2018年10月01日03時23分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201810010323571

みる・よむ・きく

PARC新作DVD上映会&トーク 『甘いバナナの苦い現実』   鶴見良行氏の「バナナと日本人」から約40年、フィリピン・ミンダナオ島のバナナ農民たちは今? 

  10月4日の夜、東京・神田駿河台の連合会館の会議室で、ビデオの上映会があります。「甘いバナナの苦い現実」(78分)というタイトルのドキュメンタリーです。日本で売られているバナナの圧倒的多数がフィリピンのミンダナオ島で作られています。そのミンダナオ島の農民たちを今から約40年前に鶴見良行という研究者がフィリピン人の研究者と共同で調査を行い、のちに一冊の本にまとめます。岩波新書から出ている「バナナと日本人」です。この本はロングセラーであるだけでなく、多くの若者の生き方を変えた名作です。 
 
  「バナナと日本人」が出版されたのは1982年。折しもわが国は経済大国としてアメリカを抜く勢い。さらに自動車の輸出の拡大などとともに円高に向かい、ますます海外から多様な食材が安価で輸入されてきました。私も覚えていますが、それまで見たことすらなかったような新しい食材が毎日のように家庭の食卓に乗り始めたわけです。そんな中、鶴見氏は日本の繁栄を支えている周辺のアジア諸国の人びとの暮らしと、彼らの労働に依存している日本人の関係を見つめたのです。本当にこれでよいのだろうか、と。「バナナと日本人」ではミンダナオ島の農民がアメリカや日本の巨大アグリビジネス企業や、さらにはフィリピン国内の大農園や企業によって経済的に搾取される構造が緻密に分析されています。そうした構造から派生する一局面として、農薬によって健康をおかされる農民家族の生活もまた描かれていました。こうした記述が当時これを読んだ日本の若者たちに、これではいけないと思わせたのです。 
 
  鶴見良行氏も設立者の一人であるNGOのアジア太平洋資料センター(PARC)が約40年後の今、ミンダナオ島を再訪して、バナナを作っている農民たちはいったいどんな暮らしをして、どんな農業をしているのかを記録してビデオにまとめました。私はこのビデオの監督という立場ではありますが、実際のところ、このビデオは監修者であるフィリピン社会に詳しい石井正子氏や農薬分析の専門家の田坂興亜氏、さらにPARCの職員たちや無農薬バナナを販売しているATJ(オルター・トレード・ジャパン)の方々と共同で作り上げたものです。上映会の夜、田坂氏と石井氏とともに私も会場で簡単にご挨拶をさせていただく予定です。現在のバナナ農民たちの様々な状況も興味をもっていただけるかと思うのですが、もう一つ、このビデオの中には鶴見良行氏が仲間とアジアを旅するシーンも少し紹介されています。鶴見氏の旅の仕方や問いの立て方、観察力などは非常に刺激的です。そして市民運動家と研究者が手を携える、という新しい形の活動もPARCの設立とともに始まりました。鶴見良行氏の著作がさらに多くの日本人に注目され、読まれることを願ってやみません。 
 
 
※トレイラー「甘いバナナの苦い現実」 
https://www.youtube.com/watch?v=OdUBcxsLVMo 
 
 
村上良太 
 
 
 
■PARC新作DVD上映会&トーク 『甘いバナナの苦い現実』 
 
日時:2018年10月4日(木)18:30〜20:45 
 
※開場18:10 
 
場所:連合会館2F 204会議室 
 
東京都千代田区神田駿河台3-2-11 
(※)地図:http://rengokaikan.jp/access/ 
 
参加費 
 
800円 
 
プログラム 
 
・『甘いバナナの苦い現実』上映(78分) 
 第1部 農薬の空中散布と健康被害(31分) 
 第2部 公正で持続可能な生産を求める農民・先住民族(27分) 
 第3部 バナナと日本の40年―私たちの食の未来をどうする?(20分) 
 
・ゲスト・トーク 
 石井正子(立教大学異文化コミュニケーション学部教授) 
 田坂興亜(アジア学院理事・元国際基督教大学教授) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。