2018年07月26日17時02分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201807261702584

核・原子力

満期を迎えた日米原子力協定の課題と展望〜原子力資料情報室&新外交イニシアティブ訪米報告会

 2018年7月17日、「原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(通称:日米原子力協定)が自動延長した。 
 
<日米原子力協定とは> 
 この協定は、米国が日本に対し、原発の稼働で発生する使用済み核燃料からプルトニウムやウランを回収して再処理し、再び原発の燃料に使用する“核燃料サイクル事業”を認めつつ、回収したプルトニウムを核兵器に転用することを禁じる日米間の取り決めで、1955年に初めて締結された後、3度の改定を経て、1988年に現協定が30年満期で締結された。今年はその満期を迎える年であった。 
 
 米国は、日本以外の国々とも原子力協定を締結しているが、日米原子力協定が他と異なるのは、非核兵器保有国でありながら唯一、ウラン濃縮(天然ウランから核分裂しやすいウランを集めて濃度を高くする作業)や再処理技術(使用済み核燃料の中から再利用できるウランとプルトニウムを取り出す技術)の保有が認められている点にある。 
 
 しかし、日本のプルトニウム保有量が現在、原爆6千発分に相当する約47トン(海外委託分+国内作成分)に達していることから、米国は“核不拡散”の立場から懸念を示している。 
 約47トンものプルトニウムが溜まった理由は、 
再処理を経て作り出すMOX(ウラン・プルトニウム混合化合物)燃料を、福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」で使用することを目論んでいたところ、もんじゅがトラブル続きでまともに稼働しないまま2016年12月に廃炉が決定した 
その代替措置として進められた、プルトニウムを消費させる唯一の手段である「プルサーマル」(通常の原発でMOX燃料を燃やす方法)が、福島第一原発事故を受けて原発の大半が停止したために、プルトニウムの消費が進まない 
−−という2点が挙げられる。 
 
<訪米報告会> 
 日本によるプルトニウムの大量保有を問題視する市民団体「原子力資料情報室」(CNIC)とシンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)は、米政府に政策変更を促すために訪米団を組み、昨年9月と今年2月に続く6月下旬、立憲民主党の山崎誠衆院議員、宮川伸衆院議員を含む5人で訪米行動に取り組み、首都ワシントンで米政府・議会関係者に対してロビー活動を行っている。 
 その5人が7月12日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で訪米報告会を開催した。 
 
 立憲民主党エネルギー調査会事務局長として“原発ゼロ基本法”の取りまとめに当たっている山崎議員は、「米国で面談した相手は皆、『日本は保有している大量のプルトニウムをどうするのか。“核不拡散”について日本はどう取り組むのか』について最大の関心を示していました」と報告しつつ、 
「米国の議員の皆さんも、いろいろと温度差があって、面談相手の中には“核兵器の米国独占”という世界像を持っている方もいらっしゃいました。その立場の人にとっては『日本がプルトニウムを保有することは、けしからん。潜在的な核武装能力の保有というのは、けしからん』ということになるので、日本が使用済み核燃料の再処理を止めてプルトニウムを処分する話は、彼らには良い話になります。 
 また、『核拡散を止めたい。核の無い社会が必要だ』という立場の人にとっても、日本が再処理を止めることは良い話になります。 
 そういう人たちと議論する中で、私たち立憲民主党の考え方は、基本的に米国から止められることはないという確信を持つことができました」と感想を語った。 
 
 
 事故前の福島第一原発を視察した経験を持つ宮川議員は、事故から7年が経ったにも関わらず、自らの選挙区で昨年、新たにホットスポットが見つかったことを紹介しつつ、 
「訪米して強く感じたのは、米政府・議会関係者の核拡散に対する関心の強さでした。特に、北朝鮮の非核化とサウジアラビアの濃縮・再処理の容認要求を非常に懸念していました。 
 だから、日本は率先して使用済み核燃料の再処理を止めてプルトニウムを廃棄し、核兵器廃絶の先頭に立つことが、唯一の被爆国である日本が取るべき立場だと思います」と語った。 
 
 猿田佐世ND代表は、「日米原子力協定の改定問題では、この間、3回に亘って訪米行動を行ってきましたが、共和党であれ民主党であれ、いずれの議員も非常に強い関心を示し、私たちの訴えに対してものすごく共感を得やすかったです」と前置きして、 
「今年2月から米国とサウジアラビアで原子力協定の交渉が始まっていますが、米議会でそれを議論する中で、日本に濃縮・再処理を認めていることが話題に上がり、『日本と原子力協定について再交渉すべきではないか』といった質問が出るなど、日米原子力協定への関心が今も続いていることを実感しました。 
 日本側は、日米原子力協定について、米国との関係だけで見る傾向が強いですが、米国側では、米・サウジ間の原子力協定交渉、米国のイラン核合意からの離脱、北朝鮮の非核化といった文脈の中で、日米原子力協定に高い関心を向けています」と報告し、プルトニウム削減に向けた具体化の道筋が見えるまで、そして六ヶ所再処理工場を止めるところまで、今後も活動を続けていきたいと語った。 
 
 松久保肇CNIC事務局長は、日米原子力協定の現状と問題点を説明しつつ、 
「米国に倣ってプルトニウムを別の物質と混ぜて希釈化し、地層処分するかどうかは別にして、まずは軍事用に転用できない形に安定化させ、プルトニウムを再利用できないようにすべきだと考えています」と訴えた。 
 
 ケイトリン・ストロネルCNIC研究員は、 
「日米両政府が裏でどんどん決めていくのではなく、米国からの外圧をきっかけにして、メディアも含めて、私たちは日本のプルトニウム大量保有や核燃料サイクルの是非について議論していく必要があります。今回の訪米行動で、その展望が少し開けたように感じています。日本政府が7月3日に閣議決定したエネルギー基本計画には、『プルトニウムの保有量削減』が明記されたものの、まだ具体策は発表されていません。ただの宣言で終わらせないようにチェックしていかなければなりません」と指摘しつつ、 
「日本の市民運動も盛り上げていかなければならないと思っていて、プルトニウムの大量保有問題は、これまで日本の市民運動があまり取り上げてこなかったテーマだと思いますが、これは核兵器反対運動と原発反対運動がクロスオーバーするテーマではないでしょうか。また、発電コストの問題と捉えると、電気料金を払う全ての日本国民に関わる問題ともなり得ます。今後は運動のウイングを広げていくことと、米国への働き掛けを並行して取り組んでいかなければならないと思っています」と今後の抱負を語った。 
 
     ★     ★     ★ 
 
 山崎議員の報告によると、訪米中の6月26日、国立研究開発法人「日本原子力研究開発機構」(JAEA)がワシントンで“次世代の原発の研究をどう進めるか”というテーマの合同シンポジウムを開催していたという。日本の原発推進派が生き残りを掛けて必死になっている様子が窺える。 
 原発反対派も負けてはいられない。 
 NDとCNICは、オバマ政権時の国務次官補(安全保障・核不拡散担当)トーマス・カントリーマンさんを講師に招き、8月2日(木)14時30分から衆議院第一議員会館多目的ホールで院内集会「再処理政策の経済性を問う」を開催する。平日昼間のイベントであるが、ご都合の付く方は是非参加されたい。(坂本正義) 
 
(参加申し込みは、こちらから)http://www.nd-initiative.org/event/5273/ 
 
(こちらもご参照ください) 
日本の再処理・プルトニウム政策は、本当に“米国に縛られ、日本の自由にならない”のか 
――日本に届かない米国の懸念(ND Policy Brief Vol.1) 
http://www.nd-initiative.org/research/5246/ 
二国間原子力協定をめぐる米国政府の動向(ND Policy Brief Vol.2) 
http://www.nd-initiative.org/research/5261/ 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。