2018年10月03日16時34分掲載  無料記事
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コラム

マルクス生誕200年に関連して 根本行雄

 2018年5月5日は、カール・マルクス生誕200年の日だった。母国ドイツだけではなくイギリスでもフランスでも記念され、関連の出版物も相次いでいるという。日本でも、映画「マルクス・エンゲルス」が公開され、マルクスに関連する書籍の出版や国際シンポジウムの開催といったイベントが目白押しだという。現代の日本は、本が読まれなくなった時代になっているが、これからもマルクスは読まれ続けていくのだろうか。 
 
 
 
 ネモトは70年安保世代であり、当時は、初期中期のマルクスが流行していたので、『経哲草稿』や『ドイツ・イデオロギー』などがよく読まれていた。だから、いまだに『資本論』は読んでいない。第1巻の冒頭をかじっただけだ。 
 ネモトが繰り返し読んだのは、『経哲草稿』や『ドイツ・イデオロギー』であり、その他では、『共産党宣言』、『空想から科学へ』、『ユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判』、『賃労働と資本』、『賃金・価格および利潤』、『クーゲルマンへの手紙』、『ゴータ綱領批判』などである。 
 
 60年安保世代より前の世代は、後期マルクスであり、なによりも、『資本論』がよく読まれていたようだ。「反教育シリーズ」で知られている教育評論家の五十嵐良雄の講演を聞きに行ったことがある。彼は講演の冒頭において、自己紹介の一つとして、学生時代に『資本論』を暗記したと言い、実際に、『資本論』の冒頭部分を暗誦してみせてくれた。その時は、そういう時代もあったのかと驚いたものだ。 
 
 現代の日本は、本が読まれなくなった時代になっているが、これからもマルクスは読まれ続けていくのだろうか。当然のことながら、マルクスも、時代によって、評価されるところが違う。初期、中期を評価する時代があり、後期を評価する時代がある。経済学を評価する時代があり、哲学を評価する時代がある。重要視する時代があり、軽視され、無視される時代がある。 
 
 
 
□ マルクスの評価 
 
「マルクスは1867年に著した『資本論』によって、資本制経済の構造と本質を暴き出し、資本主義社会の終焉を予言し、世界の労働者・市民に未来への希望をかき立てた。その点で、マルクスの経済学は有効性を保持している。」ネモトは今でも、マルクス経済学は労働運動、労働組合運動においては有効性を保持していると考えている。 
 
 しかし、現代の日本の資本主義社会のあり様を考える時、マルクス経済学だけでは不十分だろうと考えている。 
「ブルジョア革命は法律的であり、プロレタリアート革命は経済的であった。われわれの革命は、人間が自己自身となるべきために社会的かつ文化的であろう。」「ソルボンヌ・アピール」の「テーゼ29」である。 
 現代の日本の資本主義社会を生きているわたしたちの課題は、経済的であるばかりでなく、社会的かつ文化的なものである。マルクス経済学だけでは十分ではない。 
 
 日本にはマルクスの研究者は多いが、ネモトが抱いている疑問に答えてくれるような研究者はいないようだ。 
 
 近年、読んだマルクス関連の本では、広松渉のもの以外では、神津朝夫著『知っておきたいマルクス「資本論」』(角川ソフィア文庫)が、内容がわかりやすくていいと思った。おすすめの1冊である。 


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