2018年10月06日14時07分掲載  無料記事
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政治

見えてきた「安倍改憲阻止」の展望  澤藤統一郎(さわふじとういちろう):弁護士

  今朝(10月5日)北海道の旅先で、道新一面トップの見出しが目に飛び込んできた。「改憲案、与党協議経ず提示」「自民検討、衆参憲法審に4項目」というもの。これはトップ記事とするにふさわしいニュースだ。 
 
  自民党は、安倍晋三首相が目指す10月下旬召集予定の臨時国会への改憲案提出を巡り、公明党との事前協議を経ずに、3月にまとめた4項目の改憲条文案を衆参両院の憲法審査会に提示する方向で検討していることが4日、分かった。首相は総裁選で与党協議後に改憲案を提出する意向を示したが、公明党が慎重姿勢を強めていることを受けて方針転換する。今後は憲法審での与野党の議論を踏まえて国会発議につながる改憲案の作成にこぎ着けたい考えだが、公明党や野党が難色を示す中、臨時国会への提出は不透明だ。 
 
  これまで再三にわたって説明されてきたアベ改憲の手順は下記の通りである。改憲原案の党内まとめ⇒与党協議を経ての与党案とりまとめ⇒各野党への提案と意見聴取⇒国会への改正原案提出⇒両院の3分の2以上の賛成による可決⇒国民投票発議実は「改憲原案の党内まとめ」ができているかも怪しいのだが、ここに来て「与党協議を経ての与党案とりまとめ」はその入り口にも入れないことになったというのだ。「臨時国会への提出は不透明だ」という道新の見解は、さもありなんと言うよりは、むしろ「臨時国会への提出は絶望的」と言うべきではないか。 
 
  この道新記事が述べているとおり、首相は総裁選で「与党協議後に改憲案を提出する」意向を示したが、客観情勢を無視した願望に過ぎない。現実には、「友党」からの「友情」も期待し得ない事態なのだ。 
 
  さらに本日午後、各メディアが共同通信配信記事を一斉に報道した。「自民、改憲案で与党協議見送りへ」「国会に単独提示、9条改正など」という見出し。 
 
  自民党は、10月下旬に召集予定の臨時国会に、9条への自衛隊明記など4項目の憲法改正条文案の単独提示を目指す方針を固めた。連立を組む公明党が事前協議に一貫して難色を示しているため、協議は見送る。自民党幹部が5日、明らかにした。衆参両院の憲法審査会で条文案を示し、与野党による議論を喚起することを狙う。主要な野党は改憲案の提示自体に反対しており、予定通り進むかは見通せない情勢だ。 
 自民党憲法改正推進本部長に内定した下村博文・元文部科学相が4日、推進本部の最高顧問に就く高村正彦前副総裁らと党本部で会談し、条文案の提示を目指す方針を確認した。 
 
  この共同通信記事は、今朝の道新記事を確認したといえるものだが、なんとも微妙な書き方。「9条への自衛隊明記など4項目の憲法改正条文案の単独提示を目指す方針を固めた」とはいったいなんのことだ。「単独提示」はやむなくそうせざるを得ないというだけのことで、「単独提示を目指す」はなかろう。また、「単独提示」なら党が独自に決定できるのだから、「方針を固める」必要はない。 
 
  正確には、「(自民党は)9条への自衛隊明記など4項目の憲法改正条文案については、他党との連携は不可能と判断せざるを得ず、単独提示を決断した」という記事なのだ。 
 
  これまでの方針を貫くことにネックとなったのは公明党の態度であると言う。そりゃそうだ。あらゆる世論調査の結果が、「安倍改憲」には過半数が反対している。改憲はともかく、信用ならないアベの改憲には国民は「ノー」と言っている。そのアベ改憲への協力は、世論への挑戦にほかならない。失敗の公算が高く、その場合には公明も大きく傷つくことになる。内部からの批判の噴出に耐えられないことにもなりかねない。アベ政権との心中を覚悟せずには、与党案作成などできることではない。 
 
  今回の沖縄知事選挙に公明党は全国からの大規模動員を掛け従来型スタイルの選挙運動を試みて失敗した。公明支持層を固めることもできず、むしろ公明党員や創価学会員の離反者が大きな話題となった。来年(19年)の統一地方選や参院選を前に、公明党が改憲与党案作成に加担するとは考え難い。 
 
  となれば、改憲作業がスムーズに運ぶはずはない。道新は「臨時国会への提出は不透明」といい、共同通信は「(自民の)予定通り進むかは見通せない情勢」という。 
 
  アベを先頭とする右翼勢力にとっては、「安倍のいるうち、両院に改憲派3分の2の議席あるうち」こそがまたとない改憲のチャンス。ところが、信用ならないアベ在職中の改憲には国民世論が「ノー」。この矛盾がいよいよ、明確になってきた。 
 
  アベがぶち上げた「2020年オリンピックの年に改正憲法の施行を」という構想の実現は、ほぼ絶望的な事態。そして、アベの任期の2021年まではもう少しだ。改憲阻止の展望は十分ではないか。今こそ、改憲発議ストップの世論をさらに積み上げよう。 
(2018年10月5日) 
 
 
澤藤統一郎(さわふじとういちろう):弁護士 
 
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.10.5より許可を得て転載 
 
http://article9.jp/wordpress/?p=11240 
 
ちきゅう座から転載 


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