2018年10月08日18時32分掲載  無料記事
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社会

ニューヨークタイムズ東京支局長が書いた一文「大坂なおみ、新知事と私」

  ニューヨークタイムズ東京支局長はリッチ素子という名前の女性記者だ。彼女が「大坂なおみ、(沖縄の)新知事と私〜日本は混血を受け入れる社会になりつつあるのか?〜」という一文を書いて、ツイッターにこう記している。 
 
  ”All my life, I've been the foreigner in Japan, and the Asian in the U.S. Covering Naomi Osaka and Denny Tamaki in Japan, I'm getting to know my own mixed-race identity in a new light ” 
 
  (私はずっと日本ではガイジンとして、アメリカではアジア人として大坂なおみ選手やデニー玉城氏らを報じてきた。今、私は自分の混血としてのアイデンティティを新しい光のもとで認識し始めている) 
 
  実際、リッチ素子氏のNYTにおけるこれらの記事は日本の新聞報道と異なった視点があった。それらの記事にはリッチ素子さん自身のことが反映しているように見えた。ハーフではない支局長や記者には書けない何かが記事には漂っていた。そして、そのことは今の変動の時代にもしかしたら、非常にタイムリーだったかもしれない。白人と黒人の混血だったオバマが大統領になったように、玉城デニーも米人と日本人の混血である。その彼が知事に選ばれたのだ。 
 
 ハイチ系アメリカ人の父を持つテニスの大坂なおみ選手が全米トーナメントで優勝した時もニューヨークタイムズは" Pushing Japan to redefine Japanese " (日本に日本人の再定義を迫る)という見出しでほぼ1ページ近くに渡る大きな扱いだった。さらに小見出しはこうだった。" U.S.Open winner helps challenge longstanding notions of racial purity " (全米オープンの優勝者は長年続いてきた単一民族という考え方を変えることに貢献する)。これなどもかつてのニューヨークタイムズではここまで強く日本人の定義をめぐる話を打ち出してこなかったように思う。おそらくリッチ素子氏が東京支局長だったから生まれた紙面だろう。 
https://www.nytimes.com/2018/10/06/sunday-review/naomi-osaka-mixed-race-japan.html 
  今回、NYTの新しい記事「大坂なおみ、(沖縄の)新知事と私」の中でリッチ素子さんは日本人の母親とアメリカ人の父親を持つ娘として40年前の子供時代に家族がカリフォルニアから2年間、東京に移って暮らした時のことを記している。その後、カリフォルニアにまた戻った。この少女時代の経験が「私はずっと日本ではガイジンとして、アメリカではアジア人として」という原体験となったのだろう。 
 
  リッチ素子氏の文章を読むと、「ハーフ」と呼ばれて生きてきた人々の中にもアジア人との混血や白人との混血、黒人との混血などをめぐって様々な日本における受け止められ方の違いがあることがわかる。しかし、いずれにしても混血の人たちが自分をあるがままに受け止めて生きていくことが、まだまだ日本では難しいようにも思える。しかし、今、彼女がこのような一文を書いているのは初めての混血の知事が沖縄に生まれたように何かが日本で変わりつつあることも確かだからだと思えた。 


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