2018年08月29日14時30分掲載  無料記事
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司法

家庭裁判所と少年非行に何が起きているのか 家裁調査官が見た40年の変遷ァ 嵌鷦匆馘」非行少年の増加

  時代は、少年法第一次改正の直後、2001年1月に自民党のアベシンゾウと中川昭一がNHK放送総局長に面談し、同年1月30日放送予定であった「問われる戦時性暴力(日本軍の戦時性暴力を改題)」の放送中止への圧力をかけ、放送内容を縮小させた行動から始まっている。(個人的な思いであるが、放送局や新聞社に政党幹部の政治家が直接圧力をかけるといった品性下劣な行動は、かのトランプでも実行したことがない暴挙テロであり、そうした品性下劣な人物を総理宰相としている我が国は悲しすぎる国家であると思う。)そして、同年4月、「新しい歴史教科書」「新しい公民教科書」が文部省検定に合格した。(伊藤一二三) 
 
▽小泉、安倍政権下で進む社会の不寛容化 
 世界的には、2001年9月11日、米国で同時多発テロが起こり、南アジア・中近東・アフリカ各国の貧困・経済格差等を根本的に解決する志向を持たぬまま、米軍を中核とした同盟軍によるアフガン侵攻、イラク戦争等が続き、その戦後処理が泥沼化していた。日本では、2001年、小泉純一郎政権が成立し、米軍の行動をいち早く絶賛、2003年、有事関連3法(武力攻撃事態法、改正安全保障会議設置法、改正自衛隊法)及びイラク特措法を成立させ、同年12月に自衛隊をイラクに派兵、2004年には有事関連7法(国民保護法、米軍行動円滑化法他)を成立させ、同年11月に自民党が憲法改正草案大綱を発表するに至る。2003年には石原慎太郎が国内最高得票数で東京都知事に再選されている。 
 
 小泉政権は、国内に向けては「ワンフレーズ」で危機感を煽り、構造改革と民営化の下での個人責任論が強調され、「自民党が抵抗勢力であるなら、自民党をぶっ壊す」と喧伝して2005年9月の衆議院総選挙を刺客送り込みで乗り切り、同年10月に郵政民営化関連法案を成立させた(2007年、日本郵政グループが発足)。 
 
 2006年9月、小泉政権を後継して第一次アベシンゾウ政権が成立、「美しい国日本」などと称して改憲を煽り、教育再生会議なるものを新設、同年11月には防衛庁を防衛省に昇格させ、改憲を目的として2006年12月に教育基本法の改悪を強行、さらに2007年の冒頭、施政方針演説で「憲法を中心とする戦後レジームからの脱却」を謳い、同年4月、43年ぶりに全国一斉学力テストを実施、同年5月には改憲のための国民投票法も強行採決した。しかし、改憲に向けた強行・拙速が祟り、2007年7月の参議院選挙で惨敗し、同年9月に突如、内閣総理大臣を無責任辞職した。 
 
 その後、福田康夫、麻生太郎が政権を受継ぐが、2008年9月に起きたリーマン・ショック(不良債権を分散して組み込んだ証券化商品サブプライムローンの破綻が顕在化し、大手投資銀行・証券会社であるリーマン・ブラザースが倒産し、米国株価が暴落した)に対する実効的な経済対策も立てられず、短期間で政権が交代する時代が始まった。 
 
 1990年代からのグローバル経済という誰も説明も統制もできない怪物の闇が深まる中、英雄期待のポピュリズム思潮が醸成され、一方で(前記したように収奪されるだけになったにも関わらず)「友だち」「思いやり」といった外交用語としてはあまりに稚拙な表現を用いながら、過度に米国に擦り寄る従属姿勢を明確にしつつ、他方で改憲だけが日本を再生させるかのような空論が喧伝され、実質的には国家として国民生活に責任を持たない政治家の発言や行動が平気で跋扈する時代になったと思われる。社会に不寛容さが満ちてきていた。 
 
▽IT社会の進展と経済格差の拡大 
 この時期の非行少年像について言えば、半数は窃盗や遺失物横領といった財産犯であることに変わりはないが、かつて70%以上あった共犯事件の割合が徐々に低下し始め、即ち、単独犯が増えたという特徴がある。また、非行少年と言えば車やバイクであったが、それらへの関心が乏しくなり、交通事件(無免許運転から人身事故まで)の減少が顕著になっていた。ゲームとアニメに溺れ、反社会的というよりは非社会的、対面的・直接的なコミュニケーションが苦手で、一人で部屋に籠るか、一人でスケボーをするといった非行少年が増えた。長期間不登校であったり、バイト経験はあるものの、定職への就労意欲がなかなか持てない少年も増えた。逮捕される非行としては、特殊詐欺事件の受け子、盗撮やリベンジポルノといった性非行などが多くなっていた。「一人では生きていけない」が常識であった時代から、あたかも「一人でも生きていける」かのような時代に変化したように見えた。 
 
 こうした非行少年の在り方の直接的な背景には、2000年以降のインターネットに接続できる携帯電話やゲーム機の爆発的普及とそれへのコダワリの強さがある。しかし、より深刻な社会的な背景としては、経済格差が広がり、高学歴でない限り就職や転職の困難さが増し、低賃金の非正規労働に甘んじなければならないこと等がある。非行少年の親も、ダブルワークに追われ、子どもとの会話や接触が十分とれない生活状態になっていた。1998年から2011年まで、日本の自殺者数は年間30000人を超えていた時期であり、新たな生活モデル、幸福の持ち方を親すら確信できない不透明さが深まっていた。 
 
 個人的には、非行少年たちは、「一人でも生きていける」かのような生活態度を表出せざるを得ないところに追い込まれているというのが実態ではないのか、家裁調査官として政治や経済の不毛さという社会的要因にこそ着目しなければならないのではないか、といった思いが強まっていた。 
(つづく) 


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