2018年12月22日21時19分掲載  無料記事
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反戦・平和

米軍基地は日本のどこにも必要ない 外国の軍隊による占領をこれ以上許すな  Bark at Illusions

 日本政府は新たな米軍基地を建設するため、12月14日に沖縄県辺野古沿岸部への土砂の投入を開始した。これまでの選挙で辺野古新基地建設反対という沖縄の民意が繰り返し示されているにもかかわらず、しかも来年2月に辺野古基地建設の是非を問う県民投票を控えるこのタイミングで、沖縄県民の意見など関係ないと言わんばかりの強硬な姿勢、さらには工事を強行するための行政不服審査法の悪用や条例違反など、まさに独裁的なやり方だ。日本政府は「安全保障環境が一層厳しさを増す中、辺野古移設は抑止力を維持しながら沖縄の負担を軽減するための唯一の解決策」と主張しているが、そのような主張は日本政府の対米追従・弱腰外交を取り繕うための詭弁でしかない。 
 
 安全保障環境が厳しさを増しているという日本政府の念頭にあるのは中国と朝鮮だ。ここ数年「中国の海洋進出」や、朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの脅威がマスメディアでも喧伝されてきた。今月18日に閣議決定された「防衛計画の大綱」も、中国と朝鮮の脅威を指摘して懸念を示している。 
 
 しかし中国の脅威と言われるものは、合衆国の軍事的脅威への対抗措置に過ぎない。中国は、日本や韓国など北東アジアから太平洋を南下してオーストラリア・インド洋・中央アジアに至るまで存在する400以上の米軍基地に取り囲まれている。米軍は中国が交易を行う海域を封鎖する演習まで行っており、石油・その他の資源を東シナ海や南シナ海を航行する船舶に依存する中国にとっては死活問題となっている(ジョン・ピルジャー 『The Coming War on China』)。また、朝鮮の核兵器や弾道ミサイルは合衆国による侵略を抑止するためのものであり、合衆国政府の朝鮮侵略に協力しなければ、朝鮮の核兵器や弾道ミサイルは脅威にはなり得ない。 
 合衆国の軍事的な圧力に対するこれまでの中国や朝鮮の反応からも明らかなように、辺野古に新たな米軍基地を建設することは、日本の安全を高めるどころか東アジアの軍事的緊張を高め、国民の命を危険にさらすことにつながりかねない。合衆国の外交・軍事政策の研究などを行っているアメリカン・ユニバーシティのデイヴィッド・ヴァイン准教授は、抑止力が有効だと主張する人たちの研究は「差し迫った脅威(国境に軍隊が集結して、すぐにも進行してこようとしているような)を前にした抑止力について分析したものばかりだ。在外米軍基地によってもたらされるといわれている長期的な抑止力についてはほとんど調査されていない」と述べて米軍基地の存在による抑止効果を疑問視し、むしろ米軍基地の存在が地域の緊張を高めていると指摘している(『米軍基地がやってきたこと』原書房)。 
 
 また、合衆国は日本の防衛のために基地を日本に置いているのではない。日米安全保障条約は第5条で、「日本国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和および安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定および手続きに従って、共通の危険に対処することを宣言する」と述べている。つまり合衆国は、日本が侵略された場合、自国の憲法の範囲内で(おそらく合衆国政府が恣意的に判断することになる)、「共通の危険」であるかどうかによって(これも恣意的だろう)、日本を守ったり守らなかったりするということだ。日本にある米軍基地は、世界のおよそ80か国に800以上ある他の米軍海外基地と同じように、合衆国が“世界の警察”として世界を制覇し、合衆国の意向に背く国を侵略するための拠点として存在している。実際、朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争などの合衆国の侵略戦争では、合衆国政府は日本の米軍基地から部隊を出撃させ、何百万人の市民を殺している。 
 
 このような合衆国の蛮行や合衆国の ‟国益” のために、日本は第二次世界大戦での敗戦以降、沖縄県(嘉手納基地や普天間基地などの米軍基地群)・青森県(三沢空軍基地)・東京都(横田空軍基地)・神奈川県(横須賀海軍基地)・山口県(岩国海兵隊基地)・長崎県(佐世保海軍基地)などを中心に全国各地の百数十か所(米軍専用が約80か所、自衛隊と共用が約140か所)、そして「横田ラプコン」と呼ばれる1都8県(東京・栃木・群馬・埼玉・神奈川・新潟・長野・山梨・静岡)にまたがる広大な空域や、「嘉手納ラプコン」と呼ばれる沖縄本島と久米島の上空を覆う空域などを米軍に占領され続けている(そのため民間の航空機は羽田空港離陸直後に急旋回と急上昇を行わねばならず、沖縄本島周辺の上空ではかなりの低空飛行を強いられている)。さらに日米地位協定の取り決めにより、米軍は日本全国どこでも基地や演習場として利用できることになっており、日本はそれを拒否することができないことになっている。秋田市と山口県萩市に配備予定の地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」も、日本の防衛ではなく、合衆国を守るためのものだ。 
 
「防衛省が配備候補地にあげている萩は中国や朝鮮半島からグアム向けに飛ぶミサイルの軌道線上にあり、秋田はハワイ向けの軌道線状にある。米太平洋軍司令部があるハワイと在沖海兵隊の移転先であるグアムを守るため、日本が巨費を投じる姿が露わになっている」(長周18/8/2) 
 
 さらに付け加えておくと、集団的自衛権を容認するために国民の反対を押し切って成立させた安保法制(2015年)も、安倍晋三がドナルド・トランプ大統領のご機嫌取りのために日米首脳会談で約束した巨額の兵器購入も、18日に閣議決定された自衛隊の“護衛艦”いずもの空母化も、全て自衛隊が合衆国の世界制覇や侵略戦争のお手伝いをするための政策に他ならない。 
 
 先月16日〜18日にアイルランドのダブリンで開催された、世界に展開する米軍基地と北大西洋条約機構(NATO)の基地の閉鎖・撤去を求める国際会議は、開会式で「米軍とNATOが主導する戦争により地球規模の環境破壊と健康被害が引き起こされてきた」ことを指摘し、「全世界から米軍、NATO基地を撤去することを提起する共同宣言」を発表(琉球18/11/18)、会議に参加した合衆国の退役軍人平和会の代表は「米国内の基地を含め軍事基地が、『犯罪や環境汚染、戦争と干渉の根源となっている』」と指摘している(赤旗18/11/20)。 
 
 また合衆国では先月29日、超党派の有識者や元米政府関係者・平和活動家らが、米軍の国外基地の閉鎖を求める「海外基地再編・閉鎖連合(OBRACC)」を発足させ、海外米軍基地を閉鎖すべき理由として、「巨額な税負担」・「戦争を容易な選択肢にする」・「軍事的緊張の要因」・「反民主的・独裁体制の擁護につながる」・「テロ誘発」など9事項を、合衆国政府・議会宛の書簡として発表している。(赤旗18/12/1) 
 
 先の戦争で負けたからと言って、日本はいつまで米軍による占領を許すつもりなのか。平和憲法を掲げながら、いつまでアメリカ合衆国の世界制覇と侵略戦争に協力するつもりなのか。 
 
 巨額の日本の国費を投入して辺野古の自然を破壊し、東アジアの緊張を高めて沖縄に住む人々の安全を脅かすことにつながる新たな米軍基地建設は、直ちに中止すべきだ。合衆国の世界制覇と侵略戦争のために国民を犠牲にし、日本が毎年数千億円(基地の維持・運営費や軍人・軍属とその家族の生活費など)も負担して日本に米軍基地を置いておくというのもおかしい。 
世界一危険と言われる普天間基地は移設先の有無にかかわらず直ちに運用を停止し、全ての米軍基地は日本から撤去する。これこそが沖縄の負担を軽減し、日本や東アジアの平和と安定を守るための唯一の解決策だ。 


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