生産農家は農薬を使わざるを得なくなる。産業技術総合研究所(産総研)は1月18日、斑点米カメムシの一種ホソヘリカメムシが殺虫剤を分解する土壌細菌バークホルデリアを共生細菌として獲得すると、2回の散布でも「あっという間に」殺虫剤抵抗性を獲得するという研究結果を発表した。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 土壌細菌バークホルデリアのなかには、有機リン系殺虫剤フェニトロチオン(MEP)を分解できる細菌がある。ホソヘリカメムシがこのバークホルデリアに感染しすると、MEP抵抗性を獲得するというもの。わずか2回のMEP散布で、分解細菌が増え、感染したカメムシもMEPに抵抗性を持つという結果が得られたという。産総研は、共生細菌を介して従来考えられていたよりも急速に殺虫剤抵抗性を獲得するとしている。 
 
 実際に年数回MEPが使われていた南西諸島のサトウキビ圃場でも、サトウキビの重要害虫のカンシャコバネナガカメムシで、殺虫剤分解細菌の密度が高いほど、細菌に感染したカメムシが多い傾向が確認されたとしている。そして、「土壌中の殺虫剤分解菌の密度が増えれば、共生細菌による害虫の急速な殺虫剤抵抗性化が起こりうると考えられる」としている。 
 
 ・産総研, 2018-1-18 
  害虫の殺虫剤抵抗性は共生細菌を介してあっという間に発達する 
  http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2018/pr20180118/pr20180118.html 
 
 この研究結果は、結局、新しい農薬と抵抗性害虫の登場というイタチゴッコが終わることなく続くことを示している。このことは、抗生物質の過剰使用と耐性菌の関係とよく似ている。進むべきは新しい農薬ではなく、有機農法や総合的病害虫管理(IPM:Integrated Pest Management)により害虫被害を抑制に向かうべきだ。環境に影響を与えず、生態系の持つ病害虫抑制に寄与する技術で、無用のイタチゴッコに終止符を打つことに力を入れることがより生産的で意味がある。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。