2019年02月18日15時49分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  パレスチナと西サハラは国連の責務  平田伊都子

  2019年8月のTICAD 7に関して、西サハラ参加問題が話題になっています。 そんななか、西サハラを知らない方も多くて、「西サハラはパレスチナとよく似ている」と、世の識者や平和運動家たちの言葉をお借りして、西サハラを説明してきました。 ロシア外務大臣ラブロフや南アフリカ大統領ラマポーザも同様の見解を明らかにしています。 
 長期にわたっても民族の独立を諦めない西サハラ人民とパレスチナ人民は、似ていると言えば似ているかもしれません、、 
 
(1)ヘブロン虐殺再勃発の危機: 
 2019年1月31日にイスラエル首相ネタニヤフが、パレスチナ西岸の紛争都市ヘブロンから、TIPH (the Temporary International Presence in Hebronヘブロン臨時国際駐留団)を排除した。TIPH (ヘブロン臨時国際駐留団)は、1994年に起きたイブラヒム・モスクでのユダヤ人入植者による大虐殺事件を受けて、1997年に活動を開始した。約200,000のパレスチナ人が住む古都ヘブロンには予言者イブラヒムのモスクがあり、イスラム教徒とユダヤ教徒の聖地となっている。ユダヤ人が最初に入植したパレスチナの都市は、ここヘブロンで、ヘブロンには数百のユダヤ教徒が、強固な要塞とイスラエル兵に守られて住みついている。 
 1994年2月25日、イブラヒム・モスクで集団礼拝中のイスラム教徒に、ユダヤ人入植地キリヤット・アルバに住むゴールドシュテインが、イスラエル陸軍の制服を着て35発入りの弾倉4個を携行し、IMI ガリル(イスラエル製アサルトライフル)を乱射した。その入植地の真ん前に住むモアズ少年も父と礼拝をしていた。銃弾を浴び血まみれになった父は、モアズ少年を庇うように覆いかぶさり死んだ。TIPH(ヘブロン臨時国際駐留団)は、「29人が銃殺され、125人以上が重傷を負った]と、発表している。数年経っても虐殺のトラウマに悩まされていたモアズ少年を追って、筆者は何度もヘブロンを取材した。 
 TIPH(ヘブロン臨時国際駐留団)は確かにヘブロンにPresence(存在)していた。しかし、ヘブロンに先祖代々住むダーナ家の嫡子でジャーナリストのマーゼンが、「あいつら(TIPH)はパレスチナ人を助けようとはしない。死人の数を数えているだけだ」と、語っていた。そのマーゼンは2013年、戦火が燻るイラクでイスラエルの刺客に銃殺された。 
 そんなTIPH(ヘブロン臨時国際駐留団)だったけど、ないよりあるほうがましだ。 
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(2)中東ワルシャワ会談: 
 2019年2月13日と14日、中東安定化に向けて米国が指導する<中東ワルシャワ国際会議>が、ポーランドの首都ワルシャワで開かれた。主催はアメリカとなっているが、裏で、♠米大統領の義理の息子クシュナー(ユダヤ・アメリカ人)と彼の仲間でもあるイスラエル首相ネタニヤフがこの会議を仕切った。 
 2月11日、ポーランド外務大臣チャプトウィチが、会議参加国を発表した。サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、クウェート、バハレーン、オマーン、ヨルダン、の湾岸諸国に加えて、サウジやUAEともめているモロッコも、外務大臣を送ることを確約したと発表した。エジプトとチュニジアは、外務大臣に次ぐ要人を送ってくると公表した。しかし、モロッコ外務大臣ナセル・ブリタはサウジやUAEが手ぐすねを引いて待つ、<中東ワルシャワ国際会議>に欠席。スペイン国王のモロッコ訪問が約束不履行の理由だったそうだが、湾岸諸国から敵前逃亡と取られても仕方がない。 
 その西サハラ前宗主国スペインは、スペイン外務大臣ジョセフ・ボレイユのインタヴューに託して、「スペインは多角的交渉主義を重視し、西サハラ紛争政治的解決を目指す国連事務総長を支持する」と、西サハラに関するスペインの立場を明解にした。 
 この<中東ワルシャワ国際会議>でイスラエルとアメリカは、アラブ諸国を巻き込みイランへの包囲網を構築しようとしたが、イラン核合意をめぐって対立する欧州の主要国が閣僚派遣を見送った。結局、約60カ国の閣僚や高官が加わり、米国からペンス副大統領とポンペオ国務長官らが出席しただけという、寂しい国際会議に終わった。 
 1月28日、MWN(モロッコ世界ニュース)が、「イスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフのモロッコ訪問予定が報じられ、モロッコ国内の<反国交正常化運動(イスラエル・ボイコット)>組織が蠢き始めた」と、スクープした。もしイスラエル首相ネタニヤフのモロッコ訪問が現実のものとなれば、裏の動きはともかく表向き反イスラエルを唱える湾岸諸国が、騒ぎ立てるのは間違いない。 
 
(3)パレスチナと西サハラ: 
 「パレスチナ紛争と西サハラ紛争の解決は国連の責務だ」と言明しているのは、近々訪日予定のロシア外務大臣セルゲイ・ラブロフと、2019年TICAD7の成否を握る南アフリカ大統領シリル・ラマポーザだ。 
 1月25日、マグレブ3か国(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)訪問を締めくくるラバトでの記者会見で、「中東と北アフリカの安定化は、国連安保理の決議に従ってパレスチナと西サハラの長期紛争が解決されない限り、保障されない」と語った。 
 「西サハラ紛争とパレスチナ紛争は、国連安保理決議にも拘わらずあまりにも長期にわたりすぎている。残忍な弾圧と基本的人権を侵害されている両民族の人々に、我々はたゆまぬ支援を続けていく」と、第107回アフリカ民族会議(南アフリカの政党)記念式典で、南アフリカ大統領ラマポーザは語り、全面的な西サハラ支援を表明した。 
 南アフリカ政府は、3月25日26日に南アフリカで南アフリカとナムビア共催の、<西サハラ支援国際会議>を開催すると発表した。その声明文の中で南アフリカ大統領は、「我々は、西サハラ独立を目指す人民投票を行使して、国連が保証する民族自決権と脱植民地化に基づき西サハラ紛争を早期に解決することを強く主張する」と、明言した。さらに南アフリカ大統領ラマポーザは、「2019年から2020年の2年間、国連安保理の非常任理事国に選ばれたことを機に、西サハラ人民の民族自決が行使できるよう頑張る」と、約束した。 
 アフリカ大陸では、北のアルジェリアから南の南アフリカまで、多くの国がSADR(サハラ。アラブ民主共和国)を、正式な国家として承認している。 アルジェリアと南アフリカには西サハラ難民政府の大使館がある。 
 
 「パレスチナと西サハラは似ている」と、言われてきましたが、最近のパレスチナと西サハラの状況は、「よく似てこなく」なってきました。 両者が似ているのは、難民であること、国連の責務であること、アラブ民族でイスラム教徒であること、、などなどです。 
 「大きく似ていない」のは、前者が武装闘争も続けているのに対して、後者が国際社会という大舞台で政治闘争に専念していることです。 
 
 
Youtubeにアップした「人民投票」(Referendum)を今年もご案内します。 
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU 
 
Youtubeに4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いいたします。 
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 
「Last Colony in Africa]  英語版URL:  https://youtu.be/au5p6mxvheo 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2019年2月18日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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