2018年03月02日01時11分掲載
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人権/反差別/司法
「人間を守ろう、 国境を守るのではなく」 ( Protégeons les humains pas les frontières / Let's protect people, not border ) 厳寒のパリに生きる難民と支援する人々
エマニュエル・マクロンは昨年の大統領戦で、国民戦線のマリーヌ・ルペンに対抗してリベラル派のポーズを見せて大勝した。ところが今年に入ってマクロンは国境警備に携わる警備部隊を大いに讃え、難民のフランスへの迎え入れを大幅に制限する法案をぶち上げ、右翼ぶりを示し始めた。閣議で決定された新たな難民法案は難民認定の申請期間を半年に短縮し(今まで概ね1年以上あった)、難民と認められなかった場合に上訴して再審査ができる猶予期間をわずか15日間に縮めることになるらしい。この新たな難民法案は6月に国会で審議されることになるようだ。申請期間が短くなったり、再審査の申請期間が短くなることが、論理的に100%難民認定が厳しくなる、とは言い切れないかもしれないが、難民認定を受けるまでの審査の難しさとか証明の厳しさ、これまでのフランス政府の対応や認定率などを考えれば、非常に厳しくなるのではないか、と見る人が多いのだ。
こうした中、厳冬のパリで難民に食料などを支援する市民の運動 も続けられている。日刊ベリタでもすでに何回か取り上げてきた市民運動の「紅茶と珈琲を難民に」(The et Cafe pour les refugies)は今でもパリ市北東部に位置するメトロのジョレス駅前(Jaures) で週一回、木曜の夕方午後6時半から難民に食料、衛生用品、水、文具と暖かいコーヒーか紅茶を無料で支給している。 また、難民の相談に応じて医療機関や行政窓口なども案内している。この運動は市民のボランティアに支えられてきたが、スタッフたちはマクロン大統領の新しい難民法案に怒りを感じており、抗議デモにも参加している。
ボランティアの一人、ルイーズ・ムーラン(Louise Moulin)さんは本のデザイナーだが、仕事の空いている時は駆けつけているのだという。ムーランさんは今日もソーシャルメディアで支援への参加を呼び掛けた。
”Ce soir RV a 18h30 Jaures avec The et Cafe pour les refugies. Vous pouvez venir aider et/ ou participer ici a la cagnotte qui permet chaque semaine de distribuer des kits (sanitaires ou scolaires selon les besoins) en plus du the, cafe, pain, chocolat offert par des commercants solidaires. En cette froide saison, apporter des vetements chauds ou des couvertures (pour hommes, propres) sera bienvenu. Merci a tou.te.s pour le soutien. "
(今夜、18時30分から、ジョレス駅前で「紅茶と珈琲を難民に」の集まりがあります。あなたも支援したり、寄附に協力したりすることができます。毎週、ここで難民それぞれに必要な衛生用品や文具、紅茶、コーヒー、ショコラが配られます。ショコラやパンは理解のあるお店の経営者の方々から無料で提供されたものです。今は厳寒の時期ですから、暖かい衣類や毛布が歓迎されます。)
ムーランさんによると、ジョレス駅近くのサン・マルタン運河沿いに難民およそ80人がテントを張って冬の寒さをしのいでいる。通りかかったムーランさんは横断幕が張られているのを見た。
”On a besoin de l'aide de tout le monde et chaque petit geste est bienvenu. Hier soir en sortant je suis passee a Jaures et j'ai trouve du bois (des gens qui jetaient des choses), je suis allee sur le quai chercher des bras, et quelques afghans m'ont accompagnee et m'ont remerciee. C'est peu de choses.. mais quand on a qu'un feu pour se rechauffer a -8 ℃, c'est bien d'avoir du bois pour l'alimenter.C'est dur d'avoir cette realite sous les yeux et de s'apercevoir que pour beaucoup de gens cette realite n'existe pas, car ils ne la voient pas... La ou je travaille mes collegues repetent ce qu'elles entendent a la television : ces gens sont dehors car ils refusent les hebergements : ca me rend folle d'entendre ca..."
「私たちは支援を必要としています。どんな小さな手助けでも歓迎です。昨夜、私は帰り道で、ジョレス駅前を通った時、材木を見つけました。(捨てられたタンスやベッドなどの木材などです)それで私は人手を探して、運河沿いのキャンプへ行ってアフガニスタン人を数人連れて木材を運びました。彼らは私に感謝してくれました。それはほんの小さなことに過ぎませんが、マイナス8度の中で温まるのが火しかないとしたら、木材はとても大切なものなのです。このような現実を目にすることは辛いことです。そして、多くの人はこのような現実を見ることがないが故に、多くに人々の意識の中にはこのような現実が存在しないのだ、と感じることが辛いことなのです。私が仕事をしている職場では同僚の女性たちが、テレビで報道されたのと同じことを話しています。テントの難民たちは政府が与えた収容施設を自分で拒否した人々なのよ、と。それを聞くと私はとても腹が立ちます。」
難民たちが政府の収容施設を拒否した理由と言うのは日刊ベリタで以前、レジャーヌ・ボワイエさんがレポートしてくださったのだが、収容施設と言っても地方の津々浦々の宿泊施設に分散されてしまうため、フランス語の勉強を受ける機会や難民認定の活動を行うためのリソースから切り離されてしまう可能性があることで、さらに孤立してしまう精神的な辛さもあってパリに戻ってきた難民たちが100人くらい存在するのである。
Louise Moulin
https://www.colleo.fr/cagnotte/9491/the-et-cafe-pour-les-refugies
Ryota Murakami
村上良太
■パリで難民に食料を支援する市民の運動 「紅茶と珈琲を難民に」 The et Cafe pour les refugies
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201701130839015
■パリの難民支援の輪 「紅茶と珈琲を難民に」(The et Cafe pour les refugies ) その2
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201701131702075
■フランスで難民を排斥するな、というデモが起きる 避難所を提供する運動も
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201509071704021
■「個々の政治家以前に『構造的ラシズム(人種差別主義)』を解体しなくてはならないのです」 パリの討論会から
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201707291556216
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