2019年02月18日23時08分掲載
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『反戦川柳句集「戦争したくない」を贈ります』を読む 小野田明子
梅雨空に「九条守れ」の女性デモ
2014年、さいたま市三橋公民館が発行する「公民館だより」への掲載が拒否された句だが、この件をみて表現の自由が守られない時代になっていると気が付いた人が多かったのではないか。私もその一人だ。
俳句は、伝統的な花鳥諷詠を守るとはいえ、社会と無縁であるわけにいかない。
戦争が廊下の奥に立つてゐた
昭和初期、戦争が日常に顔を出す、その出方を鋭く突いた渡辺白泉。
こちら日本戦火に弱し春の月
戦前の一本道が現るる
湾岸戦争を背景にした三橋敏雄の句だ。
これらは、無季俳句と呼ばれているが、戦後70年の2015年、『金子兜太、いとうせいこうが選んだ「平和の俳句」』(東京新聞・中日新聞)の中に
戦争はすべての季語を破壊する(二村吉光)
があり、どきりとした。季語は、自然であり、人間の営みであろう。たとえば、放射能が降り注がれた山や川や野や花を詠うとはどういうことか。戦闘機が飛ぶ空が獲得する季語とはあるかと。そもそも、こんな時代に俳句という文学形式がなり立つのかと。
こうしたある種の絶望感から救ってくれたのが、この『反戦川柳句集「戦争したくない」を贈ります』(レイバーネット日本川柳班編著)だ。川柳については不勉強であったので、鶴彬(つるあきら)という代表的な反戦川柳作家も初めて知った。
胎内の動き知るころ骨がつき
子どもの胎動がわかる頃、戦死した父親の遺骨が届く。どんな戦争反対のスローガンよりも胸を撃つ。こうした反骨の魂を17文字で表現するそのもとは、自らの思想信条であろう。この背骨なくして表現はできない。
「反戦平和」公募川柳特選の作。
この地球70億のシェアハウス 安田蝸牛
少しずつ平和減ってる砂時計 木立慈雨
主宰者のひとり、乱鬼龍はこう吐く
トランプは武器シンゾウは国を売り
私の尊敬する友人・白眞弓は
貧困で釣った若者戦場へ
どうして、こうなったと戸惑うばかりだ。
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