2018年09月15日21時45分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201809152145266

労働問題

「働き方改革」関連法 重要なのは現場の闘い

 全国一般なんぶでは、80年代から労働相談活動をしています。労働相談を辿っていくと、労働者の働き方の変遷がわかります。ところが労働者の意識はあまり変わっていません。 
 
 解雇など他の問題で相談に来て、よくよく聞いてみると社保なし割増なし有休なしの「ナイナイづくし」というのがあります。 
「うちは社会保険はないから」 
「残業代は基本給に入っているから」 
「有給休暇はやってないから」 
と経営者に言われ、労働者もそんなものだと思っていたりします。 
 
 労働基準法は、最低の労働基準を定めた法律で、労働者保護の強制法規です。当然、使用者は法を守るだけでなく、基準法以上の労働条件を労働者に提供するべきなのです。ですが、これだけ法違反があると、労基法を守っているだけで「良い会社」になってしまっています。 
 長時間労働、低賃金、不安定雇用、解雇に加えて、今は人格を否定するハラスメント相談が主です。 
 労災職業病の危険性も高い。なのに、労災被害にあった労働者が「自分が悪い」と思うことによって、労災を隠してしまうこともあります。「労災は会社にとって迷惑。労災を主張したらクビになる」と思い込んでいるんです。 
 経営悪化で半年間も賃金未払いのまま働いていた労働者もいました。人が良いというより、相談にたどり着くまでどうしていいのかわからなかったのでしょう。 
 
 日本は豊かで(手に届くか届かないかは別にして)モノに溢れ、みんな先進国だと思っています。でも、そう思って暮らしていると貧富の格差がわからなくなります。 
 生活は大変なのに、キラキラした街を歩いていると、どこにも貧しさはみえない。そんなふうに、自分たちの職場がとてもひどい状況でもわからない。わからないから声を上げることもない。 
 
 政府の「働き方改革」なんてキャッチーなネーミングに乗じて一儲けしようというコンサルや企業もいる。政府がなんだかバラ色みたいに宣伝する労働政策は、気を付けなければなりません。 
 特に、時短を理由にした変形労働時間制や裁量労働制の導入以降、改悪に次ぐ改悪です。「縛られないで自由に働ける」派遣法は、ピンハネ中間搾取を許すもので、あり得ない法律でした。 
 
 労働法のひとつひとつが私たちの働き方と生活に密接にかかわっているにもかかわらず、多くの労働者は労働政策に無頓着です。 
 政府の労働政策は、経済界というお金を持っている人の意向で動きます。金持ちが権力を握っていると言ってもいいでしょう。本来、行政は、憲法によって労働者の権利を保障しなければならないはずですが、裁量労働制のずさんなデータや高プロの意見聴取に偏りがあったように、まったくあちら側の犬です。 
 もっとも、現憲法を否定し、主権在民や基本的人権をなくそうという右翼政権ですから、こぞって労働者から権利を奪うつもりなんでしょう。 
 30年前にはPCもスマホも、ネット自体ありませんでした。技術革新は働き方を変え、豊かになったように錯覚します。 
 でも、いつの時代も法違反の企業は依然として存在しつづけ、ベンチャーは労働者の搾取からのし上がります。働き方が変わっても労働者の権利意識が低いままなら、良い条件は取れません。労働組合も勇ましいことを言ったところで、危険水域に入ってしまいます。 
 
 どうしたら労働者が権利意識を持ち、労働者が望む働き方をつくることができるのでしょうか? それにはやっぱり現場の闘いが重要なんだと思います。各職場が権利を守る防波堤になりましょう。誇りをもって働くために、権利を主張しましょう。 
(全国一般労働組合東京南部書記長・中島由美子) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。