2018年05月08日10時02分掲載  無料記事
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みる・よむ・きく

日本に出稼ぎにきた男女の恋愛を描くフィリピン映画 "KITA KITA " ( = 私はあなたを見る,  2017) 

  日本経済がバブルに向かっていた1980年代、フィリピン人が日本に出稼ぎに来るようになり、興行の世界やパブで働く女性が多かったためか、「じゃぱゆきさん」などとその当時は呼ばれていた。また日本人男性と結婚するフィリピン人女性を筆者も取材したことがあるが、国際結婚も1980年代から90年代にかけて増えた。あれから30年以上の歳月が流れた。昨年公開されたフィリピン映画”Kita Kita”(私はあなたを見る)は舞台が札幌で、日本に出稼ぎに来た現代のフィリピン人男女の恋愛を描いている。女性はパブで働いており、男性は工場で働いていたのである。 
 
  ストーリーは失恋のショックで一時的に盲目になってしまった女性のもとに見知らぬフィリピン人の男が毎朝、手作りのフィリピン料理を携えてやってきては軽快に語りかけ、なんとか友達になろうとする。最初は迷惑そうに拒絶していた主人公だが、やがて心を開いていく・・・。物語の構成には多少、強引なところがあるが、日本で暮らしているフィリピン人がどんな話をし、どんなことを夢見ているのかを知るにはよい映画だ。 
 
  映画の中で主人公の女性レアが失意の中で「私は第一級市民だった昔に戻りたい」と漏らす言葉は強い印象を与える。1980年代もフィリピーナは特殊な目で見られがちだったが、今でもそうした状況があることを改めて感じさせられる。フィリピーナが日本では自らを二級市民にしか扱ってもらえないと感じているというのだ。それが婚約者だった日本人の男が別のフィリピーナとつき合い始めた失恋の後の言葉ということが一層、悲しい。こうした構造はアメリカや英国が舞台であれば珍しい感じもしなかっただろうが、日本が舞台であることによって日本もそうした国であることを認識させられる。 
 
  筆者もこの映画を見るまでは日本で暮らしているフィリピン人を主人公にしたドラマというものを想像したことがなかった。しかし、”Kita Kita”は決してそうしたフィリピン人の日本における恨みつらみを描いた映画ではなく、むしろそうした面はあまりない。だからこそ、逆にちょっとした言葉から、いろいろな想像が喚起される。主人公の女性は真実の愛に出会ったことによって日本と言う国をもう一度、見つめなおそうとするかのようだ。レアの心が束縛から解き放たれていく物語である。 
 
 
●映画 "Kita Kita" のトレイラー 
https://www.youtube.com/watch?v=QbHpyjrGdpc 


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