2019年02月23日00時30分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201902230030206

みる・よむ・きく

慰安婦を通して語る女性の生き難さは現代も 韓国映画『雪道』 笠原眞弓

 戦争は、男性性が象徴する暴力的なもの象徴ではないだろうか。戦時には、最も弱い子どもや女性が真っ先に犠牲になる。いや待てよ、女性が虐げられるのは、戦時ばかりではない。今の世にもそんな話は世界中に、日常的に転がっていると気づかせる。 
 
 『雪道』、この映画は、韓国では人気の連続テレビドラマだったとか。戦争を知らない世代にも戦争とはどんなものかを語りかけると同時に、現代の問題点にも触れている。 
 
 氷の張った川を歩くヨンエを追うチョンブン。氷の割れ目に落ちるヨンエ。ここで夢からざめたハルモニは、寝具の洗濯を始める。続く役所の場面。ここにこの物語のすべてのカギがある。 
 
 映画は、ハルモニ(おばあさん)の少女時代と、現在隣りに住む女子高校生ウンスンを巡って現代と戦時中を往き来する。二人の少女は、いずれもその歳では背負いきれない事情を背負っている。どうしてなのか両親がいない上に収入のないウンスンは、虚勢を張ることでかろうじて立っているが、本心はなにかにすがりたいのである。ハルモニもまだ少女だった頃死ぬか生きるかの辛さのなかにあって、ひたすら生きることを選択してきた。 
 
 日本は先の大戦で、占領していた朝鮮の少女をだましたり拉致したりして戦場に連れて行き慰安婦とした。ヨンエのお兄さんのように、男子も様々な手段で日本に連れて行かれ、炭坑やダム工事などの底辺労働者になった人もいる。そして戦後何十年がたった今も、居場所のない少女を大人は自分たちの利益のために利用する。 
 
 慰安婦にさせられた女性たちは、妊娠すれば堕胎を強制され、梅毒に罹れば殺される。自殺することすら許されない。軍隊が遠方に移動となれば、現地調達の「備品」として「始末」される。 
 
 2人の生き難い女性が、次第に家族のようになっていく。どんなに突っ張っても見捨てないハルモニが語る少女時代のこと。その話を聞きながら、少しやさしい表情を浮かべる「突っ張り」。もしかしたら、彼女も素直な高校生になれるのかもしれないと希望が見えてくるのだった。そしてハルモニにも……。 
 
監督:イ・ナジョン 
 
上映は3月2日(土)18:30 於:なかのZERO小ホール 入場料:1500円 121分 
終了後に梁澄子さんのトークがある。 
主催:「雪道」東京特別上映実行委員会 
申込み・問合せ:050-6873-9916  kmoviesc@gmail.com 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。