2018年06月11日20時59分掲載  無料記事
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核・原子力

緊急共同声明 日英両国民にリスクを押し付ける日立の原発輸出は許されない

 日立の子会社であるホライズン・ニュークリア・パワーがイギリス・ウェールズでウィルヴァ・ニューイッド原発建設計画を進めています。 
 このプロジェクトには政府が100%出資する国際協力銀行による融資や、日本貿易保険による付保が検討されていると報道されています。報道によれば、日立製作所の中西会長は5月3日に訪英し、プロジェクトへのイギリス政府の直接出資と電力価格保証を交渉するとされています。 
 リスクや巨額のコストを日英国民に転嫁して、原発輸出をすすめることは、倫理的にも社会的にも許されません。 
 FoE JapanはPAWB(People Against Wylfa B/ウェールズ現地の市民団体)と共に緊急共同声明を発表しました。 
 
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【緊急共同声明】 
 
日英両国民にリスクを押し付ける日立の原発輸出は許されない 
〜日立・中西会長とイギリス・メイ首相との会談を受けて〜 
 
2018年5月2日 
 
国際環境NGO FoE Japan 
People Against Wylfa B 
 
 日立の子会社であるホライズン・ニュークリア・パワーのウィルヴァ原発建設をめぐり、日立製作所の中西会長がテリーザ・メイ英国首相と面会し、イギリス側の出資額の拡大や、同原発の買取価格保証を求めると報道されています(1)。日立製作所が、このように必死になっていることは、原発ビジネスのリスクの大きさを示すものにほかなりません。 
 中西会長は、同事業が民間事業として推進することは困難であるとの見解を示し、「政府がコミットしないとできないということが、英国政府・日本政府・日立の共通理解」と語っていました(2)。またプロジェクトのリスクを軽減するために、政府100パーセント出資の日本貿易保険(NEXI)による融資保証も検討されていると報道されています(3)。 
 
 巨額のコストを要する原発は、事故リスク以外にも、安全対策費や建設費のコスト増加、規制強化への対応、住民の反対運動、放射性廃棄物の処理など、その経営上のリスクは膨大なものです。しかし、それならば、事業撤退の経営判断をすべきではないでしょうか。公的資金で国民にリスクを押し付け、事業の利益は事業者と銀行が享受するというのは許されることではありません。 
 
 現在イギリスで建設中の原発の電力買い取り価格は92.5ポンド/MWhで、これは現在の市場価格の約2倍にも及びます。そのためイギリス監査院はこの原発事業により消費者負担が増大すると警告しています(4)。ウィルヴァ原発に高い買取価格を認めることはイギリスの国民にさらに大きなリスクとコストを負わせるのです。いったい誰のためのプロジェクトなのでしょうか。 
 
 ウィルヴァ原発建設立地は自然豊かな場所です。EUの保護種であるキョクアジサシの繁殖地も発見されています 。日立がプロジェクトのために買収した土地の一部は、イギリス・ウェールズの自然保護区にあたる「優れて美しい自然環境エリア(AONB)」にあたります。さらに原発建設は地元の経済に貢献するどころか、かえって大きな負荷をかけかねないと指摘されています(5)。 
 
 ウィルヴァ原発に反対する地元住民団体のPAWBは、以下のように述べています。 
“底なし沼である原発事業に日本のお金をつぎこまないでください。原発は時代遅れで、危険な技術で、汚染を発生させ、そしてとても高価なエネルギーです。東京電力福島発電所の事故に対し、今後日本の人々が大きな代償を支払い続けることになります。今も続くこの悲劇に終わりが見えそうにありません。日本政府が日本の原子力村を生き残らせるために、このひどい技術を他国に輸出しようとしていることは許されることではありません” 
 
 東京電力福島第一原発事故はいまだ収束せず、事故原因やその後の経緯も不明なことが多いのが実情です。世界的には、再生可能エネルギーが飛躍的に伸び、コストも下がってきています。省エネの技術も進んできています。そのような中で、なぜ日本政府は、原発輸出を推し進めるのでしょうか。これは、倫理的にも、経済的にも間違った選択です。さらに、原発輸出に関する国民的議論や国会での議論もないまま、一部の企業の利益のために公的資金を投入することはゆるされません。 
 
 日本政府や企業が推進すべきものは、福島原発事故を引き起こした深い反省と教訓にもとづく、脱原発と持続可能なエネルギーのための社会システム作りや技術開発ではないでしょうか。私たちは、ウィルヴァ原発建設に強く反対します。 
 
注釈: 
1.「日立、英政府と原発巡り最終協議へ 撤退も視野」日経新聞2018年4月29日 
 
2.「日立の英原発建設、日英政府の積極関与が必要=経団連次期会長」ロイター 2018年2月13日 
 
3.「日立の英原発事業、日英政府が支援 損失なら国民負担も」朝日新聞、2018年1月11日 
 
4.“Hinkley Point C” National Audit Office, 2017年6月23日 
 
5.“Plans for Welsh nuclear power plant delayed by concerns over seabirds” Guardian, 2018年4月9日 
 
6.“Wylfa Newydd: Nuclear plant 'increases homelessness risk'” BBC, 2018年3月27日 
 
オンライン署名等、詳しくはこちら。http://www.foejapan.org/energy/export/180502.html 
(FoE Japanウェブサイト「新着情報」より転載) 
 
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国際環境NGO エフ・オー・イー・ジャパン 
(通称:FoE Japan) 
〒173−0037 東京都板橋区小茂根1−21−9 
事務局業務時間:平日(月〜金)10:00〜18:00 
(Web)http://www.foejapan.org/ 


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