2019年02月21日19時00分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

徴用工問題は日韓間の一致点に依拠して解決を図るべき 〜 院内集会「韓国大法院判決を考える」

 韓国の最高裁にあたる大法院が2018年10月30日、新日鐵住金に対して元韓国人徴用工への賠償を命じる判決を下した後、日本企業に対する賠償を命じる判決が続いているわけだが、実はこの判決、原告の訴えを棄却した高等法院判決を、大法院が2012年5月に“破棄・差し戻し”する決定を下した時点で、司法関係者の間ではある程度予想された内容だった。当然、多くの日本政府関係者も予想していたであろう。 
 しかし、昨年10月末の大法院判決を受けて、安部首相が「国際法に照らし合わせてあり得ない判決」と語るなど、日本政府は今更ながら過剰に反発。 
 そして日本の各種メディアも、インターネットはもちろん、これまで政権に批判的な立場をとってきた大手メディアまでも同調し、政府・官邸の言い分をなぞるように韓国政府を一斉に批判。 
 その後に発生した韓国海軍によるレーダー照射問題や、韓国の国会議長による「天皇による謝罪」発言もあって、反韓・嫌韓感情が日本列島を覆い続けており、晴れ間は全く窺えない。 
 
 このような逆風の中、徴用工問題をめぐる韓国大法院判決を考える集会が、2月中旬に参議院議員会館で開かれた。 
 主催したのは、歴史認識問題に取り組む市民団体や、徴用工裁判の支援団体で結成する「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」と「朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動」で、日韓のマスコミ関係者を含む多くの参加者が会場に詰めかけた。 
 
 主催者を代表して挨拶した持橋多聞さん(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク共同代表)は、日韓間の厳しい現状に触れつつ 
「裁判への支援を通じ、韓国の人々とは厚い信頼関係が結ばれている。これを両国間にしっかりと根付かせたい」と発言。 
 
 特別報告を行った川上詩朗弁護士は、 
「日本でも韓国でも、被害者の個人賠償請求権が消滅していないことや、強制労働の違法性といった事実認定に関する司法判断は一致しており、この一致点に依拠して問題解決を図るべき。徴用工問題は決して特異な問題ではなく、我々が未来に向かってどのような社会を目指すのかという試金石でもある」と語るとともに、原告に加わっていない元韓国人徴用工を含めて救済する“政治的解決”の必要性を訴えた。 
 
 同じく報告に立った山本晴太弁護士は、徴用工問題をめぐる日韓両国の見解の変遷や、日本の政府・メディアによるミスリードによって不必要に不安や不信が煽られている現状を説明した上で、 
「日本政府・メディアによる韓国批判は、被害者の人権回復という観点に無関心で、そもそも、再発防止のために必要な植民地支配に対する反省が欠如していることが大きな特徴」だと結論づけた。 
 
 三菱重工訴訟弁護団の崔鳳泰(チェ・ボンテ)弁護士は、 
「アジアが平和の時代に突入しようとする中、被害者の人権を無視していては、本当の意味で平和の時代に入れない。両国のマスコミ報道の中にはフェイクニュースも溢れているが、判決に対する批判があったとしても、事実をきちんと伝えるべき、韓国と日本の戦争被害者とが手を組む時期にきており、私たちは平和のために努力しなくてはならない」と呼び掛けた。 
 
 集会には徴用工裁判の原告も参加し、これまでの支援を感謝するとともに、問題の早期解決を訴えた。その1人である呉哲錫(オ・チョルソク)さんの 
「『近くて遠い』と言われる韓国と日本。現在の最悪と言われる関係から、世界の模範となるような素晴らしい関係を築いていきたい。もつれた糸をほぐすのは当事者しかいない。より良い関係を次世代に残すために努力しよう」との訴えが心に響いた。 
 人権・人道上の観点、そして日韓両国の未来のためにも、問題の早期解決が求められる。(村田貴) 


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