2019年02月02日01時27分掲載  無料記事
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市民活動

東京オリンピックは災害だ!〜「2020オリンピック災害」おことわり連絡会(略称:オリンピックおことわリンク)宮崎俊郎

<ウソと不正まみれの東京オリンピック招致> 
 
 2013年オリンピック招致の際の賄賂を、フランス検察が6年後の今になって起訴するに至るか否かがホットな話題となっている。 
 日本のマスコミは、日産ゴーン問題に対する報復としてフランス政府が動いたかのような報道をしているが、それはオリンピック疑獄の隠蔽でしかない。 
 巧妙にコンサルを介する形で、コンサル料として支払ったお金が賄賂だったのか否かを証明することは、フランス検察にとって困難を伴うかもしれない。しかし、2億3千万円という法外なコンサル料の内容が明らかにされない以上、それは賄賂と見なすべきだろう。 
 安倍首相のアンダーコントロール発言といい、竹田恒和JOC会長による法外な賄賂といい、東京招致がウソと不正まみれだったことは明白であり、今からでも開催そのものを返上すべきだ。 
 
 2020年東京オリンピックの開会式まで1年半を切ったわけだが、私たちは、様々な社会的な問題が2020年を目標に進められつつあると考えている。 
 オリンピックまでに新天皇を即位させ、その世界的お披露目がオリンピック開会式となる。秘密保護法、共謀罪を成立させ、オリンピックまでにテロ対策という名目で市民管理強化を徹底させる。そして安倍政権は、オリンピックまでに悲願だった改憲を狙う。 
 オリンピックは、そうしたかなり大きな社会再編と、そこから生起する様々な矛盾について、民衆の目を背けさせて隠蔽するメガイベントなのだ。私たちはそれらを「オリンピック災害」と命名した。 
 
 本稿では、様々に発生しつつあるオリンピック災害の中から、特に「ボランティア」と「聖火」を取り上げる。 
 この2つは、オリンピックというナショナルイベントに民衆を動員して統合していく“装置”として機能するものである。 
 
<やりがい搾取の無償ボランティア> 
 
 2020年東京オリンピックでは、大会ボランティア8万人、都市ボランティア3万人の計11万人を募集していた。この人数は、これまでのオリンピック史上最大である。 
 募集は昨年12月21日に終了し、大会ボランティアで20万4,680人、都市ボランティアで3万6,649人が応募したと発表されている。今後、研修等を経て、2020年3月に正式採用されることになる。 
 大会ボランティアの条件は、「年齢18歳以上」「1日8時間」「10日以上の活動」など、かなりハードルが高い。しかも、これまでのオリンピックでは、全くの無償ボランティアというのは存在せず、交通費や宿泊場所の提供などの措置は行われていた。 
 当初、東京オリンピックは全くの無償ボランティアを予定していたが、多くの批判に晒されて、僅かに1日あたり交通費1000円の支給を決めた。 
 
 ジャーナリストの本間龍は、雑誌『世界』1月号において、オリンピックそのものが莫大な営利イベントになっているににもかかわらず、11万人ものボランティアをタダ働きさせようとする可笑しさを批判する。 
 そして今回、無償ボランティアを当たり前にものとして定着させることによって、今後の日本におけるメガイベントにおいても、当然のように無償ボランティアを使った労働搾取を通じて、主催グループがより儲かる構造を作り出すことが隠された目的であるとの重要な指摘を行っている。 
 
 18歳以上でこれだけの時間を割けるのは、主に大学生だろう。文科省は昨年7月、大会期間中に学生がボランティアに参加しやすくするよう、各大学や専門学校に対して授業や試験期間の繰り上げを求める通知を出した。ボランティア活動について単位認定することを検討している大学も出てきている。 
 私たち“おことわリンク”は、昨年10月に私大教と国大協に対してこうした措置を取らないよう申し入れを行った。 
 
 私は、この構造が最も危険なものだと考えている。あたかも自主的な姿勢を装わせ、国策に疑問を挟ませず、爽やかな達成感を与える“オリンピックボランティア活動”。そこには隠された“強制力”が起動している。 
 しかも、問題は大学生ばかりではない。小中高生も、学校単位や学年単位での観戦申込みが、早くも学校現場に下されている。東京では“オリパラ教育”と銘打って、年間35時間以上の関連授業や、オリンピアンを招いてのオリパラ講演会などが強制されている。すでに東京の学校では「オリンピックなんて嫌だ!」と言えない雰囲気が醸成されつつある。 
 オリンピックボランティア活動にはマイナンバーカードが必須とされ、顔認証も課される。“やりがい”を搾取された上に、その後も動員要員として管理され続けるのだ。こんな割の合わないものは無いだろう。 
 
<ナショナリズムの可視化としての「聖火リレー」> 
 
 もう1つの重要な動員の構造は「聖火リレー」に見られる。 
 2020聖火リレーのコンセプトは「Hope Light Our Way」(希望の道を、つなごう)で、2020年3月26日に福島県をスタートし、47都道府県すべてを巡る。 
 移動日を含む総日数は121日に及び、東日本大震災被災3県(岩手・宮城・福島)は3日間、複数種目を実施する4県(埼玉・神奈川・千葉・静岡)も3日間、東京都は開催都市として15日間、その他の39道府県は2日間が自動的に割り当てられた。 
 各県内のルート設定は今後行い、2019年春から夏にかけて公表される予定である。 
 
 聖火リレーの始まりは、1936年ナチ五輪であり、そのルートはその後、軍事目的として利用された。 
 1940年東京五輪においても、ギリシアのオリンピアから人馬による輸送が検討された。 
 1964年東京五輪ではインド・タイ・マレーシアなどアジアを空輸して回った後に、沖縄を経て全都道府県を4ルートでリレーされ、東京入りしている。全都道府県を走るということに大きな意味があるのだ。 
 オリンピックを開催都市だけの行事とせず、国家行事たらしめるデモンストレーションが聖火リレーであり、ナショナリズムの可視化として機能しているのである。 
 
<今からでも返上を!> 
 
 今回展開した問題点は、オリンピック開催についての“ほんの一部”に過ぎない。 
 神宮外苑地区からの住民強制排除、膨れ上がる大会関連経費、そしてその分かりにくさ、メダル至上主義によるスポーツそのものの破壊、パラリンピックにおける障がい者間の分断、さらなる差別の助長、などなど。 
 大手マスコミも、こぞってスポンサーになっているため、こうしたオリンピック批判はタブーとして報道されることはない。しかし、私たちは諦めることなく「こんなオリンピック・パラリンピックなどいらない!」と返上を訴えていきたい。 


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