2019年01月08日16時38分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  Finally Nearing Its End(終に収束か)?  平田伊都子

「アフリカで一番古い紛争の一つが、終に収束か?」という命題で、ニコラス・ニアルコスがザ・ニューヨーカーに長い論文を、2018年12月29日付けで発表しました。 見出しには、「ジョン・ボルトンと元ドイツ大統領が、6年間も暗礁に乗り上げていた西サハラ問題の交渉を再開」と、米国家安全保障補佐官ジョン・ボルトンの髭力を先行させています。 ニコラス・ニアルコスは、西サハラ難民キャンプや地雷防御壁<砂の壁>に足を運び、モロッコ国連大使オマル・ヒラールのインタヴューなどを重ねました。 ただ、モロッコ占領地・西サハラ入りはモロッコ警察に拒否され、実現しませんでした。 ニコラス・ ニアルコスはザ・ニューヨーカー誌の編集員ですが、多数のメディアに寄稿しています。 
 
(1)ザ・ニューヨーカー(1925年初刊の米国総合準週刊誌)の記事: 
 ニコラス・ニアルコスがザ・ニューヨーカーで発表した記事の部分を、引用させて頂く。 
「(ジュネーブ円卓会議から)一週間後の12月13日、ワシントンでのイベントで、ボルトンは人民投票支持を明らかにした。<一人のアメリカ人としても、投票が好ましいと思う。17万の投票人のためにも、我々はみんな人民投票の実施を求めている。が、27年経った今も、未遂行のまま放置されているのだ>と、ボルトンは語った」と、ニコラスは、1997年から2002年にかけて人民投票の準備に奉仕したボルトンを、描いている。 
「2003年(?)、ジエイムズ・ベイカー国連西サハラ事務総長個人特使(当時)の人民投票第2案は、安保理で支持された。しかし、人民投票での敗北を恐れたモロッコ国王は、当時の米大統領ブッシュに<地域にテロリストを生み出す恐れあり。ベイカーの人民投票案を潰すように>と、書簡を送った。当時の国家安全保障副補佐官エリオット・アブラムは、<ポリサリオ戦線はアメリカの友人ではないし、欧米の友人でもない>と、進言し、ベイカー人民投票は潰された。ベイカーは私に、<人民投票実現は交渉で解決できるが、問題は私を支援しない国連の一部加盟国と国際社会のやっかみだ。今、現在も、私の人民投票案はなかなかのものだと自負したている>と、自慢した」と、ボルトンを右腕に国連西サハラ人民投票実現を目指した、ベイカーのインタヴューを紹介している。 
 2017年、ニコラス・ニアルコスはモロッコ占領地・西サハラの首都、ラユーンに飛行機で降り立った。が、着陸機にモロッコ警察官が乗り込んできて、彼はラユーンの土を踏むこともなく、そのままスペイン領ラスパラマスに追放された。 
 スペイン通信社<エル・エスパニョール>によると、「ロス・パトリシア・イバネスとイラティ・トバルという名のスペイン女性二人が、モロッコ占領地・西サハラのハサナ・アリア家にいるところをモロッコ占領警察に連行され、タクシー乗り場からモロッコ南部のアガディールに追放された。二人にモロッコ占領地・西サハラを紹介したハサナ・アリナはモロッコ占領地・西サハラで、2010年の平和デモに参加した。モロッコ軍事裁判所で終身刑の判決が出る直前に、スペインに亡命していた。二人の女性がラユーンに到着した時、モロッコ警察はモロッコ占領地の滞在先を指定のホテルにするよう指示していた。が、二人は従わなかった。ちなみに、筆者は、指定されたホテルに泊まり、一週間の取材を無事終えることができました。 
 
(2)国連安保理の新非常任理事国: 
 長いクリスマス+新年の休暇が終って、やっと国連は2019年の作業に入った。が、国連記者会見の部屋は相変わらずガラガラだ。国連安保理の非常任理事国は一年毎に、半分の5か国が投票で選ばれる。常任理事・米中ロ英仏の5か国は半永久的に、据え置きだ。国連分担金を払わされているのに、こんな不公平なことはない。非常任理事国10のうち、コートジボワール、赤道ギニア、クウェート、ペルー、ポーランドの5か国は2019年末まで、国連安保理の椅子に座っていられる。新しく選ばれた ドイツ、インドネシア、ドミニカ共和国、ベルギー、南アフリカの5か国は2019年1月から2年間、安保理の席に就くことができる。不公平な国連構造の最たるものが、第二次大戦戦勝国が創ったこの安保理理事国配分で、早急に改革が望まれる。 
 「PKO国連平和維持軍を再検証し、役立たずのPKOは削除する」と、2018年末、米国家安全保障補佐官ジョン・ボルトンが国連安保理に喝を入れた。金払いは最悪だが国連負担金額のナンバーワン(年間100,000,000,000$=約1,080,000,000,000円)であるアメリカの脅しに、国連安保理は慌てて1月の予定をPKO検証にした。MONUSCO(コンゴに展開), UNOWAS(西アフリカに展開)。UNFICYP(キプロスに展開)、などと共に、MINURSO(西サハラに展開)も、2019年1月29日にお取り調べを受ける。 
 「不幸なことだが、様々な作業状況には全く納得がいかず、深く失望してきた。やっとどの国も国連の改革が必要で当然だと、認識するようになった。が、まだその財源に関する検討はなされていない」と、2018年9月12日にアメリカ合衆国上院で承認された<国連の実務と改革組織>に対するアメリカ代表チェリッシュ・ノーマン・シャレット大使は、ジョン・ボルトンの政策を追随している。 
 
(3) アメリカ下院は、西サハラをモロッコ領土と認めず: 
 2019年1月3日、アメリカ合衆国下院でモロッコに対する財政援助予算が、西サハラを除いた形で提出された。何の前触れもなしに、西サハラはモロッコ領土に含まれないという事を、アメリカは明確にした。その素早い行動は、モロッコに得意の賄賂外交をする時間を与えなかった。MWNモロッコ世界ニュースによると、過去4年間のアメリカのモロッコ政策は、モロッコの西サハラ領有権支持を基調とするものだったそうだ。今年は、西サハラに関する7ページの記述が省かれていた。アメリカの外交豹変は、アルジェリアと西サハラのしつこい宣伝とワシントンに於けるロビー活動によるものだと、MWNモロッコ世界ニュースは愚痴る。そして、モロッコは早急に♠対策を講じるべきだと主張した。 
 2018年末、モロッコの老獪な国連大使オマル・ヒラールは、ニコラスをマンハッタンにある瀟洒な私邸で、ランチの饗応をした。チキン・タジンとクスクスでもてなしながら、モロッコの西サハラ領有権をアピールした。「私(ニコラス)がボルトンの事と、この数か月間にアメリカが発信した数々の問題提起について聞くと、<われわれの両国関係は、どんな人間も妨害できない非常に強固なものだ。議員との繋がりも深い>と、彼(ヒラール)は答えた。さらにヒラールは、<モロッコ領有権に関しては絶対に譲れないし、人民投票を組織することなど全くない、人民投票は死んだ>と、強調した」と、ニコラスはザ・ニューヨーカー誌に書いている。 
 
 新年早々、アメリカ下院がモロッコの西サハラ領有権を否定しました。 これまでアメリカは、西サハラ込みで対モロッコ財政援助予算を組んできましたが、新年度から西サハラをモロッコから切り離しました。 アメリカの下院と言えば今や民主党の牙城で、何かと♠共和党に逆らっています。 しかし、西サハラ問題に関しては、民主党の重鎮で故エドワード・ケネデイーも、共和党の元国務長官ジェームス・べーカーも、そして、現国家安全保障補佐官ジョン・ボルトンも、西サハラ人民投票による平和解決を支持しています。 ♠米大統領殿、西サハラ問題をナンシー・ペロシ―下院議長と手に手を取り合い超党派で解決し、アメリカの民主主義を世界に見せつけてください! 
 
 
Youtubeにアップした「人民投票」(Referendum)の今年もご案内します。 
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU 
 
Youtubeに4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いいたします。 
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 
「Last Colony in Africa]  英語版URL:  https://youtu.be/au5p6mxvheo 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2019年1月8日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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